レンタルショップでCDを借りる時、たまに’70年代のオムニバスアルバムを選ぶ時がある。最新のアルバムや好きなアーティストのを聞くのもいいが、自分が中学の頃ラジオから流れるのを聞いて「これいいな」と思った曲、わざわざレコードを買うほどではなかったけど、好きで屋根の猫ラジオから流れるのを心待ちにしていた音楽と出会えるのは懐かしい喜びがある。

さて、特に好きだった曲にロバータ・フラックの「やさしく歌って」というのがある。彼女のハスキーで乾いた、それでいてしっとりと情感のある声、控えめで落ち着いたストリングス、うっとりして聴き入ったものだ。

だから、映画「アバウト・ア・ボーイ」を見たときちょっと複雑な気持ちになった。この映画の中で、いじめられっ子マーカスは、うつ病の母のため学校の発表会で、彼女の大好きな「やさしく歌って」を歌おうとする。それに対してヒュー・グラント扮するウィルは、そんなうたを歌ったら学校の生徒みんなの笑い者になる、ますますいじめられる!と、必死で阻止しようとする。

確かにヒップ・ホップが席捲しているイギリスの小学校では、浮いた選曲だろう。でもそんなに悪いかなぁ「やさしく歌って」・・・。日本の今をときめくラッパーたちだって、たまに「名残り雪」とか聴かないか?

映画と原作は、ラストに向けての展開が違っているが、どちらも楽しめた。ヒュー・グラントは男の負け犬をやらせたら英国一だ。

そしてマーカスと言う少年、自分が辛い目にあっていても、つねに母のことを思い遣っている愛い奴だ。また原作版のマーカス少年の、上級生の女の子に対する優しさには思わず泣きそうになった。

未婚、子無し、職無し30男と、母子家庭で母はうつ病で自殺未遂、学校ではいじめられっ子の小学生と言う、見方によっては暗くて救いのない物語なのに、妙に明るく、見終わった後はとても爽やか。やっぱりイギリスは奥が深い。

   


アバウト・ア・ボーイ