ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2008年02月

出張先はコーラン持って

以前『ブラックホーク・ダウン』という本を読んでいた時、ソマリアに駐留していたアメリカ軍に協力していた現地のスパイが、ロシアンルーレットで死んだ、というエピソードが出ていた。

なぜロシアンルーレットなのだろう、らりっていたのかな、などと思っていたのだが、元CIA秘密工作員、ロバート・ベア著『CIAは何をしていた』を読んで、合点がいった。

この本の中で、ベイルートでヒスボラに潜入するCIAの現地エージェントが、よくロシアン・ルーレットをやっていたのだ。

なんでも狂信的なイスラム教徒が神の思し召しを判断するために、そういう慰みをするらしい。

この著者ロバート・ベアこそ、映画『シリアナ』のモデルになった男だ。

本には、彼が、1997年に退職するまでの、20年に及ぶ工作活動が描かれている(極秘部分は墨が塗られているが)

読んでみて思ったが、これはスパイものというよりも、ビジネス書に近い。彼の仕事の進め方、気配り、そして現地人との交渉やコネの付け方の巧みさ。

イラク、レバノン、インド、タジキスタンといった、先進国の常識が通じない国々相手に命がけの交渉をする、ものすごく優秀な商社マンのようにも見える。

彼がアメリカ人の身分を隠して、アメリカへの憎悪で爆発しそうなシリアのある街に出かけるところなどドキドキする。

だが、現場の人間の努力にもかかわらず、組織というものは大きくなればなるほど腐敗する。それは大企業も老舗料亭も、公務員も、そしてCIAも同じなのだ。

後半は、地の果ての異民族との交渉よりも、ワシントン本部とのせめぎ合いに終始していた。その砂を咬むような虚しさ、いらだち。

結局失意のまま彼はCIAを去っていくのだが、それでも彼は幸せだと思う。

変な言い方だが、子供のころのスパイごっこを大人になってもやっていたのだ。もちろん一般の仕事よりも苦労は多かろうが、何といっても彼は帰ろうと思えばいつでもアメリカに帰れる。

貧困と紛争の続く国で一生過ごさなければいけない現地人から見れば、たとえ辛い任務であろうが、彼は気楽なお客さんなのだ。

それにしても、たとえ腐敗していたとはいえ、優秀な人材と豊富な情報力・資金のあるCIAが、9・11テロを予測できなかったのは、ロバートならずとも、無念だ。

CIAは何をしていた? (新潮文庫)

 

 

 

 

遊びのない車

今年のグラミー賞で、オバマ上院議員が、最優秀朗読アルバム賞を受賞した。

受賞は2度目だが、彼の演説は大変分かりやすいそうだ。

大先輩、公民権運動のマーティン・ルーサー・キング牧師も大変演説がうまかったそうだが、つくづく時代は変わっていくのだなぁと思う。

さて、『アメリカン・ギャングスター』という映画を観た。

実話を基にしており、ニューヨークを舞台に、黒人で初めて麻薬王になった男、フランクと、麻薬捜査官リッチーが主人公だ。

物語はキング牧師が銃弾に倒れた1年後の1968年から始まる。

とにかくフランクを演じるデンゼル・ワシントンの、カッコイイこと。

スーツを凛々しく着こなした姿など、そのまま大統領選の演説をしてもおかしくないほどだ。

そして彼は「バカ」がつくほど真面目である。

デンゼル・ワシントン信条は「勤勉」「誠実」「嘘をつかない」そして家族を大事にすること。

毎日曜日は家族で教会に出かけ、日常生活はいたって質素である。

麻薬を売って飯を食っているくせに、自分の仲間がふざけた言動をすると、「あいつはコカイン中毒だ!」とののしる始末だ。

「誠実」であるがゆえに、麻薬も、東南アジアで高純度のものを買い付け、廉価で売る。

まるでハンドルの遊びのない車のようだ。

粗悪品を高く売りさばいている同業者にとってはいい迷惑である。

さて、もう一人の主人公、ラッセル・クロウ演じる麻薬捜査官、リッチーも「バカ」のつく正直ものだ。

賄賂が横行する警察内になって、彼だけが金を受け取らない。

車に隠してあった100万ドルを見つけてもネコババせずに警察に届けた彼は、賄賂が当たり前の警察仲間から嫌われ、孤立してしまう。

このラッセル・コロウが、なんかものすごくダサいのだ。
おばさんパーマみたいな髪型とメタボ体型。もたもた動く姿が、クールなラッセル・クロウデンゼル・ワシントンと好対照だ。

流れとしてはこの作品、ギャングと警察の対決というよりも、立場は違えど似たような信念を持った2人の男が、平行して走っていたが、あるきっかけで交わる、といった感じなのだ。

そのきっかけとは彼らの共通の敵、ギャングからくすねた純度の高いヘロインに混ぜものをし、より高く売りさばく、悪徳警官たちだ。

だがフランクが純度の高いヘロインを安く売りさばいたが為、多くの常習者が麻薬の過剰摂取で死んでいるのだ。

悪徳警官が粗悪品を高い値段で売った方が、世の中のためになるのでは?と思ったり。

とりあえずは、こういう人たちが自分の上司だったら、ちょっとイヤかも。

アメリカン・ギャングスター (ソフトバンク文庫 サ 1-1)

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハニートラップは命がけ

今日本で、麻雀をやっている人はどれほどいるだろうか。

私が高校の頃、なぜか麻雀が大はやりで、授業をさぼっては級友の家や雀荘に入りびたり、チー、ポンやっている男子生徒も少なくなかった。

考えてみると、こぎたない高校生が一生懸命大人ぶって、卓を囲んでいたわけだが、このたび観た、アン・リー監督の映画『ラスト、コーション』でも、麻雀のシーンが豊富に出てくる。

ラスト、コーション

こちらはガサツな高校生とは違い、上海の上流夫人たちの牌を動かす仕草のなんと優雅なこと。
赤いマニュキアの指をしならせ、冗談をいっては笑いさざめきながらも、油断なく周囲の視線をめぐらす女たちの様子に、戦況下の不穏な空気も感じられる。

さてこの作品は、日本軍占領下の1940年ごろの上海、傀儡政権の特務機関の顔役イーと、彼の命を狙う抗日運動家の美しい工作員(いわゆるハニー・トラップ)ウォンの物語だ。

トニーそしてイー役は、あのトニー・レオン。

『恋する惑星』や『ブエノスアイレス』を観、煮えきらないヘタレ男でありながら、雨に濡れたノラ犬のようなたたずまいに、すっかりまいってしまったものだ。

そのヘタレ感は『インファナル・アフェア』でもいかんなく発揮されたが、今回は抗日運動家を容赦なく処罰する鬼のような役だ。

そのせいか、この作品でのトニーは表情が硬く、緊張感で張り詰めている。

そして評判のセックスシーンであるが・・・・・。

・・・特筆するといえば、「この人たち体が柔らかいのね」ぐらいしか。

しかもぼかしが入っていたため、これは一体何を隠そうとしているのだろうか、今時ヘアを隠したりするのか・・・?
などついつい下賎なことを考えてしまうのであった。

そしてラスト、物語は、2人に本心を語らせぬまま終わりを迎える。

思うに、トニー・レオン扮するイーは、彼女が工作員であることに薄々気づいていたのではないか。

頭の良い男だから、アメリカが参戦し、やがて日本が敗北することは予想していたに違いない。

生き残って、死より辛い辱めを受けるより、愛欲に溺れながら美しい女工作員に殺されることを願っていたのではないだろうか・・・。

アン・リー監督の映画は、前作『ブロークバック・マウンテン』もそうだが、観た後、じわじわと心に沁みてくる。

今回も、しばらくは映像が頭の中をぐるぐる回りそうだ。

インファナル・アフェア


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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