17歳の少年がいる。
父親の顔を知らず、幼い頃に母は自殺し、彼はその現場を目撃している。
その後、養父からは性的虐待を受け、家出してニューヨークで男娼として生活していたが、麻薬所持で警察に捕まる。
そこへ突然キリスト教関係を名乗る中年の女性が現れて、身元引受人になってくれ、なぜか一緒にLAまで車で旅することになった。
最初のうちは警戒心が強く、頑なな少年であったが、アメリカ大陸を旅するうちに、だんだん打ちとけて心を開いてきた。
だがそれも束の間、彼は見てしまうのだ。
女性が、実は「男」だということを。
ところがショックはそれだけではなかった。その女性は、実は、長い間少年が会いたいと切望していた○○だったのだ・・・・・。
『トランスアメリカ』という映画。性同一性障害の女性の役を演じた女優に称賛の声が寄せられているが、私はこの少年の方が気になった。
普通の人なら一度も受けないような体験を、5回も6回も味わい、自暴自棄になりながらも、なんとなくその状況に適応していくたくましさ。
またこの少年の眉間の辺りが、若い頃のアラン・ドロンを彷彿させるのだが、この映画の宣伝文句で「リバー・フェニックスの再来」と呼ばれているのを知り、自分の時代錯誤もここにきわまれり・・・とちょっと落ち込んだ。
そんなわけで、性同一性障害の女性よりも、普通の少年でありながら、普通の生き方が出来なかった少年の方に感情移入してしまうのであった。