早いもので、本日(8月24日)で北京オリンピックは閉会式を迎える。
8月8日以来、すっかりオリンピック漬けだった日々は終わるのだ。ああこの喪失感を何で埋め合わせればよいのだろう。
数々の感動シーンがあった。
ソフトボール選手らのキラキラした瞳も印象深いが、私がもっとも心に残ったのは、11日に行なわれたバドミントン女子ダブルス、末綱聡子・前田美順が、世界ランキング一位の中国ペアと闘った準々決勝だ。
実は私は末綱・前田ペアの名前を知らなかったし、観たのもリアルタイムではなく録画だった。
外出から帰ってきてテレビを付けたら、たまたま試合が始ったばかりで、何となく見ていたのだ。
最初は日本人ペアは動きが硬く、中国ペアとの格差は歴然だった。
ミスも多く、簡単に第一セットを取られてしまい、「ああ日本、ストレート負けかなぁ」と思っていたのだが、2セット目から俄然面白くなった。
スマッシュが決まるたび末綱・前田の表情が少しずつ明るく、そして動きも生き生きしてきた。
クールで、勝っても負けてもあまり表情を変えない中国ペアに対し、失敗すれば天を仰いで悔しがり、勝てば笑顔で抱き合う日本の2人。
そして接戦の末、第二セットは日本がゲット。
こうなるともう勢いは止まらない。
見違えるような動き、スマッシュの正確さ、自信にあふれた表情。
第一セットの時と全然違う。
短時間でこんなに人は変わっていくものだろうか。
元々の実力に加え、自信、試合のリズム、運、すべてが彼女らに味方し日本ペアは、第三セットも取り、中国に勝利した。
そして13日、準決勝を迎える。相手は韓国。
第一セットは韓国に取られたが試合内容は悪くなかった。とくに後半のラリーの応酬は圧巻だったが、その後がいけない。
韓国の選手が、日本が有利になりそうになると、やたらクレームをつけだしたのだ。
そのたびに、何度も何度も試合は中断する。間延びした時間。
バドミントンはラリーポイント制で2セット先取したら良い、スピーディーな競技だ。
先行逃げ切りと言うか、先に調子の波に乗った方が絶対有利だ。
たぶん韓国は、末綱・前田を研究し、彼女らを調子に乗らせたら負けだと考え、日本が波に乗り始める前に、執拗にクレームで時間稼ぎをしたのではないだろうか。
韓国選手が抗議している間、純朴な九州出身の二人は何のすべもなく立ちすくんでいる。
「ああ、まずいな、これじゃリズムに乗れない」
案の定、この試合、前回のような調子の波に乗れず、凡ミスもふえ、結局ストレート負けを喫した。
その後、末綱・前田ペアは三位決定戦でも敗れ、日本人初のメダルの夢は消えたのだ。
それにしてもあの韓国選手。執拗なクレームの時、何度か審判の体にタッチしていたが、あれサッカーならイエローカード、悪ければレッドカードだろう。
また、たびたびの時間中断に対し、何も言わない日本コーチ陣もなんだかなぁと思った。
とにかく理不尽な一戦であった。
まあ理不尽も不運もすべて併せ持つのがオリンピックなのだろう。
そしてオリンピックがなければ私は末綱・前田ペアとめぐり合うことはなかったわけで。
やがて時間がたてば、北京オリンピックの記憶も少しずつ薄れていくと思うが、8月の暑い日、2人の日本人選手が見せてくれた、ひたむきで濃密なひと時は、いつまでも私の心に残るだろう。