以前、拙ブログにて“統合失調症”のことを書いている時、ふと、ファン・ゴッホを思い出した。病気と貧困に苦しみ、絵は売れず、37歳でピストル自殺をはかり無名のまま死んだ。

天才であるがゆえに幻想が見えたのか、幻想の中から何かインスパイヤされて絵筆を進めたのか、凡人にはまったくわからない。

苦渋に満ちた人生だったが、彼には弟のテオという良き理解者がいたことが救いだ。弟あてのおびただしい書簡集を見ても、この2人が運命共同体だったことが分かる。

さて、藤原伊織著「ひまわりの祝祭」は、ファン・ゴッホの「アルルの8枚目のひまわりは存在する」という、夢のような発想から生まれたミステリーだ。

この人は本当に文章が上手い。会話も洒落ている。上手すぎるがゆえに、逆にスルッと読めすぎてしまう。つまづきがなさ過ぎるというか。文章が上手すぎるのが欠点なんて、ある意味すごい。

本の中で、チラッと、佐伯祐三のことが書かれてあった。ユトリロ以上の作品を描いた画家と評価していたのがうれしく、それだけでこの本は、私の中で2割り増しとなった。

幻のひまわりを巡って、愛好家、投資家、やくざ等々あらゆる人たちがうごめく。特に、自分の才能の無さに気づき芸術への夢をあきらめた敗残者たちの執念は、哀感をそそる。

才能があるがゆえの不幸、そしてないがゆえの不幸。どちらが重いだろうか。

  

ゴッホ
ひまわりの祝祭