俳優、ヒース・レジャーが1月22日亡くなった。
原因は薬物の過剰摂取らしいが、まだはっきりしない。
ショックだった・・・・。
彼の主演した映画『ブロークバック・マウンテン』には夢中になったものだ。
劇場へ2回行き、その後DVDでも見、原作本を読み、サントラを繰り返し聴いた。
アメリカ西部に住む、貧しい青年2人の同性愛に、なぜそんなに心を惹きつけられたのだろう。
原作本の中で好きなシーンがある。
ヒース演じるイニスが、羊追いの仕事でジャックと知り合い、ブロークバック・マウンテンの満天の星の下、楽しく語り合う。
その後、こう描いている。
1人になるだろうと思っていたところに、思いがけず相棒ができて喜んでいたのだから。イニスは向かい風をついて羊のもとに戻る途中、思っていた。人生でこんな楽しい時間を過ごしたことはない。この馬で飛び跳ねて月の白い部分をもぎ取ってこられるくらいだ。
きっとイニスはこれまでの人生で楽しいことは一つもなかったのだろう。
幼い時両親に死なれ、家は貧しく高校も行けなかった。そして食べていくためのつらい労働・・・・。
だが、生まれて初めて感じた幸福感は、やがて彼の人生を狂わせてしまう。
そんな無骨で無教養でありながら繊細な青年、イニスを、ヒース・レジャーは見事に演じていた。
それにしても彼が薬物摂取で死ぬとは信じられない。ヒースはそういうものとは正反対の人間に思えるからだ。
なぜなら彼はオーストラリア人である。
オーストラリアの俳優はいわゆるハリウッドとは一味違う。
メル・ギブソン、ラッセル・クロウ、ヒュー・ジャックマン、エリック・バナ等々。
彼らはハリウッドのセレブと違い、骨太の本格派だ。
そして落ち着いている。悪く言えば、おっさんくさい。
ヒース・レジャーだって私は30代後半と思っていたが、実はまだ28歳の若者だった。
がっしりしているので、時代もの、騎士や甲冑をつけた役が良く似合う。
ディカプリオやマット・デイモンだと妙に浮いて見えるそれが、彼らにはしっくり合うのだ。
さて薬物中毒と言えば、最近俳優のブラッド・レンフロが過剰摂取で25歳の若さで死んだばかり。
リバーフェニックスは言うに及ばず、今後薬物摂取についてはもっと真剣に取り組まないと、あたら若い才能を潰していくことになりかねない。
だが、ヒース・レジャーはそんなハリウッドのセレブらとは違う。
一体何があったのだろう。考えてもせんないことを考えてしまう。
やはり彼もイニスのように、無骨でがっしりした、だが繊細な青年だったのだろう。