ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2007年05月

子供達が消えた5月

5月27日の朝、天気予報では「快晴kにも関わらず、北九州の空はどんよりと曇っていた。

いや、曇っているのではなく、これはスモッグだ。

朝霧によく見られる乳白色ではなく、薄汚れた白茶けたスモッグが街をつつんでいる。

空気は生暖かく、いささかの清涼感もない。

「そういえばこの頃、抜けるような青空って見ないよな〜」と思いつつ、駅へ向って歩くのだが、案の定、歩いている人が少ない。子供は皆無だ。

中には、サングラス、マスク、日傘といった重装備の人もいる。

「おおげさだな〜」と思いつつ、普通に歩いているうち、だんだん頭が痛くなってきた。

本日北九州地方に、今年に入って2度目の光化学スモッグ注意報が発令され、運動会を予定していた小学校85校が中止になったことを知ったのは、その日の昼だった。

重い頭をおさえつつ窓の外を見ると、街全体が白っぽく霞んでいる。普段はハッキリ見える遠くの山並みも消え、海峡もおぼろげだ。

船や飛行機の運航に支障はないのか、まず心配になってくる。

そして、全く子供のいない風景。5月最後の日曜日なのに、街も公園も静まり返っている。

まるで近未来SFホラー小説のようだ。

さて、今北九州市では、市内の工場に対して、煤煙の窒素酸化物の排出量、20%削減を要請している。要するに減産だ。

市民の健康を考えての事だろうが、不況を乗り切ろうとする企業に対して、これはあまりに酷だ。

つか、工場のない長崎の五島や壱岐でも、光化学スモッグは観測されている。

みな原因を知っていながら、誰も声に出して言わない。でもこのままでは、状況は益々ひどくなるばかりだ。

そのうち北九州だけではなく、日本全体が大陸からの黄色いスモッグにつつまれ、やがて消えてしまうのだろうか。

 

元広告マンの死

イオリン・・・・・イオリンが死んじゃった・・・。

『テロリストのパラソル』『ひまわりの祝祭』などでおなじみの作家、藤原伊織氏が食道がんのため、5月17日、亡くなった。

2年前、月刊誌にて、自ら癌で闘病中であることを告白していたが、その淡々とした口調から、何となく助かるのでは、と思っていた。
病床は思ったより悪かったらしい。

私は、寡作なのにも関わらず、彼の作品全部を読んでいないので、あまり熱心なファンとは言えないが、大好きだった。

この人の文章は、芳醇でおしゃれでありながら、スッと頭に入ってくる。

いつも不思議に思っていたが、最近読んだ『てのひらの闇』の、逢坂剛氏の解説を読んでガテンがいった。

彼は長らく電通で仕事をしていた。「読みやすい」「分りやすい」「おもしろい」は広告業界の基本だ。

日本最大の広告会社で、彼の腕は磨かれていったのだろう。

そういえば彼の作品には、広告ミスが元で、その後の人生が変わった人がよく出てくる。

車の値段の表示ミスで、ヤクザの因縁を受け、ボロボロにされた社長や、生放送のテレビCMで、間違えてライバル会社の名前を出し、凍り付いてしまった若手ディレクターなど。

藤原氏も似たような経験があったのだろうか。

作家仲間から愛され、かの浅田次郎氏も「天使のごとき藤原伊織氏」と慕われていたイオリン。

ご冥福を祈ります。

てのひらの闇

 


 

もうひとつのツイン・タワー

昭和54年の頃だったろうか。
ある月刊誌(名前は失念したが)に、旅行好きで世界中をまわった若い女性の記事が載っていた。

ふ

彼女によると、訪れた国で一番良かったのが、アフガニスタンだと言う。

「とにかく街並みが美しく、緑が素晴らしい。そして人々が暖かいの!」と、絶賛。
そのため、大学の卒論も『ガンダーラ文化』にしたとのこと。

『ガンダーラか。じゃあ「西遊記」の天竺ってアフガニスタンの事だったんだ。ゴダイゴが歌ってたよね、〜素晴らしいユートピア〜♪て、ふーん、いつか行ってみたいな〜』

それからしばらくして、ソ連がアフガニスタンに侵攻というニュースが飛び込んできた。

アフガニスタンどうなるんだろう、とちょっと気にかかったが、その後のモスクワオリンピックボイコットの方が自分には驚きで、
「えー、日本はオリンピックに出ないの?ショック〜」
と思っているうちに、アフガニスタンの事は忘れてしまった・・・。

・・・そして2007年、アフガニスタンの状況は当時より更に厳しい。

さて、高木徹著『大仏破壊〜ビンラディン、9・11へのプレリュード』を読んだ。

2001年3月、9・11の半年前、アフガニスタンのバーミアン大仏がタリバン政権によって破壊される。大仏は2体であった。

象徴的なこの事件の半年後の「9・11」そしてテロ戦争、タリバン政権の崩壊。

実は、この大仏破壊に関しては、多くの人々が阻止しようと奔走している。国連やユネスコ、歴史学者など、その中には日本人もいた。

そしてタリバン内部でも、大仏破壊を止めようとする人が多かったにも関わらず、いつのまにか崩壊の道を進んでいく。

それはあたかも、高木氏も表現しているが、オサマ・ビンラディンという寄生虫が、タリバン内部に棲みつき、やがて主を食い破って新たな主になったようだ。

その原因は何だろうか。

単純には言い切れないが、ただ、タリバン内部にこんな声があった。

あ「世界は、我々が大仏を壊すと言ったとたんに大騒ぎを始めている。だが、わが国が旱魃で苦しんでいたとき、彼らは何をしたか。我々を助けたか。彼らにとっては石の像のほうが人間より大切なのだ。そんな国際社会の言うことなど、聞いてはならない」

この言葉は正しくはない。

国連やNGO、様々なボランティアなどが、アフガニスタンを援助してきた。日本も多額の援助をしてきた。

だが、その心情は分る。確かに多くの国やマスコミはアフガニスタンに無関心だった。石仏が破壊されると聞いて、あわてて大騒ぎする国際社会を、彼らは苦々しい思いで見ていたのだろう。

〜どんな夢もかなうという素晴らしいユートピア〜♪

日本人女性が心から愛した国、アフガニスタン。

無関心の責任は重い。それは私も含めてだ。

大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

老兵にも未来はある

その作品が上映されると聞いた時、たぶん世界中のほとんどの人が、失笑したかと思われる『ロッキー・ザ・ファイナル

もちろん自分もその1人であった。

『ロッキー1』が出来てからもう30年。前作『ロッキー5/最後のドラマ』からも既に16年過ぎている。

「おいおい還暦すぎたチャンプかよ。止めてくれよ」てな感じだった。

ところがこれが、フタを開けてみると、絶賛の嵐。

「感動した!」「第1作に勝るとも劣らない!」「あきらめない勇気を教えられた!」「本年度最高のサプライズ!」などなど。

リアルタイムで『ロッキー1』を見たものとしては、これはほっとけない。

そんな訳で、久しぶりに映画館でロッキーに対面する。

ロッキー見終わった後、まず感動より先に、あまりのあっけなさに呆然とした。

「えっ、もう終っちゃったの?」てな感じなのだ。

後で調べると、上映時間は1時間43分。

決して短くはないが、最近の、2時間3時間は当り前の、やたら長い作品が多い風潮に比べると、コンパクトにまとまっている。

全編、第1作へのオマージュが散りばめられ、エイドリアンとの初デートのスケート場や、トレーニングシーンなど、ロートルファンには、涙腺ゆるみっ放しだ。

変な言い方だが、有無をいわさず感動させられて、そのままやり逃げされた思いである。

よくよく冷静に考えてみれば、もう引退している60歳の年寄りが、現役バリバリの世界チャンピオンと互角に戦えるはずがないのだ。

これってドイツの皇帝ベッケンバウワーが、現役復帰してワールドカップにレギュラーとして出場するようなものか(ちょっと違うかな)

それにしても、観客に冷静に考えるスキを与えず、見事に感動の波をかけ抜けていったシルベスター・スタローンの力量はスゴイ。

ああそれにしても、あのフィラデルフィア美術館のシーンにはいつもうるうるさせられる。

思わず神社の境内を駆け上りたくなる衝動を抑えつつ、映画館を後にしたのだったバルモア

 

 

 

 

 

 

 

鬼上司の夜間勤務

フランス、ゲランの香水に『夜間飛行』というのがある。

私は香水は使わないので、どんな匂いなのか知らないが、サン=テグジュペリ道の小説から触発されたというから、なんとも意味深なネーミングだ。

異国の空の下、頼りなくさまよう複葉機。目にみえるのは星空だけ。

そんなロマンティックな未知の世界を期待して、小説『夜間飛行』を読み始めたのだが、これが、さにあらず。全く予想外の内容だったのだ。

これは、航空輸送会社の支配人、リヴィエールを中心にした、わずか
10時間ほどの物語だ。

峻厳な支配人は、配下の操縦士たちに厳しい要求をし、どんな小さなミスも容赦なく処罰する。

彼らの責任外である、天候上の理由による遅刻や事故に対しても、処罰は緩めない。

そして何よりも弱気は許されない。

20世紀初め、まだ黎明期である航空業界で、あえて危険な夜間飛行を成功させるには、それだけの厳しさが必要なのだろう。

支配人は命令するだけで自分では動かない。危険な業務は操縦士たちが行う。

ある意味、空を飛んでいるよりも、精神的にハードな職務だ。彼は配下の監督者にこう言う。

「部下の者を愛したまえ、ただ彼らにそれと知らさずに愛したまえ」

また、「愛されようとするには、同情さえしたらいいのだ。ところが、僕は決して同情はしない。いや、しないわけではないが、外面に現さない・・・・」

そして操縦士たちは、彼の理不尽とも言える命令を受け入れ、命さえ賭ける。

行方不明の操縦士、ファビアンの安否を気づかう若妻さえ、リヴィエールの私心のない姿に圧倒される。

そして夫ファビアンは、台風で方向を見失い、罠と知りつつも、光に向って上昇するのだ。そこで見る夢のような美しい世界・・・・・。

同情や偏見、馴れ合いがなくなった時、始めて本物の美しい世界が作り出されるのだろう。

ところで、このリヴィエールにはモデルがいた。
実際にサン=テグジュペリの上司であったディディエ・ドーラがその人で、サン=テグジュペリは彼に心酔し、ドーラが社内の争いで会社を去った時、彼も辞めたという。

勇気、責任感、自己犠牲。

小説『夜間飛行』は、私には、少しビターな、それでいて清々しい心躍る香りに思えた。

夜間飛行

 

 

 

 


 

メタボ哀歌

菖蒲メタボ(メタボリックシンドローム=内臓脂肪症候群)を予防するため、
2008年4月から
企業の健康診断でも腹囲測定が義務づけられるようになった。

厚生労働省の報告書によると、腹囲を把握することは、脳・心臓疾患を予防する観点から、労働安全上好ましいものといっているが、ハッキリいって、大きなお世話である。

自分の腹囲など企業に把握されたくないし、実際、生活習慣病とのハッキリした関連性はあるのか・・・。

などとぐちぐち言ってみたが、正直、自分の腹を測られたくないのである。

だって嫌でしょう。自分のプライベートなサイズを他人に知られるのは。

オートクチュールの仮縫いであれば、そりゃ晴れがましいから、どうどうと腹を突き出すだろうが。

男性85センチ、女性90センチ以上がメタボらしいが、これも信憑性はあるのだろうか。しかもなぜ女性の方が数値が大きいのか。

第一「メタボ」という言葉の響き自体、「ピロリ菌」と同じで妙に可愛くて真剣みがない。

「お腹がポコッと出て、ダメな僕」みたいな甘え感がある。

たぶん健康診断が近づくと、ダイエットや腹筋運動に励む人が出てくるだろうな。まあそれはそれで悪くはないけど。

それでも屈辱感はぬぐえない。

ところで、ウエストサイズで思い出すのは、黒人のマミーに測らせているスカーレット・オハラの姿だろう。

たしかサイズは48センチだった・・・・・・・・嗚呼。

 

お兄ちゃんには敵わない

車に乗っていてよく考えてしまうのが、近くのガソリンスタンドの従業員の接客姿勢だ。

夏の炎天下、または寒風吹きすさぶ冬も、彼らは直立不動で待機している。
そして車が来れば、「いらっしゃいませ〜〜」と絶叫し、その後、窓拭き、ゴミ棄てと、接客はおおわらわである。

思うに、暑さ寒さの中従業員を立たせて、無駄に体力を消耗させるより、室内で出来る作業をさせたほうが良いのではないか。
それともそんな甘い考えでは、厳しいGS業界を生き残れないのか・・。

このたび、再上映館で観た映画『ゆれる』で香川照之演じる稔は、父の経営するそんなGSの従業員だ。

この物語は、東京でカメラマンをしている弟、猛(オダギリジョー)が母の一周忌のため、久しぶりに田舎の実家に帰るところから始まる。

実家は兄の稔が父と2人で暮らしているのだが、この父がまた傲慢で酒が入ると暴れだす嫌なじじいなのだ。

稔は、だから昼間はGSで1日客に頭を下げて働き、家に帰れば炊事・洗濯に追われ、おまけに父の小言にも付き合わなくてはならない。

狭い田舎町で、35歳の彼は恋人もおらず(つかあんな親父がいたら誰も嫁にこないでしょ)、それでも、心配りを忘れず、いつも人に笑顔で接するような男なのだ。その優しさがなんだか怖い。

さて、事件は、稔と猛と幼なじみの智恵子と3人、渓谷に遊びに行った時に起きる。

智恵子が吊橋から落ち、やがて稔が、殺人容疑で逮捕されるのだ。

そして裁判が始まり、事件は意外な展開を見せる・・・。

この物語で白眉なのは、兄、稔役の香川照之の演技だ。

特に、猛が智恵子と関係を持ち、夜遅く家に帰ってくると、稔が1人ぽつねんと洗濯物を畳んでいる後姿。鳥肌が立った。

父、弟、幼なじみの女、みな思いやりのない連中ばかりなのに、この稔だけがまるで、悟りを得た人のような仏性をそなえている。

事件の真相はまるで『藪の中』のようで、私には分らない。
ただ稔にしてみれば、今の暮し、狭い田舎の閉塞感の中で、父にこき使われて生活するより、刑務所の方が良いのかもしれない。

つか、吊橋から落ちたのが父親だったら、ハッピーエンドだったかも。

ゆれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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