人間眠りにつくと、知性が後退し、原始的な野性が幅をきかせるらしい。普段の生活だったら絶対ありえないことが夢の中ではごく普通に認知される。不条理である。
安部公房の小説を読んでいると、ふと自分が今夢を見ているような錯覚におちいる。ありえないことなのにそれを当り前のように受け入れているのだ。たとえば「水中都市」の中のおとうさんが子供を産むシーンとか、街の中を魚のように泳ぐ場面とか。(「野良魚だ!」には笑った)
彼はギャグのセンスも凄いと思う。私は「砂の女」は壮大なギャグだと思っている。不条理な、ブラックなギャグ。だって男が飯を食う時、女が家の中で番傘をさしかけるんですよそれも当然のように。女がボケ、男がツッコミ、だんだん2人の言葉の応酬は夫婦漫才の様相を呈してくる。そしてラストのオチも見事だ。
安部公房は面白いのだが怖い、笑いと恐怖が表裏一体となっている。
そして「闖入者」これはまさしく悪夢だ。あまり恐ろしいのでなるべく読まないようにしているが、初めてこれを読んだ後、夢の中に何度も現れ、うなされたものだ。
彼の作品は海外でも人気らしく、私の知っているアメリカ人も「砂の女」の大ファンで、わざわざ鳥取砂丘まで旅をしたことがあるという。
爆笑問題あたりが漫才のネタで「砂の女」やってくれないかな、もちろん女役は太田で。
水中都市・デンドロカカリヤ
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