ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

今月初め、携帯電話をガラケーからスマホに替えた。

別にスマホにする気はなかったのだが、ガラケーの電池が無くなり、ショップに行ったら、そのタイプの電池はもう製造していないと言われ、仕方なく替えたのだ。

色々割引をしてもらったが、それでも通信料はかなり高い(今までは月1500円前後だったのに。。)

元を取ろうと(考え方が変)、SNSにチャレンジしてみたが、スマホ初心者の機械音痴の私、何が何やら、さっぱりわからん。

恐る恐る始めたものの、今だによく分かっておらず、よそ様に迷惑をかけてないだろうか、マナー違反をやらかしていないだろうか、不安で一杯だ。

もし迷惑をかけていたのなら、本当にごめんなさい。

さて、話は変わって、私の今一番のニュースは、森友学園関係でも、レスリング界のパワハラでもない。

それは、英国で起こった、ロシアの元二重スパイと、その娘が、神経ガスで殺されそうになった事件だ。

確か10年ほど前も、ロシアの元スパイが毒殺される事件があったと記憶する。

あたかも東西冷戦を彷彿させるような事案が、今起きているのだ、

英国のスパイものの小説や映画には名作が多いが、フィクションの世界の話だけにとどめて欲しい。

英国のスパイ映画、「裏切りのサーカス」を観たとき、そこで描かれた、旧ソ連KGBの冷酷さに震え上がり、ああ旧ソ連に生まれないで良かったと、しみじみ思ったものだ。

そういえば圧倒的な強さで大統領に再選した、プーチンさんはKGB出身。

ロシア国民は、圧倒的な権力を持つ、元KGBの男に対して、恐怖は感じないのだろうか。

裏切りのサーカス





















7年前の3月11日、仕事が休みだった私は、昼間、デパートで春物の靴を買い、書店で数冊の本と映画のブルーレイを買い求めた。

家に戻りTVをつけると、当時の菅直人総理が、深刻な顔で足早に歩いている。

そしてリアルタイムで、東日本大震災の映像を見てしまった。

その後、新しい靴は箱に入ったまま、本もブルーレイも全く見る気が起きなかった。

ショックと自分の無力さに打ちのめされ、生活を楽しみたい気持ちが湧いてこないのだ。

被災地から遠く離れた九州の人間でさえ、こうなのに、実際の被災者の方々の、苦しみ悲しみは、いかばかりだっただろう。

それから1年後、我がK市は、宮城県石巻市の被災がれきを受け入れることになったが、それに対して凄まじい反対運動がおこる。

念入りに検査して安全が確認されていたにもかかわらず。

反対運動に参加していたのは、K市の市民だけではなく、他県の人もいた。

K市が受け入れたら、自分の県もそうなるのかと思ったそうだ。

人の考えはさまざまで、私ごときが偉そうな事は言えない。

だが、この騒動を知った時の石巻市民の悲しみを思うとたまらないのだ。

多分、被災がれき受け入れ反対派は、自分たちは絶対震災に会わないと信じている人たちだったのだろう。


その他












スキー&スノボ平昌オリンピックの興奮も薄れてきた今日この頃だが、私が一番面白いと思ったのが、スノーボードとスキー、両方で金メダルを取った選手がいたことだ。

チェコの22歳の女性、レデツカさんは、元々スノーボードパラレル大回転の選手なのだが、なぜかスキーのアルペンスーパー大回転に出場し、あっさり優勝してしまった。

もちろん本命のスノボでも優勝、史上初のスノボとスキー二刀流の金メダルとなったのだ。

私自身、スキーの経験はあるが、スキーとスノボは相当違うぞ。

道具や、体の動かし方、体重のかけ方なども全然違うのに、レベツカ選手はどんなトレーニングをしたのだろうか。

今はどうか分からないが、昔、私がよくスキーに行っていた頃(バブル前後)は、スノボの黎明期でもあり、スキー場によってはスノボ禁止などがあり随分苦労していたと思う。

しかし我らスキーヤーは、スノーボーダーに同情することもなく、彼らとの間には、ケンカ腰というか、ピリピリした緊張感があった。いわば壁があったのだ。

少なくともスキーヤーとスノーボーダーが一仲良くしているのを見たことがない。

だが当時、蛍光色やパステル調の、派手な色のスキーウェアに比べ、渋い色合いで、ダボっとしたデザインのスノボウェアはとてもカッコよく見え、羨ましかったものだ。

そんなわけで、レデツカさんの功績は、日本でいえば、柔道の金メダリストが、レスリングでも金を取ったようなものか。

軽やかに、壁を乗り越えたレデツカさんと、彼女の決断に賛同したチェコに、清々しい風を感じた。








今年のアカデミー授賞式は、昨年のようなハプニングもなく、終始、滞りなく、そつなく終わったという感じだ。

昨年は、トランプ大統領が就任したばかりで、授賞式では、こぞって、MCやスピーチで、トランプ批判を繰り広げていた。

だが最後の作品賞の発表で、作品名を間違えるという前代未聞のミスを犯し、その後、大統領にツイッターで「俺の悪口ばかり言うからそんなミスをするんだ」みたいなことを言われ、カッコ悪い仕儀となった。

トランプさんは、TVの前で手を叩いて喜んだことだろう。

そんな彼の分かりやすさは嫌いではない。

さて、今年の作品賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』を観た。

異形なものを愛する物語といえば、映画「スプラッシュ」の人魚とか、「美女と野獣」などがあるが、そういうものとはちょっと違う。

というか、この映画、まんま「アメリ」なのだ。

中年のアメリが半魚人に恋して、それに周りが振り回されるという物語だ。

不思議ちゃん(中年だが)の行動は常に常識外れで、時には多大な迷惑をかける。

特にその迷惑を被ったのが、軍人上がりの警備担当者。

差別主義者で横暴で口の悪い男なのだが、家庭では良きパパだったりする。

1962年当時は、こういう男が沢山いたのだろうな。

そんなわけで、重要秘密任務の職場に、そこいらの掃除のおばちゃんを入れちゃダメですよ。

シェイプオブウォーター







362181_001 明日はアカデミー賞の授賞式だが、候補作の一つ、『スリー・ビルボード』を観てきた。

典型的なアメリカ南部の田舎町。
保守的で黒人差別の意識が高いこの町で騒動が起こる。

娘をレイプされたうえに焼き殺された母親が、なかなか犯人が捕まらないのに苛立ち、道路沿いの大きな立て看板に広告を出すのだ。

それには、娘がレイプされた事と、警察署長の実名を載せ、捜査が遅れていることをなじっている。

人々はもちろん、この母親に同情していたが、署長を実名でなじっていることに、抗議の声を上げる。

実はこの署長、末期の膵臓がんで余命いくばくもないのだが、病の体に鞭打って、誠実に捜査を続けていたのだ。

しかし母親の横暴ともいえる態度は止まず、、町の人々との溝はますます深くなる。
特に署長の部下の一人は、激しい憎悪を抱く。

思うに、この母親は、娘の死に対する罪悪感から逃れるため、あえて、粗暴にふるまい、憎まれることによって、ある種の安らぎを感じていたのでは。

自分のような母親が、人並みに笑ったり楽しんだり幸せになったりしてはいけないのだと。

その点、昨年観た映画『マンチェスターバイザシー』と共通点があるような気がする。

『マンチェスターバイザシー』の主人公も、自分の罪が赦せず、女性と付き合ったり、人と楽しく会話することを避けていた。

そういえば、『スリー・ビルボード』で母親の息子役だった俳優、『マンチェスターバイザシー』では主人公の甥として重要な役を演じていた。

そんな訳で、主演女優賞は、この粗暴な母親かな?

昨年の12月23日、作家の葉室麟さんが亡くなった。 その訃報は、クリスマスイヴの喧騒とキタサンブラックフィーバーの陰に無くれ、殆どマスコミの話題になることはなかった。 彼は私と同じK市出身であり、市内の書店を巡ってみたが、追悼コーナーを設けている書店は一つもなく、まさしく故郷の作家は、冷たい木枯らしと一緒に消えていったのだ。 50歳を過ぎて作家活動を始めた葉室さんは、数回の直木賞候補の後、60歳で、『蜩ノ記』により、晴れて直木賞作家となる. だがその授賞式は、「石原慎太郎批判発言で」有名となった、芥川賞作家、田中慎弥さんに話題が集中し、葉室さんの陰は薄かった。 葉室さんの描く歴史小説の主人公は、派手さとは無縁で、地味で報われない、損な生き方をしているように見える。 でもその佇まいは、凛として清々しい。 それは葉室麟さん自身の姿なのだろう。

TV番組に蔓延する『日本スゴイ!』『日本の技術は世界いちぃぃぃぃぃぃ』の風潮が終わらない。
NHKBSの『クールジャパン』あたりからだと記憶するが、2020年のオリンピックが決定し、更に加速がついてきたようだ。

自画自賛ぶりに辟易し、そういう類の番組は、見ないようにしているのだが、うっかり遭遇した時の、居心地の悪さと来たら!

『外人さんにTVカメラ向けたら、そりゃリップサービスするって、人間だもの』
『円安だから買い物に来てるだけだしぃ』

結局、今だに日本人は欧米コンプレックスが抜けないのだ。

日本が、白人に褒められて、ヤッターって喜んでいるみたいな。


ところで、そんな日本自画自賛の中に、新幹線安全神話があった。

スピードが世界一! 時間の正確さが世界一! トイレがピカピカで世界一! 無事故世界一!

古い車両の、よく遅れるローカル線に乗りなれている身にすれば、列車カースト最上位の新幹線は、羨望の的だったのだが・・・・。

例の焼身自殺によって、新幹線の弱さが、否応もなく、露呈された。

この71歳の犯人、多くの死傷者を出し、その罪は赦されるものではないのだが、図らずも、二つの事実を私たちに残して逝った。それは、

安全神話などは無いということ。そしてもう一つは、年金、月12万円は少なすぎるということ。

ちなみに月12万円は、平均的に見ればそんなに少ない額ではない。

国民年金を満額払っても、受け取れる年金は、月6万5千円程度だ。

この犯人、若いころはギターで流しをしたりと、結構気ままな生活をしていたようだが、それで月12万の年金は、数字から見れば悪くない。

しかし、実際12万円で生活するのは大変厳しい。

都心に住めば、家賃だけで大半、国保や水道光熱費、食費を払ったら、もう残らないではないか。

サイレントマジョリティーが耐え忍んできたこの問題に、この71歳の犯人は、やり方は間違ってはいるが、声を上げたわけだ。

そんな訳で、国民年金だけで生活している方は、この事件をどう思っているのだろうか。








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