ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2008年08月

無印の誇り

早いもので、本日(8月24日)で北京オリンピックは閉会式を迎える。

8月8日以来、すっかりオリンピック漬けだった日々は終わるのだ。ああこの喪失感を何で埋め合わせればよいのだろう。

数々の感動シーンがあった。

ソフトボール選手らのキラキラした瞳も印象深いが、私がもっとも心に残ったのは、11日に行なわれたバドミントン女子ダブルス、末綱聡子・前田美順が、世界ランキング一位の中国ペアと闘った準々決勝だ。

末綱・前田ペア実は私は末綱・前田ペアの名前を知らなかったし、観たのもリアルタイムではなく録画だった。

外出から帰ってきてテレビを付けたら、たまたま試合が始ったばかりで、何となく見ていたのだ。

最初は日本人ペアは動きが硬く、中国ペアとの格差は歴然だった。

ミスも多く、簡単に第一セットを取られてしまい、「ああ日本、ストレート負けかなぁ」と思っていたのだが、2セット目から俄然面白くなった。

スマッシュが決まるたび末綱・前田の表情が少しずつ明るく、そして動きも生き生きしてきた。

クールで、勝っても負けてもあまり表情を変えない中国ペアに対し、失敗すれば天を仰いで悔しがり、勝てば笑顔で抱き合う日本の2人。

勝利の女神は、天真爛漫な女たちに味方し始めたようだ。

そして接戦の末、第二セットは日本がゲット。

こうなるともう勢いは止まらない。

見違えるような動き、スマッシュの正確さ、自信にあふれた表情。

第一セットの時と全然違う。

短時間でこんなに人は変わっていくものだろうか。

結束元々の実力に加え、自信、試合のリズム、運、すべてが彼女らに味方し日本ペアは、第三セットも取り、中国に勝利した。

そして13日、準決勝を迎える。相手は韓国。

第一セットは韓国に取られたが試合内容は悪くなかった。とくに後半のラリーの応酬は圧巻だったが、その後がいけない。

韓国の選手が、日本が有利になりそうになると、やたらクレームをつけだしたのだ。

そのたびに、何度も何度も試合は中断する。間延びした時間。

バドミントンはラリーポイント制で2セット先取したら良い、スピーディーな競技だ。

先行逃げ切りと言うか、先に調子の波に乗った方が絶対有利だ。

たぶん韓国は、末綱・前田を研究し、彼女らを調子に乗らせたら負けだと考え、日本が波に乗り始める前に、執拗にクレームで時間稼ぎをしたのではないだろうか。

韓国選手が抗議している間、純朴な九州出身の二人は何のすべもなく立ちすくんでいる。

「ああ、まずいな、これじゃリズムに乗れない」

案の定、この試合、前回のような調子の波に乗れず、凡ミスもふえ、結局ストレート負けを喫した。

その後、末綱・前田ペアは三位決定戦でも敗れ、日本人初のメダルの夢は消えたのだ。

それにしてもあの韓国選手。執拗なクレームの時、何度か審判の体にタッチしていたが、あれサッカーならイエローカード、悪ければレッドカードだろう。

また、たびたびの時間中断に対し、何も言わない日本コーチ陣もなんだかなぁと思った。

とにかく理不尽な一戦であった。

まあ理不尽も不運もすべて併せ持つのがオリンピックなのだろう。

そしてオリンピックがなければ私は末綱・前田ペアとめぐり合うことはなかったわけで。

やがて時間がたてば、北京オリンピックの記憶も少しずつ薄れていくと思うが、8月の暑い日、2人の日本人選手が見せてくれた、ひたむきで濃密なひと時は、いつまでも私の心に残るだろう。

歓喜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローの消えた街

ジョーカー お盆休みの間、公開中の映画『ダークナイト』を観にいった。

これは2005年の『バットマンビギンズ』の続編である。

元々バットマンシリーズには興味がなく、まともに観たのは、1989年の『バットマン』だけだったが、今回の『ダークナイト』はぜひ観たいと思っていた。

なぜなら故ヒース・レジャーがジョーカー役だから。

今年の一月、不慮の事故で28歳で亡くなった彼が、死ぬまで役作りで悩んでいたというジョーカーをどうしても観たかった。

さて内容だが、スピード感があり、凝った映像だが、かなり暗く、残酷なシーンも多かった。夏休みのせいで映画館には小学生もいたが、たぶんトラウマになるのでは。。。。。

やはりヒース・レジャーのジョーカーは凄かった。
ジャック・ニコルソンのジョーカーが、悪役なのにキッチュで妙に愛嬌があったのに対し、ヒースのそれはひたすら冷酷で残忍でまさに邪悪といった感じだ。

汗でところどころ白塗りがまだらになっているのも妙にリアリティがあり、看護婦姿でよろよろと歩きながら爆破するシーンなど圧巻だった。

彼にとって人を不幸に陥れること、悪の道に引きずりこむことが無上の悦びなのだ。そしてお金や権力にはまったく見向きもしないのだから、よりタチが悪い。

あと凄かったのがこの作品に登場する若き新任検事。
彼こそヒーローと言うべき、熱血検事で、正義感に溢れ、ゴッサム・シティの平和のため、全力を傾けている。

まさしく光の騎士ともいうべき男だが、ジョーカーはそんな彼をまんまと悪の道へ引きこもうとする・・・・・・。

ジョーカー2この正義漢あふれる検事が転落していくさまが、何とも痛々しい。

映画の最後の方など、彼の方がジョーカーより残忍な人間に見えてくるのだから。

そんな訳で今回は肝心のバッドマンは目立たない(題名にも入ってないし)

もともとバットマンは裕福な家庭の御曹司。金は腐るほどある。車や武器を揃えるなど簡単なこと。

所詮ボランティアでやっていることなのだ。

それに比べ、丸腰で悪に立ち向かう若き検事に感情移入してしまうのは仕方ないか。

そんな訳でダークナイト(The Dark Knight)
黒い夜ではなく、黒い騎士。

日のあたる場所を失ったバットマンは、それでも暗黒の街をさまよい続けるしかないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

つぶらな瞳の殺人者

『エレファント』というアメリカ映画のDVDを観た。

これはあの1999年起こった「コロバイン高校銃乱射事件」をモチーフにした、ガス・ヴァン・サント監督の作品だ。

この事件をモチーフにした映画には、マイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』がすでにあり、銃社会アメリカをドキュメンタリーで、赤裸々に描いている。

一方『エレファント』は、乱射事件の日の数時間を淡々と描いている。

そもそもなぜ『エレファント』という題名なのか。

調べてみるに、中国の経書から来ているらしく、盲目の僧侶たちが象にふれ、耳、鼻、牙、尻尾を触った者それぞれが、自分の触ったものこそ像の本質だと主張して譲らなかった寓話から来ているそうだ。

さて内容だが、ハンディカメラを多用したドキュメンタリータッチの映像で、素人高校生が演じるセリフはほとんどアドリブだそうだ。

学生、特に男の子たちはうつくしく描かれており、この後、起こるであろう惨劇を思うと、はかなさ、残酷さが身にしみる。

そして構成は、黒澤監督の『羅生門』に似ている。

ここで描かれる高校なのだが、なんだか閉そく感が満ちて息が詰まりそうになる。

高校生はそれぞれカジュアルな服装で、届け出をすれば外出も自由で、先生と学生が一緒に性について語り合い、校舎は広く清潔感にあふれている。

それなのに妙に息苦しい雰囲気。まるで高校ではなく病院のようだ。それも郊外に作られた設備の整った、しかし無機質で冷たい感じ。

学生らは自由を謳歌しているように見えて、みなそれぞれ不安と孤独を抱えている。

校則に縛られ、制服が義務の日本の高校の方が、まだホッとできる隙があるような気がする。

なぜ2人の高校生は銃を乱射したのか。

銃社会だから、いじめがあったから、と決めつけたら、経書に出てくる盲目の僧侶と同じになってしまう。

それにしても、主犯格の少年の、つぶらな澄んだ瞳を見るにつけ、青春の残酷さに胸がつまる。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

オヤジたちの宴

今年の4月ごろから読み始めていた、吉川英治版  『三国志』八巻をすべて読み終え、今ちょっとした虚脱状態である。

特に夢中になっていたわけではないし、正直後半以降はかなりダレていたのだが,
毎晩、いっしょに日本酒をあおりつつ、天下国家を語り、政治談議を交わしていたオヤジたちが、いつの間にか一人減り二人減りして、最後たった一人残されたような寂しさだ。

さて、第七巻のあとがきで、「三国志のような小説は、教養のない民間人の読むものであり、正統な学問をした知識人が読むべきものではない、うんぬんと描いてあったがまさにその通りだと思う。

子龍特に諸葛孔明が出てくる前は、どいつもこいつもバカばっかり。

君主は部下の讒言にコロッとだまされるし、将軍は女にコロッとだまされるし、また部下は敵味方の将を比べ、敵の方に利ありと思えば、平気で寝返るし、とにかくコロコロ首が飛ぶ(殺しすぎだって)

皇帝は泣いてばかりいるし、劉備玄徳は優柔不断だし、張飛は筋肉バカだし。

しかも彼ら、日頃は戦に精を出し、弓、槍の稽古にはげみ、また権謀術数おさおさ怠りなく、兵法を学び兵書を読み、ゆっくり休む間もないほど忙しいはずなのに、なぜかその第一夫人、第二夫人、お妾さんとの間に子供がわらわら生まれてくるのも摩訶不思議である。

後半、主な登場人物が一人二人と死んでいき、彼らの2世が登場するのだが、やはりいずこの時代も2代目というものは、初代に比べて覇気がなく個性がなく、魅力に欠ける。

やはり初代の奴ら、『桃園の誓い』を愚直にも守り続ける三馬鹿大将もとい玄徳、関羽、張飛、また彼らとかかわり合った敵味方の将軍。

彼らが死に物狂いで戦った後、平和が訪れたのかというと、そうでもない。戦いはその後も続いた。そしてある意味今も。

でも未来を信じ、汗を流し、血を流し、知恵を絞り戦い抜いたオヤジたちの世界は思ったより心地よいものであった。

三国志〈4〉 (吉川英治歴史時代文庫)

 

 

 

 

 

 

 

ワイヤーが命

北京オリンピック開会式、楽しませてもらった。やはり、もろ『王妃の紋章』の世界だった。

「紙」「印刷」「火薬」「羅針盤」という中国四大発明に加え、「人海戦術」「ワイヤーアクション」と言った独自の技(?)も駆使し、凝りに凝ったそして迫力のある演出(火薬の量、はんぱじゃないし)、に、感心するも、もうおなか一杯という感じ。

この一歩間違えると悪趣味になるスレスレの感じが中国らしいというべきか。

それにしても2008人の太鼓とか、活版印刷、光のパフォーマンスなどのおびただしい人たち(彼らは軍人さんなのかな)

100パーセント、一糸乱れぬとは言えず、ごくたまにワンテンポ動作が遅れたり、暗くなるシーンで、光が消えるのがほんの少しずれてる人がいたりして、

「この遅れた人、きっと式が終わった後、上官から叱責をくらうだろうなぁ、可哀想に・・・」と思ったり。

体操王子が無事聖火をつけるまで、テロよりもドキドキの中国のパフォーマンスであった。ワイヤーがすべて

 

 

 

 

 

心に残るは胸の谷間

気温35度の真夏日。

寄りによってこんな日に、再上映館で、中国映画、『王妃の紋章』と『ラスト、コーション』という、なんとも濃い作品を2本も観てきてしまった。暑苦しいことおびただしい。

『ラスト、コーション』は前に何度か観たが『王妃の紋章』は初めて。

色々なユーザーレビューから想像するに、きんきらきんに派手に贅をつくし中国得意の人海戦術でやたら人がわらわら出てくる無駄に金のかかった作品だろうと思っていたらまさにその通りだった。

特に大軍の戦闘シーン。あのびっしり画面を埋め尽くした兵士たちはCG処理なのか、人件費が低い利を生かしたエキストラなのか謎だ。

それと気になるのが女性の胸。王妃から側女までやたら胸を寄せて上げている。これは監督の趣味か?

yoseteageteまぁここまで予想通りだと、いっそ清々しいというもので、この絢爛豪華な昼ドラを楽しんだ。

そうこれは、やたら金のかかった、家庭内紛争の話なのだ。

王妃である継母と息子の不倫、王の過去と女、息子たちの確執・・・。

重陽の節句に王家の家族が集まるという設定も、お盆に久しぶりに家族が集まりやがて、争いが始まるのに似ている。

しかし夫婦喧嘩、兄弟喧嘩の巻き添えで、多くの兵士や部下が死んでいくのは何とも気の毒である。

それにしても名監督チャン・イーモウは、なぜこんな作品を作ったのか。

どんなに見かけは美しく絢爛豪華でも、中身は腐っている王家を描くことで彼は何を訴えたかったのだろう。

ところでチャン・イーモウは、このたびの北京オリンピックでの開会式、閉会式の監督でもある。

むう、確かにこの映画でも、最後の戦闘シーンなどまるでマスゲームのようだったし、中国の底力を感じるなぁ。

故宮ならぬ鳥の巣スタジアムでは、どんな絵巻物が繰り広げられるのか。

きんきら

 

 

 

 

 

 

 

大人も子供も判ってくれない

niwa職場の同じフロアに、どうもソリの合わない人がいる。

年齢は60歳近い女性。髪紅く、化粧濃く、いつも赤やピンクあるいはパステル調のど派手な服装を身にまとっている。

地声の大きな彼女の声は、トイレやロッカー室に響き渡っているが、男性と話すときは突然しなを作ったりする。

私は心ひそかに彼女を「ピンクちゃん」と呼び習わしているのだが、まともに会話をしたことがない。

ただ「お早うございます」「お疲れさま」と棒読みの挨拶をするだけ。

ピンクちゃんもこっちの心を悟っているのか、私には話しかけない。

そんなある日、私は一大決心をした。

「彼女に親しく話しかけよう!」

「取りあえず、無難に『可愛い色の服ですね』はどうだろう・・・」

なぜ心の狭い私がそう決心したのか。

それは内田樹著『子どもは判ってくれない』を読んだからだ。

興味深い本だったが、一番おもしろかったのは『たいへんに長いまえがき』だ。
他の章は、このまえがきをより発展させた感じである。

この中に「弱い敵と共存する」という言葉がある。

「強い敵」ならば共存あるいは従属するしかない。会社とか国家とか、子供であれば親とか。

でも「弱い敵」。おだてたりおべっかを使う必要のない、彼らがいてもいなくても何の支障にもならない、そんな「弱い敵」と共存して生きる。

それこそまさに「大人」ではないか。

この「弱い敵」は具体的には「不快な隣人」である。

おお、まさに、この「不快な隣人」と共存していくことができたら、世界中の紛争の69パーセントは解決するのではないか。

アジアの平和のために、ギリシャとトルコの友好のために、パレスチナに平和が来るために、まず私がピンクちゃんと仲良くしなければ。

ピンクちゃんのデスクにさりげなく近寄る。

彼女は顧客と電話で話している。内容を聞くともなく聞いていると、相手は最近トルコ旅行に言ったなどと話している。するとピンクちゃん、

『トルコ〜!まあ、お風呂に行って来たんですか〜〜」

・・・・・あいたたた、いまどきトルコ=お風呂とは・・・。しかも顧客も怒らずに笑っている。そういう人を選ぶ嗅覚は優れているのだろうな。

でも、その一言で、気が抜けた。明日またトライしよう。

そして翌日、出社したところ、彼女の姿が見つからない。

「あら。あの人の部署、上の階に変わったのよ」

同僚の女性に聞いたら、教えてくれた。

もう同じフロアで彼女に会うこともないだろう。

とうとう大人になるチャンスを逃してしまったのか・・・・。

なぜかホッとした気持ちで、私はデスクに向かった。

子どもは判ってくれない (文春文庫)

 

 

 

 

 

 

 

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