ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2004年12月

大つごもりに初雪が降った。

ぬくぬくとした温かい部屋の中から外の雪を眺めることの、小気味良さよ。    このまま静かなお正月を迎えたいものだ。

ところで・・・、大晦日、格闘技番組が定番になったのはいつからだろうか。 格闘技(プロレスとかK何とか)に全然関心がない私は、いつも不思議に思う。どこが面白いのだろうか。選手たちの大仰なしぐさ、チープな雰囲気。おそらく格闘技ファンの人は、逆に、なぜこんな面白いのに?と思っているんだろうな。

そして格闘技ファンの大部分は男性である。

私が男と女の考え方の違いを実感したのは、ほんの小学一年の時だ。  その頃のテレビに円谷プロの「ウルトラQ」と言う怪奇番組があった。     私はその番組が好きで、欠かさず観ていた。

1話完結で毎回怪奇現象や、怪獣、クリチャーが出るのだが、映像が妙にシュールで、いつも不思議な余韻を残して番組は終わった。

特に好きだったのは「悪魔っ子」というタイトルのもの。登場人物は可愛い女の子。幽霊やクリチャーが出るわけでなく、スプラッタシーンもなく、それこそ一滴の血も流さないのに・・・・・怖かった。背筋が凍るほど怖かった。   

ああそれなのに、「ウルトラQ」が終了し、すぐ「ウルトラマン」が始まった。男子は大喜び。テレビのあった次の日は、みんなウルトラマンごっこをしていた。カードを集める子もいた。        

でも女子は不満だ。不思議な事件を、人間の力で解決するのだから面白いのであって、ヒーローがエイヤッとやっつけてしまってはつまらない。

その後、ウルトラセブン、ウルトラ何とか(もはや覚えていない)とシリーズが続いたが、ある時期同じ円谷プロで「怪奇大作戦」と言うのがあった。

これは「ウルトラQ」と似ており、怪奇現象を「科学特捜隊」が知恵をしぼって解決していくというもの。「科学特捜隊」と言っても特別ヒーローはおらす、事件は毎回人の力、あるいは超自然的な力で解決していく。

これで一番好きだったのは「狂気人間」というタイトルのもの。今では絶対放映されることのない、放送禁止用語大連発の問題作だ。

男に裏切られた女がその男を殺す。だが心神喪失(いわゆる4文字言葉)のため無罪となる。これに味を占めた女は、一時的に4文字になる装置を作り、人を殺しては4文字で釈放を繰り返す。怪しいと感じた科学特捜隊のメンバー(岸田森さんが演じていた)が、自分自身4文字にされそうになりながらも事件を解決していく・・・。

同級生だった男に、「ウルトラQ」や「怪奇大作戦」の話をしても、覚えていないと言う。それよりも・・・「ウルトラマンよりセブンの方が面白かった」だの「息子にセブンの話をしたら尊敬された・・・」だの。セブンの方が人気があるようだ。

なぜセブンの方が?ビジュアル的にはあまり変わらないと思うが?・・・・ わかった・・・!制限時間だ。

ウルトラセブンは3分間しか戦えない。2分を超えるとカラータイマーが鳴る。

ウルトラセブンって、怪獣番組の名を借りた格闘技だったのね。ヒール役は怪獣、制限時間は3分。

男脳の皆さん、今夜は存分に格闘技をお楽しみ下さい。女脳は何しよう。

ていうか、一年間の締め日に、あくまっこだのきょうきにんげんだの・・・・・  反省します。

 

それでは、星の数ほどあるブログの中から拙ブログを読んで下さった皆様

2005年が良き年であることを心よりお祈り申し上げます。

 

 

 

 

 

 

初雪


ウルトラQ(6)
DVD 怪奇大作戦 Vol.2

塩野七生さんの名を初めて知ったのは、とある小さな化粧品店がきっかけだった。「花椿」という資生堂の小冊子に、エッセイを載せていたのだ。
 
当時中学生だった私は、もちろん化粧品を買うお金なんて持っていなし、その必要性もなかったが、お店の落ち着いた女らしい雰囲気に憬れて、せっせとお小遣いを貯めては、安いオーデコロンや夏ほてった顔につけるアストリンゼントローションなどを買い求めた。
 
礼儀正しい店員は、中学生の私にもとても丁寧な応対をし、可愛く包装された品と共に「花椿」を手渡してくれる。何だか自分が一人前の女性になったかのような気がした。
 
そして私は塩野さんのエッセイに夢中になった。辛口でありながら異国の香り漂う優雅な雰囲気、独自の目線でとらえたシニカルな表現。今まで知らなかった世界。       
夢中になった理由は色々あるが、やはりあの店の雰囲気、自分を大人扱いしてくれた喜びも一因だろう。    
 
それほど好きだった塩野さんだが、実はエッセイ以外は、あまり読み込んではいない。以前「チェーザレ・ボルジア」を買ったが、途中で読むのを止めてしまった。
どうも私はルネッサンス期、歩く若きマキアベェッリ体現者であるチェーザレに興味を持てないようだ。悪い癖だが私はキャラクターに共感しないと、本を読み進めることが出来ない。 
                   
彼は確かに魅力的な人物だとは思うが、とにかく逡巡しないでどんどん進んでいく。行動力があり過ぎて、そこが物足りないのだ。もっと悩んで欲しい。(というか途中までしか読んでないので、実際は違うかも)このまま放置するのは口惜しい。
 
よし!折角のお正月休みだから、これまで中断していた本を読み返してみよう。今まで知らなかった新しい展開があるかも知れない。
 
中学生の頃の旺盛な好奇心を思い出して、新しい世界を見つけてみよう。
 
 
 
 
 
水辺の洋館
チェーザレ・ボルジア あるいは優雅なる冷酷

今日偶然テレビで、紀宮の婚約記者会見を見た。
 
こわかった。
 
あれが本物のアルカイックスマイルなのか。
 
口角だけを上に上げた独特の表情。その笑顔には「私のそばに近づかないで」オーラがある。普通の人はその笑顔を見ただけでもう何も言えない。
美智子皇后でさえあのような完璧な表情は出来ない。民間出身の皇后には、まだ人間らしい隙がある。
 
生まれた時から皇室の一員として育ち、兄宮たちのように海外へ留学する機会もなく、外国のプリンセスのようなスキャンダルもなく、ただただ素直に生真面目に皇室としての役割をこなしていた紀宮。
 
でも分っていたはずだ。女子の皇位継承を認めていない日本にとって、ある年齢を過ぎた内親王は、"無用"以外の何者でもないという事を。
 
紀子様ブーム、そして雅子さんフィーバーの時、紀宮はどんな気持ちでそれらを見つめていたのだろうか。自分の出来ることと言えば、あのスマイルで自分の周囲にバリアをひき、自分への嘲笑、悪意から身を守るしかなかった。そしてそのすべを知らない雅子妃は病気になった。
 
だが婚約した今、もうあのオーラは必要ない。確かにやめた途端、自分に対する中傷や悪意が色々飛び込んでくるだろう。とても辛いかもしれない。しかしアルカイックスマイルをしている限り、人と本当に理解し合え得ることなど出来ないと思う。
 
来年の夏民間のホテルで、泣き笑いの表情で結婚式を挙げるサーヤを見たいものだ。
 
 
 

はんぺんが、無い。
昨日から探しているのに、無い。
2軒のスーパーを回ったのだが、どちらも売り切れだった。
そんな・・・はんぺんは伊達巻を作るときの必須アイテム。困った。
あの、白くて四角でふわふわして塩味しかしない、「無個性」を絵に描いたような、もしくは「あなた色に染まります」とこびる従順なデステモーナのようなはんぺんはどこへいったんだ。反乱か、革命か?助けて紀文さん!
 
それと今の時期、正月用根菜類の値段が高いのにムカつく。乾物類は早めにまとめ買いをしていたが、野菜類はあまり早く買うと傷んでくるし・・・。  くそっスーパーめ、客の足元見やがって・・・・。
 
・・・買い物で疲れた神経を癒すには休養が一番。大掃除と年賀状出しは明日する事にして、ココアでも飲んでゆっくりしよう。
 
テレビは特番みたいなのばかりで、(昨年はNHKで映像の世紀を放送していたが)面白くないので、結局本を読んで過ごす。
日常の雑務で疲れた時は、すごくリッチなもの、現実とかけ離れた優雅なもので、逃避をしようということで、辻 静雄さんの「フランス料理の手帖」と、邱 永漢さんの「旅が好き、食べることはもっと好き」をパラパラと眺める。
 
キャビアの本格的な食べ方、世界最高三ツ星レストランのメニュー、食卓の音楽の歴史、20余年、ヨーロッパを中心に最高の味を求めてきた辻さんのエッセイは、優雅さが凝縮している。もちろん贅沢なだけでなく、フランスのお百姓さんが食べる地元料理の言及も忘れない。            また邱さんは、ヨーロッパはもとより、香港を始めアジアの最高料理を味わい尽くしている。
                                            私はグルメではないので、この2人が味わった料理を追体験したい!とは願わないが、ゆとりのある暮らしや、その考え方は羨ましい。
 
ところで邱さんは、著書の中で、コロンボのリゾートホテルを推賞している
まるで自分がインド総督になったのではないかと思わせる、ホテルのサーヴィスの雰囲気、そして海岸線が西を向いているので、どのホテルに泊まっても夕陽の落ちていく海辺が大そう美しいとのこと。
きっと邱さんは美しい夕陽を何度も眺めたのだろう。
 
今そのスリランカのコロンボは、津波で大きな被害を受けている。       
 
2人が褒め称えたホテルやレストランも、今も盛況かというと、そうでもない消えてしまったのもある。それはせん無いことだ。
 
さて、明日はルイ王朝の食卓に思いを馳せながら、はんぺんを買いに行こう。
 
 
 
 
 
機関車
フランス料理の手帖
旅が好き、食べることはもっと好き

正月の食料品買出しのついでに、同じショッピングセンターにある本屋で、「ブリジット・ジョーンズの日記 切れそうなわたしの12か月 上巻」を購入
今回続編であるこれは、なぜか上巻、下巻に分れていて、ページ数も少ないのに、一冊の値段は前回と同じ。少しムッとした。
でもブリジット、好きなんだよね、あの行き当たりばったりで、だらしのないとこが、妙にホッとさせてくれる。
 
「片付けられない女たち」「気が付くと机の上がごちゃごちゃになっているあなたへ」「超整理術」etc・・・。まぁ本を読んで悪癖が直るのなら苦労はしない。これは私の説だが、片付けられない人というのは、ひらめきで生きているのだ。「ひらめき」というと何かエジソンみたいでかっこいいが、実際はそんな大層なものではない。ようするに気まぐれな思いつきだ。そして所詮思いつきと言うものは、すぐ忘れてしまうので、結局このタイプの人間は自分がしまった物の探しものをしながら一生を終えることになる。
 
ただ悪い事ばかりではない。くだんの人がごくたまに大掃除をした時、そこは宝の山である。「何で電話帳の中に二千円札が?」「あんなに探しても見つからなかったレンタルビデオがコタツの中に!」「会社四季報の中にキャッシュカードが!(再交付済)」・・・・・・・・やはりただのバカだ。
 
前回、ブリジットは自分の性格を反省し日記をつけ始め、まぁいろいろあったが最終的には念願の恋人をゲットする。ブリジットはあんなに素晴らしい友人を持っているのだから、別に恋人がいなくてもいいじゃんと私など思うのだが、イギリス社会では、やはり恋人のいない独身女性は生きにくいんだろうな。
 
恋人が出来たブリジットが今回どんな騒動をおこすのかちょっと楽しみ。おっと、でもその前に大掃除、年賀状出し(まだやってないのか)、おせち料理作りが控えている。さて無事正月を迎えることが出来るのか。片付けられない女の道は長くけわしい。
 
 くりきんとんと田作り
 
きんとん1
ブリジット・ジョーンズの日記―きれそうなわたしの12か月 秋冬篇

 以前この日記で書いた水中カメラマン中村征夫さんは、奥尻島で津波に遭遇したことがある。「早く高台に逃げて、靴などいいから!」との宿のおかみさんの一声で、あやうく九死に一生を得たという。  
 
人間の日々のいとなみなど、大自然の前では儚いものだ。このたびの未曾有の大地震と津波。被災された邦人の中には、コツコツとお金を貯め、上司に頭を下げて有給休暇をもらい、やっと憧れの地に来た人もいるかもしれない。そんないじましい人間の思いなどおかまいなく、大自然は突然猛威をふるう。
 
知人で、アジア旅行が大好きな人がいた。50歳くらいの女性なのだが、旅はアジアに限ると言う。
「アメリカやヨーロッパなど行く気がしないわ」
「特にマレーシアはどこに行っても食べ物がおいしいの」         
そして彼女は、まとまった休みを取ると、せっせとインドネシアやマレーシア、タイ、ミャンマーなどを旅して周った。SARSが猛威をふるっていた時も確かアジアのどこかへ出かけていた。今、彼女とは音信不通となったが、どこぞの地をほっつき歩いているのだろうか。もしや被災してはいないだろうか。
 
私の周りには彼女のようなアジア旅行好きの人が多い。私はひそかに「中年深夜特急」と呼んでいるのだが、とにかく彼女たちは、たくましい。『自分探しの旅』なんて甘ったれた言葉から、もっともかけ離れた人たちだ。
ブランドや、風光明媚な観光地、高級リゾートホテルなんていっさい興味がない。ラブアフェアなんて噴飯ものだ。そしてやたらよく食う。ごちゃごちゃした市場が好き。言葉も分らないのにすぐ地元の人と仲良くなる。そして絶対お土産を買ってこない。
 
このたび被災に遭われた人たちは殆どが地元の方だろうが、海外からの旅行者も多い。普通の観光客、サーファー、スキューバダイバー、そして普通の深夜特急組、そしてわれらが中年深夜特急組もいるかもしれない。
 
どんな人にも自然災害はやってくる、個々の都合などおかまいなしに。それでも人間は、日々のいとなみを止めることはしないのだ
 
 

深夜特急〈2〉マレー半島・シンガポール

 運動神経ゼロなのに、スキューバダイビングのライセンスを持っている。昔「スプラッシュ」という映画を見、水中にたゆらぐトム・ハンクスと人魚を見ていいなぁと思ったのがきっかけだ。元々ダイビングには興味があったので、すぐライセンスを取った。 それから何度も海へ潜りに出かけた。

海中遊泳はとても楽しいものだったが、ダイビングは事前の機材の準備、運搬、メンテナンスが大変で(て言うか、単に私が怠け者なだけ。他のダイバーの方は嬉々として準備をされてた)、また色々な海に出かけるとなるとお金もかかるし、体力もいる。ビンボーで若くもない私は、そのうち海から遠ざかっていった・・・。     ここ数年、潜りには行ってないが、時々海中遊泳をしている夢を見てドキッとする。本当は潜りたいのだ、ゆったり水の中を。

さて、ダイビングに行かなくなって久しいが、水中写真を見るのは大好で、雑誌などよく覗いている。特に注目しているのは水中カメラマン中村征男さんの作品だ。彼の撮るさかなたちはとても人間的で可愛い。そして中村さんの書くテキストも作品に負けず劣らずユーモアがあって楽しいのだ。

以前中村さんは、桜井よしこさんが司会をしていたニュース番組「きょうの出来事」によくゲストで出演し、さかなの話などしていた。普段はまなじりを決して、上品な口調で世相を斬っている桜井さんだが、このコーナーの時だけは、とても穏やかな表情で、楽しそうに中村さんとお話をしていたように思う(会話がかみ合わないところもあったが)                                      そして中村さんといえば、なんかいつもより緊張していて、まるで優等生の女の子に出会って、ドギマギしている野生の少年という風情だ。                                      テレビをぼんやり見ながら思ったものだ。「この2人、結婚すれば良いのに」 中村さんのような海の男と結婚すれば、さぞや桜井さん仕事のストレスも癒されるんじゃないかな。年齢も近いみたいだし・・・第1、絵になると思うけど。野生的な水中カメラマンと、世論を斬るクールー・ビューティーな女性の恋なんて・・・。

・・・すいません、妄想はこれくらいにして、来年は絶対海に行きます。美しい海で、半日のんびりシュノーケリングをして目一杯現実逃避してきます!                              それではみなさん、ごきげんよう・・・。

  

 

 

 

                                
日本の危機 (2)

風景

イヴの夜である。街を歩いていると、さまざまなクリスマスソングが流れている。レトロ2今年は特にワム!の「ラストクリスマス」がよく流れているように思う。ドラマの影響か?

ところで「ワム!」と聞くと私はいつも漫才の「ツービート」を想い出す。タケシのマシンガントークに圧倒されながら、一生懸命あいづちのタイミングを計っていたあの相方は、今なにしているんだろう。そして、 作詞・作曲・ボーカルついでにカミングアウトまでしてくれたジョージ・マイケルのとなりにいた人、名前なんだっけ?

今の時期、私はクリスマスより正月の準備、おせちの用意で頭がいっぱいだ。その上まだ年賀状も出してない。大掃除もまだだ。お金もおろさなくては。な訳で、クリスマスの話題はスルーします。第一、最近は生クリームのケーキひと切れ食べただけで胸焼けしてしまう。年は取りたくないもんだ。

おせちといえば、池波正太郎さんの「食卓の情景」に出てくるおせちは美味しそうだ。老母が作るなんの変哲もないものだと池波さんは謙遜しているが、味がしみてお酒の肴にぴったりな気がする

料理は下手だが、おせち料理を作るのは大好きだ。元旦にいただくのを考慮に入れて今から少しずつ準備をする。そして時間を味方につければあら不思議、おいしいおせちが出来上がる。

のろまの私はリアルタイムでテキパキと食事の準備をするのは苦手だが、おせちのように時間をかけて味をしみこませる、味をつくる料理は好きだ。きっと池波さんの年老いたお母さんもゆっくりと心を込めてつくったのだろう。

それに比べると幸田露伴が娘、文さんに準備させたお正月料理はすごい。要求のあまりの厳しさに、文さんは正月なんて無ければいいのにと願っていたらしい。でも必死で父の要求に応えようと奮闘している姿は心を打たれる。

晩年文さんは、便利な電化製品がたくさん出てきた事について  「これで女の自由な時間が出来る」と大変喜んでいたそうだ。

池波正太郎さんのお母さん、幸田文さんどちらも明治生まれ。冷蔵庫も炊飯器もガスもない時代、孤軍奮闘していた明治の女たちに思いをよせるのである。

 

 

 

  


食卓の情景
父・こんなこと

花イギリス映画が好きである。          貴族たちが登場する、格調高い文芸物が好きだし、サッチャー政策下、炭鉱不況・失業・貧乏ヒーヒーものも面白い。       ひねったホラーも味があるし、アバンギャルドでポップな青春物もいい。

なわけで、ひと昔前話題になった英国美青年ブームにも当然乗った。 ダニエル・ディ・ルイス、ヒュー・グラント、ルパート・エヴェレットら多くのスターが輩出されたが、その彼らの多くが今も第一線で活躍しているのは嬉しいことだ。やはり美貌だけではなかったってことか。

「アナザー・カントリー」を見に行ったきっかけは、英国のトラディッショナルファッションに興味があったからだ。確かに俳優らが身にまとっている服装は見てて楽しかった。シックなベストやセーター、クリケットで着るスポーツウェア、礼装のタキシードやベスト。ルパートの少し崩れた着こなしも良い。

でもこの映画で白眉だったのは、ルパード演ずるガイ・ベネットの親友、トミー・ジャドを演じたコリン・ファースだ。他の俳優と比べ、地味な印象のコリンだが、この映画では左翼青年ジャドを見事に演じている。

彼はパブリックスクールの生徒にもかかわらず、共産主義に傾倒し、寮が消灯になると、こっそり懐中電灯でマルクスを読んだりしている。だが自分の主義を人に押し付けるような事はしない。  ガイ・ベネットが恋人(もちろん男性)に夢中になったり、学校代表になろうと躍起になっているのを、多少皮肉をまじえながらも、ほほえましく見守り応援している。物静かで思いやりがあって、でも芯の強い男だ。                                私が好きなシーンは、ニットのベスト(セーターかな)を着て眼鏡をかけたジャドが本を読んでいるところ。決して美少年ではないが、若々しい知性溢れた雰囲気に圧倒された。

結局ガイ・ベネットは陰謀のせいで学校代表になれず、出世の道を断たれ、その復讐のためソ連のスパイになったということだが、私は違う解釈をしている。ガイ・ベネットは本当はジャドが好きだったのだ。その数年後スペイン内戦で死亡したジャドに変わり、彼は共産主義に入っていったのだと信じている。男であろうと女であろうと、ホモだろうとノンケだろうと、優れた人物は愛されるのだ。肉体的かプラトニックかは別として。

この役を演じたコリンは、出演作品が日本で余り上映されなかったこともあり、しばらく音沙汰がなかったが、「高慢と偏見」でまた注目され「ブリジッド・ジョーンズの日記」で再び人気を集めた。       今の渋いコリンも大好きだが、やはり私は若き日の知性溢れたトミー・ジャド役のコリンが忘れられない。そして、その一番美しい映像を見られた事に今も感謝している。

※「アナザー・カントリー」をご存知ない方、さっぱり意味がわからないと思います。ごめんなさい。        

                                                                                             


アナザー・カントリー

こっこ今年の夏、いとこの女の子が、石垣島へ嫁に行った。だんなになる人とは沖縄で知りあったのだが、彼のお母さんが老人性痴呆症になり介護のため故郷の石垣島に帰ので、一緒についていったのだ。来年には子供も生まれるという。                いとこは私と違い、明るくて賢い子だから、きっと家族や島の人たちともうまくやっていけるだろう。幸多かれと祈らずにはいられない。

ずっと「沖縄」に憧れている。まだ一度、それも社内旅行で行ったきりだが、それでも沖縄のたたずまい、町の雰囲気、人々の表情に強く引かれた。九州に住んでいるのだから、沖縄に行こうと思えば行けるのだが、あまり憧れすぎて妙にためらってしまう。

こっこは沖縄の女の子だ。目鼻立ちのはっきりした顔、きつい沖縄弁。めったにテレビには出ないが、たまに音楽番組に出演する時などは、ちゃんと受け答えが出来るのか、何かとんでもない事をしでかさないか、いつも心配でハラハラしていた。そして予想通り大ボケをかましてくれる。

こっこの声は歌詞の生々しさとは違いクリアで可愛い。そして良く練った凝った音作りをしている。これは編曲のネギさんのお手柄だろう。時々nirvanaやオアシスそっくりの楽曲もあったりして、まあこれはお遊びか。                             

もしこっこの声や楽曲がプリミティブなものだったら、こんなに惹かれたりしなかっただろう。今風の音そしてさらりとした歌声だからこそ、歌詞の残酷さが際立つのだ。

今こっこは沖縄に住んでいる。ときどき地元でごみ拾い運動をしているらしい。そしてお母さんになっている。

憧れの沖縄。母の胎内のような居心地の良さ温かさ。妄想だけがどんどん膨らんでいく。だから沖縄に行けないのか。

 


Switch (Special edition)

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