ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2005年10月

処女という名の苦い果実

今週の毎日新聞に、ガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』を題材とした記事が連載されていたので、興味を持って読んでいた。

南米コロンビアの田舎町。美女アンヘラは、一方的に求愛され、資産家の男と盛大な結婚式を挙げるが、翌晩、「花嫁が処女ではなかった」を理由に、実家に突き帰された。家中が大騒ぎとなり、アンヘラの「最初の男」の名を問い詰め、翌朝、双子の兄たちが「その男」を殺す・・・。

と、偉そうに語ってはいるが、実はまだ原作を読んでいないのだ。ただ1987年に英・伊で映画化されたのを見、衝撃を受けたものだ。(人の意見によると、映画は原作の足元にも及ばないらしいが)

資産家の男バヤルドに、ルパート・エヴェレット、殺される男にアラン・ドロンの息子、アントニー・ドロンと、当時のイギリス、フランスの2大美青年が共演し、双子の兄たちも美形、などとかなりミーハーな視線で映画を見たのだが、やはり閉鎖的な、カトリック色の強い町における『処女性』の重要性には驚いた。

私は思った。なぜアンヘラはバカ正直に告白したのか。秘密を背負って生きていくことは、女にとってそんなにむずかしい事ではないのに・・・。

さて、この物語は実際に起きた出来事を、ガルシア・マルケスが小説化したものだが、「毎日」の記事を読んで意外な事実を知った。現実のアンヘラ(実名、マルガリータ)が、職に就く女性が少なかった当時、教員という進歩的な生き方をしており、また事件の後、夫から、何度もよりを戻そうと言われていたが断り続けていた事。

先進的な考えを持っていたマルガリータは、「処女でなかった事で離縁されるのなら、そんな結婚こっちからゴメンだわ」てな感じでサバサバしていたのかもしれない。だが閉鎖的な町や家族は、彼女の思惑とは全く違う悲劇に追い込んでいった・・・。

・・・・とにかく、この先はガルシア・マルケスの原作を読んでみて考えよう。

予告された殺人の記録

 

 

ある医療事故について

毎日新聞谷崎潤一郎著「細雪」の中に、ある医療事故の場面がある。四人姉妹の末っ子、妙子の恋人が中耳炎の手術を受けるのだが、なぜか術後に激しい足の痛みを訴え、やがて大たい部を切断されその後亡くなる。
原因は手術中のばい菌感染による脱疽との事。

初め読んだ時はびっくりし、やはり昭和初期の病院は、今と違って衛生状態が悪かったのね、お気の毒に、などと他人事のように思ったものだが・・・・・・・・。

 長崎大付属病院(長崎市)で胸部切開手術を受けた長崎市の男性(25)が、右脚を切断したのは医療ミスが原因として、約6400万円の損害補償を求めた訴訟の和解が長崎地裁で25日、成立した。大学側が男性に解決金約3500万円を支払う。

訴訟などによると、男性は98年8月、ろっ骨が内側に向く病状を矯正するため同病院で手術を受けた。術後、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が原因で呼吸困難となり、心肺補助装置のチューブを右脚に装着したが、血液循環が悪化してひざ部分が腐り始め、手術8日後に右大たい部で切断した。

原告側は「MRSA感染は執刀医のミスで肺の一部が傷ついたのが原因」と主張。病院側は「感染対策に落ち度はなかった」と反論していた。

地裁はMRSA感染について病院側の責任を問えないとしたうえで、術後管理の不適切さを認め、7月に和解案を提示していた。
10月26日 毎日新聞

'98年といば、その時男性は18歳、まだ高校生か。
まさか術後8日目に右大たい部を切断されるなんて、夢にも思わなかったろう。その時の絶望感、悲しみを思うと胸が痛む。
そしてその7年後やっと和解したわけだが、解決金がわずか3500万円。都心のマンション一部屋買ったら消えてしまう。
男性の受けた心の傷や、これからの長い人生に待ち受ける様々な障害を考えると、あまりにも金額が少ないのではないか。それともこれは「相場」なのか。

地裁は、病院側の責任を問えないとしているが、それなら我々は、病院でMRSAに感染しても、わずかのお涙金で耐え忍ばなければならないのか。

昭和初期の場末の医院ではなく、大学病院で起こったこの医療事故。
病院嫌いにますます拍車がかかりそうだ。

 

 

戦いすんで日が暮れて

ラッキーセブン千葉ロッテマリーンズのファンの皆様、リーグ優勝おめでとうございます。勝利の美酒の味はいかがでしょうか。

そして、2年続けて、リーグ1位になりながらも勝利を手にすることが出来なかったソフトバンクホークス。

今更プレーオフの弊害など語りたくありません。こうなったら意地でも今と同じ条件の下で、来年こそ日本シリーズに出場してほしいものです。もしプレーオフ制度が廃止されたり条件が変ったりしたら、私どもファンが2回も流した悔し涙が無駄になりますから。

ロッテ

さて、負けはしましたが、17日は大変緊張感のある、良い試合だったと思います。私が思うに試合の流れを変えたのはロッテの初芝選手ですね。彼の打った凡打を捕ろうとして川崎とバティスタが衝突し、取り逃がしてセーフになったあたりから、ソフトバンクの守備がちぐはぐになってしまった気がします。最初「初芝」の名が告げられた時、正直なぜ盛りを過ぎた選手を起用するのだろうと思ったのですが、ベテランの持つ「気」をバレンタイン監督は感じたのかもしれません。

不思議ですが千葉ロッテマリーンズというチームに対して、悔しい気持ちは起きないのです。機動力のある優れた選手ばかりですし、先程の初芝選手は昔からファンだし、バレンタイン監督も好きです。たまたま座席がロッテの応援団のとなりだったのですが、黒い服装で統一された彼らも、少人数ながら、とてもまとまった応援をしていて、好感が持てました。

ソフトバンクホークスは誰と戦っていたのでしょうか。本当は、千葉ロッテマリーンズの向こうにある、プレーオフという理不尽な制度と戦い、またしても敗れたのだ、と思うのは敗者の繰言に過ぎないのでしょうか。
優勝

ヴァレンタイン

ベルトをゆるめて昼食を

蓮12年前、転職して、未経験の新しい仕事を始めた頃、誠に尾篭な話で申し訳ないが、激しい下痢に悩まされた時期があった。
何しろ素うどんやおかゆを食べてもたちまちトイレに行きたくなる。
およそ一ヶ月は固形の食べ物は殆ど取らなかったはずだ
だが不思議と体
は元気で、一日も休むことなく勤務を続けていた。

その頃の私は、ただひたすら『早く普通に食事が出来ますように』『この症状が治ったらとにかく食いまくりたい』という事ばかりを日々考えていた。今思うと「食」に対する切望が、仕事上の悩みやストレスを忘れさせてくれたような気がする。

さて、最近転職して12年前と同じく未経験の仕事を始めた。体力も落ちているし社会適応能力も劣っているはずなのに、不思議と当時の下痢のような症状は全くない。あきらかにストレスのたまる仕事のはずなのに。

日々体調は良く、朝昼晩とおいしくいただいている。この健康な状況がかえって不安で、やがて大きなしっぺ返しをくらいそうな気がする。

小さな不安を抱えながらも、昼食の時は、豚カツ定食の大盛りをペロリとたいらげてしまう今日この頃である。

 

 

 

保守的なので・・・

最近とみに気になる言葉がある。それは『なので』だ。

「10月なのに暑い日が続きます。なので、またクーラーをつけました」
「来週の日曜日は選挙があります。なので、通常の番組はお休みします」

上の二つは、あるラジオ番組で、実際プロのアナウンサーが語ったものだ。これは私見だが、『なので』を接続詞に使うと、たちまちその文章が稚拙な印象にかわる。

私は国語の専門家ではないので、恐る恐るもの申すのだが、『なので』は接続詞ではなかったはずだ。

『風邪気味なので、早退します』
『この村は水が豊富なので、農作物がよく育つ』など、名詞や形容動詞のあとにつくのが本来の姿だと思う。

もちろん言葉は生き物だ。時代によって変化していくのは当然だし、身内でおしゃべりしている時や、テレビタレントが使う分には、私もやぶさかではない。

ただ、プロのアナウンサーや評論家センセなどが、人前で堂々と使っているのを聞くと、こっちの方が恥ずかしくる。

やはり公の立場の人は、言葉に対し保守的であってほしい。

 

人生はビター・チョコレート

灯り民話やおとぎ話というものは大体ワンパターンでお決まりの勧善懲悪が多い。でもそのマンネリズムの心地よさのせいか、繰り返し繰り返し長い間、子ども達に愛されてきた。

昨日見た映画、『チャーリーとチョコレート工場』
これもその例にもれず、こまっしゃくれたガキは凝らしめを受け、清く貧しく美しい少年に幸運は舞い降りる。

でもなぁ、何しろティム・バートンとジョニー・デップのコンビだから、もっと違ったオチを期待していたのだ。確かに映像は美しかったが、ひねたオバサンとしてはいまいち物足りなかった・・・。

さて、この作品では、クリストファー・リーがジョニー・デップの父親役で良い味出している。御年83歳になられるこの方、最近大車輪で活躍しているなあ「ロード・オブ・ザ・リング」しかり、「スター・ウォーズ」しかり。どちらも体を張ったアクションをこなしているのが驚異だ。

初めてクリストファー・リーの名を知ったのは幼稚園の頃か。日曜洋画劇場でハマーフィルムの「吸血鬼ドラキュラ」を見、その恐ろしさに縮み上がったものだ。日本の妖怪やお化けとは違う、品のあるドラキュラ伯爵の風貌に敬意を覚えつつも怯えていた。

氏はその怪演のせいで、キャラクターが固定されてしまったのか、その後はあまり良い役に恵まれなかったようだ。だから最近の活躍はとてもうれしい。何だか若い時より今の方が伸び伸びしているように見受けられる。

人生の始まりの時期に出会い、そろそろ黄昏に向う時期に再び出会ったクリストファー・リー。いつまでもお元気で。

 

 

 

 

文体は生きている

今だに百合幼児性が抜けないのか、擬人化したお話が好きである。

以前、「爆笑問題」太田のコントで、一週間を擬人化したのがあった。

超不機嫌な月曜日さん、まだ硬さが残る火曜日さん、やっと調子が出てきた水曜日君、目立たない木曜日君、ハイテンションな金曜日ちゃん、ちょっと頭の弱い土曜日ちゃん、「笑点」を見ながら憂鬱になる日曜日さんなど。
登場人物それぞれがしゃべりまくり、木曜日君の存在意義は?などと意見を交わしているのが、すごく面白かった。

さて、山田詠美の短編集に「快楽の動詞」というのがあるが、その中の「文体同窓会」が好きだ。まさしく文体が擬人化している。楽しい。

今や大家となったエイミーが、ちょっと肩の力を抜き、ままごとでひとり遊びを楽しむ女の子のような風情で、文体で遊んでいる。でも気を抜くと思わぬ深みにはまってしまう。

さて、12ヶ月を擬人化したら、やはり一番地味なのは2月かなぁ。

 

 

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