5月27日の朝、天気予報では「快晴」にも関わらず、北九州の空はどんよりと曇っていた。
いや、曇っているのではなく、これはスモッグだ。
朝霧によく見られる乳白色ではなく、薄汚れた白茶けたスモッグが街をつつんでいる。
空気は生暖かく、いささかの清涼感もない。
「そういえばこの頃、抜けるような青空って見ないよな〜」と思いつつ、駅へ向って歩くのだが、案の定、歩いている人が少ない。子供は皆無だ。
中には、サングラス、マスク、日傘といった重装備の人もいる。
「おおげさだな〜」と思いつつ、普通に歩いているうち、だんだん頭が痛くなってきた。
本日北九州地方に、今年に入って2度目の光化学スモッグ注意報が発令され、運動会を予定していた小学校85校が中止になったことを知ったのは、その日の昼だった。
重い頭をおさえつつ窓の外を見ると、街全体が白っぽく霞んでいる。普段はハッキリ見える遠くの山並みも消え、海峡もおぼろげだ。
船や飛行機の運航に支障はないのか、まず心配になってくる。
そして、全く子供のいない風景。5月最後の日曜日なのに、街も公園も静まり返っている。
まるで近未来SFホラー小説のようだ。
さて、今北九州市では、市内の工場に対して、煤煙の窒素酸化物の排出量、20%削減を要請している。要するに減産だ。
市民の健康を考えての事だろうが、不況を乗り切ろうとする企業に対して、これはあまりに酷だ。
つか、工場のない長崎の五島や壱岐でも、光化学スモッグは観測されている。
みな原因を知っていながら、誰も声に出して言わない。でもこのままでは、状況は益々ひどくなるばかりだ。
そのうち北九州だけではなく、日本全体が大陸からの黄色いスモッグにつつまれ、やがて消えてしまうのだろうか。