チューリップオースティン著「高慢と偏見」が映画化されるとの噂を聞いたが本当だろうか。この小説は英国BBCテレビにてコリン・ファース主演でドラマ化され有名になったが、あのドラマを越える作品を作るのはかなりのプレッシャーだろう。

サマセット・モームの「世界の十大小説」にも入っている「高慢と偏見」だが内容は呆れるほど単純で、五人姉妹の長女と次女が結婚相手を見つける話(こういってしまうと身も蓋もないが)。

英国版橋田須賀子ドラマと言ったところか。複雑な人間関係、辛辣な登場人物など共通点が多い。橋田さんもオースティン好きだったのかな。

感動的なのはやはり名門の当主ダーシーの行動だろう。「高潔な紳士」という言葉は彼のためにあるようだ。ひどい言葉で罵られ、結婚の申し込みを断られようとも、それでヤケになることもなく、素直に自分を反省し改めるところなど「本物の紳士」しか出来ないことである。同じく結婚を申し込んで断られた牧師のコリンズ氏が、その舌の根も乾かぬうちに、断られた相手の親友と婚約する厚顔無恥とはエライ違いだ。

オースティンの小説の登場人物は概して生活感がない。自分で稼ぐことはしないし、家事は使用人がする、高潔な趣味があるわけでもない。必然的に毎日噂話に花が咲くという塩梅だ。

見る人によっては退屈きわまりない状況でありながら、ついつい引き込まれてしまう魔力がオースティンにはある。何も天下国家を語ったり、高尚なことを語るのが文学ではない。

そう、神は細部に宿るのだ。

 

 
高慢と偏見