ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

他人の夢の話を聞かされるほど、退屈なものはないと思うが、まあ付き合ってください。

私はたいてい寝入りばなに夢を見るのだが、結構大がかりでスペクタクルな内容が多く、飛んだり走ったりで、目覚めたときには、すごい夢をみたなもう朝かな、と思って時計を見ると、寝入ってまだ5分も経っていない。

また夢の中でしばし、「ああこれは夢だな」と自覚することも多い。

そのため、夢の中で面白がって、ビルから飛び降りたり鳥のように空を羽ばたいたりすることもしょっちゅう。

つまり夢を見ることは私の中で密やかな、しかし大いなる愉しみでもあるわけだ。

そんなわけで、このたびブルーレイで観た『インセプション』を観て驚いた。

私の見る夢の世界と同じだったから。

クリストファー・ノーラン監督も同じような夢を見ているのかなあと思うと、自分と同じ趣味(しかもちょっと恥ずかしい)を持つ同志を見つけたようで嬉しい。

それにしても、『インセプション』の、映像の美しさ、一見奇想天外に見えながら緻密なストーリーはどうだろう。隅々にまで監督の想像力があふれている。

まさか自分がひっそり体験している夢の世界を、スクリーンで観ることができるなんて、ああ映画ってここまで来たのか・・・と感無量になる。

ところで話は変わり、夢を見ていることを自覚して見る夢を、明晰夢というそうだが、1月11日に起こった、アメリカアリゾナ州の銃乱射事件、なんと犯人は明晰夢に取りつかれていたそうだ。

もしそれが事実なら、犯人は夢と思って銃を乱射したのか・・・・・・。

私は夢で銃を乱射したことはないが、これからは用心のために、空を飛ぶ前に、古典的にほっぺをつねったほうがよいかも。

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明けましておめでとうございます。


本年も宜しくお願い申し上げます。

 

長らくブログの更新をしなかったのは、多忙のせいでもなく体調が悪いとかいうのでもなく、単なる怠慢なのだが、アップをしなかったことで分かってきたものもある。

せっせとブログを書いていた頃は、さまざまな事件や出来事について、これはアリか、好きか嫌いか、納得したかしないか、まず自分の意見ありきで、意見が決まったら、間違っていようといまいと、ひたすらそれに合わせて文章を構築していた。

何よりそれが一番早いから。

だがブログを書かない日が続くと、ニュースを聞いても、「いいんじゃないかな」「ちょっとおかしいかも」「でもそれもありかな」・・・・・。

なんだか優柔不断というか、あいまいのまま流してしまってるのだ。

そしてあいまいであるということは、自分の意見がないということと同じなのだ。

途中で自分の間違いに気づけば、そのつど修正すればいいのであって、まず自分の意見を持たなければ、何も始まらないのだと今更ながら気づいた平成22年の終わりでした。

さて、元日からわけわからん話は置いといて、昨年読んだ本で印象に残ったものの一つに、福岡伸一著、『生物と無生物のあいだ』がある。

言わずと知れた大ベストセラーだが、読んでみて思いかけず詩的で繊細な文章に驚き、著者の教養の深さと誠実さに感じ入った。

ただ記述の中で、ワトソンとクリック、そしてウイルキンズという3人の科学者について(彼らはDNA2重ラセン構造の解明で、ノーベル賞を受賞している)、彼らが女性科学者、ロザリンドのデータを盗用したと、かなり批判しているのが引っかかった。

この女性科学者は、優秀だが視野が狭いというか、頑固な人のようで、自分の研究がDNA二重ラセン構造の解明に繋がるとは思いもせず、ひたすら与えられたテーマに没頭していたのだ。

福岡氏は、ロザリンドをとても気の毒に描いているが、科学者って、ある意味、ワトソンやクリックのような山師的なものも必要ではないだろうか。(著者は演繹法と表現しているが)

きっと福岡伸一氏は、善良な人なのだろう。

ところで、微粒子のふるまいについて、こんな記述を見つけた。

平均から離れて、このような例外的なふるまいをする粒子の頻度は、平方根の法則とよばれているものにしたがう。つまり、百個の微粒子があれば、そのうちおよそルート100、すなわち10個程度の粒子は、平均から外れたふるまいをしていることが見出される。これは純粋に統計学から導かれることである。

生命体にくらべてなぜ原子は小さいのか。その理由がこれなのだが、この法則は、あらゆるものに当てはまると思う。

例えば、大きな国が崩壊して小さい国々に分裂した途端、民族紛争や地域的な紛争が頻繁に起こるのも、その法則に従ってのことなのだろうか。

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虎バターをたっぷり使ったホットケーキが出てくる『ちびくろサンボ』は、だれもが好きは童話だが、この作品について、今は亡き米原万里氏が、著書『旅行者の食卓』で、こんなことを書いている。

サンボはいわゆる黒人(ネイティブアフリカン)ではなく、インド人だったのだ。

『ちびくろサンボ』の著者は、英国人、ヘレン・バナーマンで、彼女は当時、夫と共に、植民地であったインドの奥地で、医療活動をしていたらしい。
そして離れて暮らしている子供たちのために絵手紙を送り、その中に、小さい男の子と虎のお話もあった。

その物語がやがて英国で絵本になり、世界中に翻訳された訳で、実際、作者ヘレンの描いた絵ではサンボはインド人の顔をしている。

それを日本の出版社がステレオタイプの、色が黒くてアフロヘアーの黒人に仕上げてしまったらしい。

確かに虎は、アジアのみで生息する動物だ。そしてホットケーキというのは、あのふかふかのパンケーキではなく、インド料理でおなじみのナンらしい。

そして虎バターと言うのも、インドでよく使う油脂、ギーとの事。

サンボが食べたのは、ナンだったのか。

ただ、無味無臭のナンだけを169枚も食べるのは考えにくい。
そうか、サンボは、それでカレーを食べたのだ。

インドの青い空、熱い風、黄色い虎。

サンボの赤いシャツ、青いズボン。日傘。

焼きたての香ばしいナンに付けた褐色のカレー。

出版社が原作に忠実であれば、また違った『ちびくろサンボ』が生まれたことだろう。そしてカレーはもとより、ナンも今以上に普及したにちがいない。

昼食にホットケーキを焼いて食べ、夕食にカレーを食した日曜の休日にふと浮かんだ妄想でした。

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とてもチャーミングな映画を見た。アメリカ映画『フィリップ、きみを愛してる』。アイラブユー

内容は、詐欺と脱獄で、懲役163年の刑を受け、今も服役している実在の詐欺師、スティーヴンの物語だ。

IQ169の天才詐欺師の彼は、警察や裁判所などを相手に詐欺を、そして捕まれば、脱獄を繰り返すのだが、その目的はただ一つ、「恋人に逢うため」。

ゲイのスティーヴン(ジム・キャリー)は、保険金詐欺で服役していた刑務所で、フィリップ(ユアン・マクレガー)に出会い、一目惚れ。

それからはひたすらフィリップを喜ばせようと、遮二無二働き、詐欺を重ね、そして念願の2人だけのセレブな生活を実現させるのだが、やがて露見され、再び刑務所へ。

しかも欲のない優しい性格のフィリップは、スティーヴンが自分に嘘をついていた事ににショックを受け、もう会わないと宣言。
フィリップ彼の愛は空回り・・・・。

そこで、スティーヴンは、命を賭けた一世一代の大芝居をするのだが・・・・・。

さて、何といっても見どころは、フィリップ役のユアン・マクレガーだ。

ややメタボな体型に、もっさりした動き。服装も地味で(つか殆ど囚人服だが)、別にしなを作ったりしないのに、なぜか乙女チック満載なのだ。

普通のおっさんなのに、このほとばしる可愛らしさは一体なんだろう。

ジム・キャリーがかなりの熱演なので、逆にユアンのほんわかさが心に残るのだ。

それにしても「愛」って究極のモチベーションだなぁ。

これだけ人を愛し抜くことができたら、結果がどうであれ幸せな人生だと思う。

ところで懲役163年って・・・。人を殺したわけでもないのに。ただ普通の人より、頭が良すぎただけのことなのに。
アメリカの司法ってやっぱり分らん。

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マイケル・ジャクソンの全生涯を徹底調査した日記風ドキュメント
『マイケル・ジャクソン全記録1958-2009』を読んだ。

月明かりで散歩これは彼の人生を、時系列にそって、いつ、どこで何をしたかを淡々と追ったものだ。

偏見や同情や誇張もなく、ひたすら事実だけを書き連ねたこの本、つまり1958年8月29日、黒人家庭の7番目の子としてアメリカインディアナ州ゲイリーで生れた彼が、2009年7月7日の追悼式で、11歳の娘パリスから『これだけは言いたいです。お父さんは私たちが生れた時から今まで、ずっと最高の父親でした・・・パパ、愛してる』というはなむけのスピーチを受けるまでの50年をつづったものだ。

読み進むうちにその多忙さに驚かされる。新聞の社会欄によく「首相の日々」が載っているが、あれが40年以上続いたようなものだ。

幼いころから働きづくめ、世界中でライブを行い、毎日のように有名人に会い、毎日マスコミに追いかけられ、多くのファンに会い、世界中の子供たちの施設を訪問し続けたパフォーマー。

また巨額の契約を交わし、優秀な人材を雇い、一方解雇も辞さないという、冷徹なビジネスマンの顔も見せる。

後半ごろから、訴訟、裁判、検察という文字がやたら出てくるのがアメリカらしいというか、この本自体が、ひとつのアメリカ近代史のようだ。

そして、マイケルと私は同世代のせいか、思わぬ共通点に気がつく。

例えば、マイケルは1963年、幼稚園で、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中の「すべての山に登れ」を歌い大喝さいを浴びるが、私も幼稚園で「ドレミの歌」を歌っていた(だからどうした・・・)

またマイケルはTV番組の「三バカ大将」が好きだったそうだが、私もその番組が好きで、小学校から帰るとテレビで見ていた。

そんな訳で、マイケルの行動を時系列で追いながら、「ああ、この頃は私は何してたかなぁ」と過去をぼんやりと振り返るのが楽しみとなった。キング・オブ・ポップの行動と自分のを比べるなんて、不毛以外の何物でもないのだが・・・。

さて2005年の裁判で、無罪判決を受けて3ヶ月後、その舌の根も乾かぬうちに(この表現間違ってます)、マイケルは、ハリケーン「カトリーナ」の被災者のチャリティーをすると発表したが挫折。
そりゃ当然だろう、例の裁判費用は、莫大だったろうし、または彼の側近が「マイケルはん、いい加減にしなはれや」と進言したのかも。

事実をつづっただけだから、なおさら想像力を掻き立てられる。

マイケルに余計な修飾語は必要ないのだ。

マイケル・ジャクソン全記録 1958-2009
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浅田次郎の中国歴史小説、『蒼穹の昴』の続編である『中原の虹』が、待望の文庫化されたので、早速1巻と2巻を読みふけった。

魅力的な満州の馬賊の長、張作霖は国の未来を変えることが出来るのか、西太后亡き後、黄昏の清国はいかに崩壊していくのか・・・・。

続きの3巻4巻は、今月の15日に刊行されるそうで、今は身もだえしながら待っている状態である。

浅田氏のけれん味のある文章には、いつも「うーん、あざといな」と思いつつのめり込んでしまう。

そんな訳で、身を持て余している時に耳に入った、中国人初のノーベル賞のニュース。
平和賞を受賞したのは民主活動家で、現在服役中の劉暁波さん。

・・・・なんだかすっきりしない。なぜ彼を平和賞に選んだのか。

もちろん、ノーベル賞委員会側には彼を選んだ正当な理由や経緯があるのだろうが、しかし・・・・。

理由は何であれ、本国で刑に服している人間を選ぶのはいかがなものか。あんたの国は、間違っていると喧嘩を売っているようなものではないか。

中国側は当然、弾圧や対抗措置をとるだろうし、それに対してノルウェー外相の「ノーベル賞委員会は政府から独立した組織だからー」という言葉もなんだかしらじらしい。

私自身は中国政府は大嫌いだが、今回のやり方は『ノーベル平和賞』という、いわば錦の御旗で、西欧の価値観を押し付けているようで不愉快なのだ。

確かに「民主化」とは耳触りの良い言葉だ。

だが、人口500万も満たないノルウェーと14億の中国を同じ土俵で考えるのはおかしい。

オバマ大統領らはこれを機会に、劉氏の釈放を、と言っているようだが、それは僭越というものだろう。

そんな訳で、何だかイラっとしている時に、今度は日本の受賞者の発言。

ノーベル化学賞に輝いた鈴木章北海道大名誉教授(80)は8日、産経新聞の取材に応じ、「日本の科学技術力は非常にレベルが高く、今後も維持していかねばならない」と強調した。昨年11月に政府の事業仕分けで注目された蓮舫行政刷新担当相の「2位じゃだめなんでしょうか」との発言については、「科学や技術を全く知らない人の言葉だ」とばっさり切り捨てた。(産経新聞)

ノーベル賞はかくも人を傲慢にさせるものなのか。

鈴木氏の言葉は、たぶんマスコミに誘導されて言わされたのかもしれないが、何だか、勝てば官軍というか、鬼の首を取ったような感じで、とても残念だ。

思うにノーベル賞ってそんなに凄いものなのか。

ノーベル賞に縁がなくても、立派な仕事をした人は世にたくさんいる。

たとえば、アフガニスタンで長年井戸掘りをしている中村哲氏とか。

いつか中村氏にはノーベル平和賞を取ってもらいたいなぁと思ってしまう私も、やっぱり権威主義者なのか・・・。

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最近立て続けに、台湾映画を2本見た。
海角7号』と『言えない秘密』だ。

ちなみに『海角7号』、邦題は、『海角7号 君想う、 国境の南』だが、なんとも長いタイトルをつけたものだ。これじゃまるで大時代的なメロドラマのようだ。

海各7号この『海角7号』、台湾では「タイタニック」に次いで、歴代2位の興行収入だそうだが、私が見た限りでは、時々面白いなと思いながらも特に感銘は受けなかった。

たぶん、歴史的・社会的に、台湾人の琴線に強く響くものがあったのだろうが、日本人の私にはそれを見抜く感受性がなかったらしい。

さて、『言えない秘密』の方だが、その画像の美しさ、音楽の繊細さ、完成度の高さに、最初から最後まですっかり魅入ってしまった。

ienaiこの作品で監督、脚本、主演、そして音楽を担当するのが、ジェイ・チョウ(周杰倫)だ。

台湾のトップアーティスト、歌手、作曲はもちろん、最近は『頭文字D』や『王妃の紋章』など俳優としても稀有な才能を見せるジェイだが、天は彼に三物も四物も与えたらしい。

さて、物語だが、赤レンガ造りの校舎、制服に身を包んだ高校生たち、古びた音楽室とピアノ、自転車の二人乗り。

生徒たちは笑いさざめきながら登校し、授業を受け、ピアノの練習に精を出し、ラグビーで汗を流す。そして、その中ではぐくまれる、高校生同士のラブストーリー。

ジェイ・チョウ演じるシャンルンは、天才的なピアノの腕を持つ高校生だ。彼はふとしたことで同じ高校の美少女シャオユーと出会う。

秘密古いピアノを二人で弾いたり、放課後、二人乗りの自転車で海沿いの街を走ったり、好きな音楽を聴いたり・・・・・。

見ようによってはあまりに古風で、今時こんな高校生いるかと笑われそうだが、若者ジェイ・チョウは、あくまでノスタルジックでピュアな世界にこだわる。

だが、その微笑ましいストーリーが、後半突然変わる。
物語は緊迫したミステリーとなり、愛らしい少女シャオユーは生々しい現実の世界に苦しみもだえる。
そして、シャンルンは彼女を救うために命がけの、ある決断をするのだった。

『言えない秘密』というタイトル通り、これ以上、詳しいストーリーは言えないが、伏線も上手にちりばめられており、最後は胸のすくラストシーンだ。
どんなに時代が変わっても、ピュアな愛は変わらない。

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