ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2008年06月

今月も色々なニュースが報じられたが、私的に一番驚いたのが 、
10日、尖閣諸島・魚釣島近海の日本領土内で、台湾の遊漁船と日本の巡視船が衝突した事故の件で、台湾の劉兆玄行政院長(首相クラス)が、13日国会答弁にて『開戦の可能性を排除しない』という発言をした事だ。

いやぁ魂消た。

自分も長い間生きてきたが、リアルタイムで、他国の政府高官から日本に向かって「開戦」という言葉が出たのはこれが初めてである。

今まで韓国や北朝鮮、中国などからも、反日運動はされても、『開戦する』なんて発言はなかった。

それが比較的親日とされる台湾から出るとは・・・・。

台湾のイケメン 張震くん確かに新総裁の馬英九氏は、国民党で外省人であり、学生の頃は尖閣諸島奪還を叫ぶ反日派だったらしい。

それにしても馬総統からの謝罪と賠償の要求、それと尖閣諸島は中華民国の領土だ、という主張に何の反発も示さない日本側・・・。

まあ私などの知らない水面下の動きがあるのだろうが、日本政府と各マスコミの黙止、放置プレイにも呆れた。

いやしくも他国の首相クラスの人が日本に対して「開戦」という発言をしたのだ。このままスルーしてよいのだろうか。ネットの誹謗中傷の書き込みとは違うのだから・・・。

この発言に一番驚いたのは、台湾の若者たちではないだろうか。何しろそこは兵役がある。

「開戦かよ!」「まじかよ!」「しかも相手は日本かよ!」てな具合で。

そして、私がまず思ったのは、石垣島に嫁いでいるイトコがいるけど、大丈夫かな・・とか、台湾旅行行きたかったけど当分延期だな、など。

そう、つまらない政府首脳の発言で、せっかく上手くいっていた民間の交流、文化、芸術、観光、などがダメージを受けることになる。これは痛い。

馬さん、新総統として、舐められまいと目一杯強硬姿勢で突っ張ってしまったのかなぁ。

でもこの人、チベット問題の時、北京オリンピックボイコットする!・・・なんちゃって・・発言もあるし。

そんな訳で、ある意味、突っ込みどころ満載で先の読めない馬総統。なま暖かく見ていきたい。

ハーフの金城くん

 

 

 

 

 

昔々、TVで貧困のニュースなどを見るたびによく思ったものだ。

「どうしてぞうへいきょくでおかねをたくさんすらないのだろう。そうしたらみんながおかねもちになるのに」

そんなことをすれば、超インフレになって経済が大混乱することなど知りもしない、幼き日々であった。

贋札3さて、ドイツ映画『ヒトラーの贋札』を観た。

これは、幼い豚児とは逆の考えで、多量の贋札を作り、連合国側の経済を大混乱させようとしたナチス・ドイツと、贋札造りに従事させられた、強制収容所のユダヤ人たちの攻防の物語である。

この贋札計画は、『ベルンハルト作戦』と呼ばれている。

なお劇中、ヒトラーは登場しないし、名前も出てこない。

まず贋作の罪うんぬんは置いといて、ユダヤ人技術者たちの腕の巧みさ、手際の良さに見とれた。

贋札1特に主人公のサリー。元はパスポートの偽造や偽札造りを生業としたプロの贋作師なのだが、紙質や手触り、色、風合いなどを加味し、全く本物と見まごうポンド紙幣を作り上げる過程など、まさに巨匠ともいうべき神業である。

そして彼らがその仕事に従事している限り、悲惨な強制収容所での重労働は免れ、清潔な白いベッドと暖かい食事、そして多少なりとも人間らしい扱いを受けることができる。

なんとここでは、ナチス親衛隊とユダヤ人らが一緒に演芸会を開いて楽しんでいるのだ。その芸達者ぶりには驚かされる。

だが、ユダヤ人技術者のうち、印刷技師であるブルガーは、自分たちの行為がナチスの戦況を有利にし、連合国側に多大な経済混乱を招くことに悩み、印刷を遅らせようとする。

当然彼らの意見は二つに分かれた。

贋札2生きるために造り続けるのか、それとも正義に準ずるか・・・・・。

私の眼には正義を貫こうとするブルガーの方が、冷酷で情け容赦ない人間に見えた。

なぜなら贋作を止める=死、なのだから。

ところで、ナチス・ドイツがこの「ベルンハルト作戦」を考えたのは、かつて彼らがハイパーインフレに苦しんだ経験があるからだろう。

第一次大戦後、敗戦国ドイツは、戦勝国に対して天文学的な賠償金の支払を負うこと薪代りにお札を燃やすレディになった。

それが引き金で、ドイツはハイパーインフレとなり、1年間で対ドルレートが7ケタ以上下落し、100兆マルク紙幣も出たという。こうなるともう笑うしかないか・・・・。

ここまでドイツを追い込んだ戦勝国らは、再び悲惨な戦争を迎えることになるのだ。

 

 

 

 

ヒトラーの贋札 悪魔の工房

 

 

 

秋葉原の事件から、1週間が過ぎた。

この事件を知ったとき、真っ先に頭に浮かんだのが、9年前に起きた、下関駅通り魔殺傷事件である。

当時、通勤に下関駅を利用していたので、事件の日の夜、ホームに残された生々しい血痕や、白いチョークで描かれた、殺された方の人型などを思い出す。

1999年9月29日16時過ぎ、犯人の上部康明(当時35歳)は、レンタカーで下関駅構内に突っ込み、7人を跳ねた。
その後、包丁を手に駅の改札を突破し、ホームを駆け上がりながら人々を刺していった。

車に跳ねられた7人のうち2人が死亡、包丁で刺された8人のうち3人が死亡。10人が重軽傷を負った。

車の突入から逮捕まで10分余りの出来事だった。

犯人の上部は教育者の家庭に生まれ、高校は山口県でも屈指の進学校、一浪して九州大学の工学部建築科に進む。

だがその頃より人間関係で悩み、対人恐怖症に陥り、大学を卒業したものの、無職のまま、精神科の治療を受ける。

やがて働き始めるが、どこも長続きしない。

だが一級建築士をとったのをきっかけに、父親の援助を受け事務所を開く。結婚もする。

やっと順調になってきたかと思ったが、元々対人恐怖症のため、人付き合いが下手なせいか仕事が取れず、失意のうち事務所を閉鎖する。そして妻も去っていった。

ここでなぜかニュージーランド移住を考え、その資金作りのため借金をして運送業を始める。

だが運の悪いことに1999年9月24日、大型台風が下関を襲い、上部のトラックは水没し、廃車となってしまった(確かに大きな台風で、私の職場も床下浸水の被害を受けた)

そしてその4日後、5人が死に10人が重軽傷を負う、惨事を引き起こすのである。

上部はのちに、「池袋事件のようにナイフだけでは大量に殺せないので、車を使った」と供述したという。

3週間前、東京池袋で、やはり通り魔事件があったのだ。

このたびの事件、どうか負の連鎖が起きないよう、心より願う。

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伊丹十三氏のエッセイだと思うが、
『日本の俳優は、貧乏人の役をやらせるとすごい。それこそ情けなるほど上手く演じる。だが、金持ちの役をやらせると全く駄目だ』

と、いう言葉があった。同感だ。

確かに、名もなき兵士や、幸薄い娼婦の役は見事に演じても、ごく贅沢に育てられた高貴な身分の役となると、どこか無理してるような痛々しさはよく感じる。

アフタースクールこのたび観た日本映画『アフタースクール』でも、一流企業の社長が重要な役で出てくるが、これがどう見ても、ボーリング場の支配人程度にしか見えないのだ。

さて、この作品、観終わった瞬間は
『うゎ、面白かった。こんな楽しい日本映画も久々だな』
などと喜んでいたのだが、時間が経つにつれ、気持ちが醒め、妙に空疎な印象しか心に残らず、『もしかして、つまらなかったのかも』と、いつのまにか、正反対の思いに変わったのだった。

もちろん良い作品だとは思う。

大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人と、今を時めく名優を揃え、テンポの良い脚本、凝ったディティール、そしてなんといっても、そのプロット作りの巧みさ・・・・。

だが監督はプロット作りで安心してしまったのだろうか。

肝心の人間の内面が描けていないのだ。

まずこ物語のヒロインだが、私にはさっぱり魅力的な女性には見えず、したがって、なぜ彼女のために彼らがこんな苦労をするのか分からなかアフタースクール2った。

そして3人の男たちの内面の苦悩や葛藤、そして魅力が描ききれてないため、なんともノッペラボーな印象しか残らない。これは先ほど言った一流企業の社長も同じだ。実力ある役者を揃えているのに残念だ。

そして気になったのが、中学教師をしている男が、チンピラ探偵に放った言葉。

『おまえのような人間はよくいる。何かあると学校が悪い、とすべて学校のせいにする奴。でも違うんだ。学校なんて本当はどうでもいいんだ。要は、自分から楽しくするようにしないといけないんだ(うろ覚えなので激しく違っていると思うが、ニュアンスはこんな感じ)』

ちがうでしょう先生。つか先生が学校なんてどうでもいいなんて言っちゃおしまいよ。

学校に頼らず自分で楽しみを作ろうとしている成熟した子供には、そもそも学校なんて必要ないと思われ。

そしてどれほど多くの子供たちが、期待に胸ふくらませて入った学校で、傷つき、無理解な教師のため性格をゆがめられ、あたら将来を棒に振ってしまったか(もちろんその逆もあるだろうが)

そんな訳でこの作品、以外と海外でリメイクしたら良いかも。

潤沢なハリウッド資本で豪華なサスペンスものにするか、それとも香港映画で、香港ノワールと思いきや実は・・・てなものにするか。

ああ、つくづく自分はイヤミな映画ファンだな。

 

 

 

 

 

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