先日大掃除をしていて、家具の下から埃だらけの文庫本を発見。見ると、ローレンス著・伊藤整訳「チャタレイ夫人の恋人」だ。自分は買った覚えがないので誰かが忘れて行ったのか。まだ未読だったので早速読み始めた。すると・・・・・。

話が途中で飛ぶのだ。おかしいな、と思いながらも読み続けると、夫人と森番が人目を忍んで小屋で逢う場面でまたしも話が途絶え・・・・・・・わかった!

あわてて奥付を見ると昭和39年6月10日発行。あの有名な「芸術か、猥褻か」で物議をかもし、結局情交の場面が削除された版だったわけだ。すっかり忘れていた。

でも、なんだかうれしくなってきた。今じゃいつでもどこでも小学生でも、パソコンのクリック1つでアダルトサイトに行ける時代だ。なんだか自分が、戦前特高に検閲されるアカの作家か、戦後教科書に墨を塗られた小学生になったような気が(ほんとかよ!)。久々に新鮮な驚きを味わった。

ついつい脱線してチャタレイ裁判の記事をネットで調べたりして、やっと今日読書終了。

まず意外だったのが森番メラーズのこと。野卑な青年と思い込んでいたのだが、これがとても頭の良い読書好きの、物静かな男なのだ。体格も華奢でどちらかと言うと病弱だ。高い能力がありながら森番という職業を選んだのも、人間関係、特に下品で性悪な妻のせいですっかり厭世的になり、なかば隠遁生活を送るつもりでチャタレイ家の森番になったのだ。

それに比べてコニイ(チャタレイ夫人の名)の夫クリフォドは、戦争で下半身不随にはなったが、それ以外は壮健、性格は意固地で冷淡、そしてよくしゃべる。自分と同じ階級の者同士の意味の無い議論。会話には書物からの引用が多く、自分の知識を誇示するための脳髄の垂れ流しといったおしゃべりにコニイは心底ウンザリしている。また夫が炭鉱経営者として、その仕事に躍起になっているのも気に入らない。効率よい成果を挙げるため、坑夫に非人間的な作業を強いる炭鉱の仕事を、コニイは嫌っているのだ。

私の目にはメラーズの方が上品で高貴で、貴族のクリフォドのほうが野卑た通俗的な男に見えてしょうがないのだが、階級社会イギリスでは、貴族と森番の身分の差は歴然としている。だが自然を愛し、インテリゲンチャのコニイはメラーズに惹かれ恋に落ちる。

どちらかと言うと、禁欲生活を送っているメラーズを、コニイが誘惑したと言う方が当たっている。またこの2人はセックスでもなかなか相性が良かったようだ。お上から検閲を受けているので(!)前後の文章で判断するしかないが。またメラーズは物静かな割にはセックスに対して先取の気風を持っているらしく、なんかいろんなことを試しているみたいだ(これもあくまで憶測で)。戦時中は男性とも経験があったと見受けられる。うーん。でもこういうタイプの男っているよね。おとなしそうなのに実は絶倫とか。

夫クリフォドにはちょっと気の毒だったが、理想のカップル誕生!で、さわやかな読後感だった。今度は完訳版にチャレンジしてみよう。むむむ。

       


チャタレイ夫人の恋人