通勤バスの車窓から、封鎖された工場の水槽タンクを眺めるのが好きだ。ぽつねんと立っているそれは、朝、夕と雰囲気が変わり見飽きない。まるで映画「バグダッドカフェ」のワンシーンのよう。思わず工場内に入って、モップで掃除がしたくなる。

廃墟を見ると心が安らぐ。ガランとした工場、けむりの消えた煙突が、真赤な夕陽を背景にそそり立つさまは、心底しびれる。無機質なのに、不思議と大自然と溶け合っている。

私の住んでいるK市は工業都市だから工場跡地や古いコンビナートはたくさんあるが、いかんせん、なかなか同好の士が見つからず欲求不満の日々を過ごしている。一人でうろうろするのは危険が多いし、不審者と思われても困る。思い切って「廃墟の市ツァー」を募集しようか。

廃墟が良いのは、激しく人の想像力を掻き立ててくれる点だ。昔はさぞ賑わったであろう、その多くの人たちの残像まだ漂っているような錯覚を覚える。

東京ディズニーランドと軍艦島ツァー、どっちに行きたいと言われたら激しく軍艦島だろう(だが最近ここは、廃墟フリークにかなり荒らされているらしい)

長生きすれば、六本木ヒルズが廃墟になった絵を見ることができるだろうか。見たいような見たくないような。

 




軍艦島 棄てられた島の風景―雑賀雄二写真集
軍艦島―眠りのなかの覚醒