ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2008年11月

タトゥーと刺青

渋すぎ〜 イースタン・プロミス』という映画のDVDを観た。

クローネンバーグ監督作品で、主役はヴィゴ・モーテンセン。

ちなみにヴィゴは、この作品でアカデミー主演男優賞にノミネートされている。

内容は、クリスマス前のロンドン、14歳のロシアの少女が病院に担ぎ込まれ、赤ん坊を出産した後、死亡する。

少女の腕にはたくさんのヘロイン注射の痕。どうやら売春をさせられていたらしい。

少女を看取った若い助産婦(ナオミ・ワッツ)は、残されたロシア語で書かれた日記から、彼女の身元を追い、やがてロシアン・マフィアの運転手、ニコライ(ヴィゴ)と出会う・・・・。

とにかく、クローネンバーク監督の描くロシアン・マフィアの冷酷さ、血生臭さ、たまりません。

彼らは銃を使わずナイフで人を殺すので、その生々しいシーンに、指の間からおそるおそる観ることもしばしば。

義兄弟〜しかし、なんといってもヴィゴのかっこよさクールさにはまいりました。

この人『ロード・オブ・ザ・リング』で一躍有名になったけど、自分のイメージを固定せず、作品ごとに新鮮な魅力を見せてくれる。

特に今回、白眉なのは、サウナ風呂で、ヴィゴが素っ裸で殺し屋2人とナイフで格闘するシーンだ。

そんなにマッチョではない、どちらかというと少年体型のヴィゴの体に、全身鮮やかなタトゥー!

美味しい、もとい目の保養、もとい、こんな迫力ある格闘シーンも久しぶりだ。

さて、ロシアン・マフィアのタトゥーは、日本の刺青と違い、記号というロマンチック〜か、象形文字みたいな、くさび型文字みたいな模様が多い。あと十字架とか。

映画の中でも「タトゥーは囚人の履歴書だ」という言葉が出てくるが、これを見れば、犯罪者の前科や思想、性的嗜好などが分かるらしい。

彫る時も、電動ドリルみたいなのを使っていて簡単にやっていた。

日本において、彫師が腕を振るった、極彩色の不動明王や観音様などとは、ずい分違うもんだ。

クレムリン宮殿?

ところで先日読んだ『項羽と劉邦』にも刺青にちなんだ男が出てくる。

鯨布という男だが、刑罰で刺青を入れられた時、大喜びしたという。そして後に前漢初期の准南王となる。

やはり刺青は、ヤクザ者の勲章なのだろう。

さて私は、香港マフィアや中国黒社会ものの映画も好きなのだが、香港のヤクザは日本と違い、あまり刺青をしていない。

もし香港ヤクザに刺青の習慣があるのなら、映画『インファナル・アフェア(無間道)』の潜入捜査官ヤンは、信頼を得るために体にもんもんを入れねばならなかったはずだ。

くりからもんもん(漢字分からん)を背負った日本のヤクザの姿には「あちゃー、もう堅気にはもどれないんだ」という悲壮な雰囲気が漂うが、これは文化の違いなのかなぁ。

イースタン・プロミス
イースタン・プロミス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男で歴史はまわっている

司馬遼太郎の『項羽と劉邦』3巻を読み終えた。

毎度の事ながら、夢中になった本を読み終えた後の寂しさったらない。出来ればまだ未読だった一か月前に戻りたい気分だ。

さて、 こういった歴史物・戦国ものに限らず、男たちが大勢出てくる話でいつも感心するのは、彼らの役割分担の的確さ、迅速さだ。

例えば高層ビルが火事になったとか、客船がひっくり返った、みたいなパニックものにおいても、男らはすぐ、リーダー、サブリーダー、参謀、世話役などを決め、誰に命令された訳でもないのに、役割に忠実に行動する。

四面楚歌自分の力量と周囲のそれを即座に観察し、適材適所を見極める能力は、やはり男が優れていると思う。

これは大昔、狩猟時代の名残りなのだろうか。

獲物を見つけた時、男たちはそれぞれが協力し合い、迅速に行動せねばならなかった。ぐずぐずしていたら食べ物にありつけないどころか、自分らが食われてしまうのだから。

その点、女は弱い。
だから少女マンガなんかで、バレエの主役を得た少女のトゥシューズに、それを妬んだライバルが安全ピンを入れたなんて古典的なネタがあったりする(ん〜、ちょっと違うかな)

もちろん男にも嫉妬はあるだろうが、忸怩たる思いを秘めつつも、忠実に自分の役割を果たす彼らの姿の何と美しいことか。

さて、『項羽と劉邦』において最終的には、劉邦が天下統一を果たし、皇帝と覇王 項羽の最期なった。

だが私は戦いに敗れ自害した項羽やその寵姫、それぞれの臣下や兵士、策略家、「項羽と劉邦」に係わったすべての人の人生が、劉邦と同じか、より以上に輝いて見えた。

百戦百勝、勇敢で天才的な戦時能力を持ちながら、たった一度の負けで、31歳の生涯を終えた項羽。
人格、能力とも申し分ないのに、ひたすら劉邦の縁の下の力持ちで、行政や補給の仕事を律儀につとめた蕭何。
見事な戦略家ながら、病弱な美青年、張良。
栄耀栄華や出世を求めない、芯からの戦おたく、韓信。

また劉邦に対する屈折した敬愛を、悪口でしか表現できない同郷の部下と、そんな彼を心配する友人。

その2人はやがて劉邦のために歓んで死地に向かうのだ。

友情、名誉、自尊心、嫉妬・・・・様々なものがないまぜになった男の世界は美しい。

とても素晴らしい作品だが、一つ司馬遼太郎センセに注文をつけるなら、項羽と劉邦が初めて出会うシーンを創ってほしかったな。

例えば町でチンピラに絡まれている子供の項羽を、当時任侠の徒であった劉邦が助けてやるとか。
ああ、やっぱ安っぽいか。

でもこんなセンチメンタルな気持ち、当分おさまりそうにない。

さらば、わが愛 覇王別姫
さらば、わが愛 覇王別姫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死刑を支える人たち

休暇』という日本映画を観てきた。原作は吉村昭氏の短編。

以前から気になっていたのだが、上映している劇場が少なくて、おととい、やっとこさで観ることが出来たのだ。

妻と連れ子水曜、レディスディの夕方なのに、観客は私を入れても6人ほど。しかし期待以上に良かった。心が震えた。

さて内容は、50歳くらいとおぼしき刑務官、平井が見合い結婚をすることになった。初婚だ。

相手の女性には6歳の可愛い男の子がいるのだが、この子が無口で一日中絵ばかり描いて、平井になつこうとしない。

平井は、この幸薄そうな母子のために新婚旅行に行きたいと思うが、母の葬式などで有給を使い果たしている。

ちょうどその時、平井の勤める刑務所で3年ぶりに死刑が執行されることになった。
その際死刑囚の支え役(吊り下げられた死刑囚の体が、上から落ちてくるさい、痙攣する体を支える役)をしたものには、特別に一週間の休暇西島くんが与えられるという。

そして平井は休暇をもらうため、その嫌な仕事を引き受けるのだ・・・。

物語は、つつましい新婚旅行に出かける3人と、死刑囚を中心とした刑務所の様子が、交互に描かれている。

静かな映像には、説明というものがほとんどない。

平井がなぜずっと独身だったのか、妻の前夫はどんな人でなぜ死んだのか。

死刑囚の男、金田は老夫婦を殺したらしいのだが、その理由もいっさい分からない。

この金田という男、独房の中では、清潔なボタンダウンのシャツとズボンで、髪もこざっぱりとし、たたずまいも静かで、いつもスケッチブックに絵を描いている。

死刑囚には見えないところが逆に不気味で、いつ切れるか分からない時限爆弾のような危うさがある。

看守と死刑囚また極端に口数が少ない。というかほとんどしゃべらない。

久しぶりに妹が面会に来ても、2人とも黙ったまま・・・・・。

テレビだったら明らかに放送事故と思われる長い沈黙。
確信的というか、暴力的ともとれる沈黙の中で、その分観ている私の頭に色々な想像が浮かんでは消える。

兄は妹の一生を台無しにしたことを悔やんでも悔やみきれずにいるのか、妹は死にゆく兄に何を言おうと思っていたのか、それともこの二人には、他人には伺い知れない深い秘密があったのか。
そもそもあの殺された老夫婦、もしかしたら金田の両親なのでは?

それにしても金田役の西島英俊の演技は、すごいとしか言いようがない。

特に死刑執行が決まってからの彼はリアルで凄まじい。

すっかり諦観しているように見えながらも、いつもの看守と違う足音にびくつき、今からと知った時の、腰がへなへなになる様子。だが暴れる訳でもなく、看守らに抱きかかえられるようにして死刑に向かう姿・・・・。

執行されるまでの様子があまりに緊張感があり過ぎて生々しくて、苦しくなってきた。

そして、一日中絵ばかり描いている寡黙な少年と、やはり一日中スケッチブックに向かっていた無口な金田の姿、また少年を抱きしめる平井と、痙攣する金田の体を抱きしめる平井の姿が気味悪くシンクロするのだ。

物語はラスト、平井とその妻、少年の幸せそうな笑顔でホッとした。

死にゆくものもあれば、これから生きていく人もいる。

ああそういえば、この映画が公開されたころ、あの鳩山法務大臣の「死神」発言があったっけ。。。、

蛍 (中公文庫)
蛍 (中公文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

可愛い男

最近、司馬遼太郎の『項羽と劉邦』(上中下3巻)を読んでいる。
今、中巻の286P、「劉邦の遁走」が終わったところだが、面白くてしょうがない。

ああ、司馬遼太郎氏に限らず歴史小説の作家って、何百年も何千年も前の異国の話を、よくもぬけぬけと、あたかも今見てきたように語ることが出来るのものだ。

きっとそこにたどり着くまで、山のような資料や文献を読みあさり、自分の足で歩き回り、専門家の話に耳を傾けたのだろう。

そしてその膨大な知識を充分咀嚼し消化し、血や肉として体の隅々にまで行き渡らせた結果に違いない。

さて『項羽と劉邦』だが、とにかく登場人物のキャラが立って魅力的だ。

特に劉邦と愉快な仲間(蕭何・張良・韓信・その他)のやり取りの可愛らしさったらない。

白い帆船もし私に絵の才能があったら、腐女子向けの同人漫画で描きたいと思うほどだ。

そしてその可愛らしさのてっぺんにいるのが劉邦だ。

この男、貧しい農村の出身で、字もよく知らず、喧嘩が強いわけでもないヘタレな奴で、取り柄といえば体格が良いのと顔立ちが竜に似ているだけだ(ていうか、誰か本物の竜を見たのか?)。

だがなぜか、会う人会う人みな彼のとりことなり、まるでイエス・キリストに使える乙女のように、何やかや面倒を見たがるのだ。

ある取り巻きの一人はこう語っている。

「あっしが居なければ、劉あにいはただのでくのぼうですよ」

劉邦の魅力はその子供のような無頓着さだろう。

だから、たえず何らかの庇護が必要と見られ、自我を持たない彼は人々の庇護や世話を素直に受け入れている。それがまた人々を喜ばせ、取り巻きはどんどん増えていく。

一方、項羽の方だが、彼は劉邦と違い、名門の出で戦上手、頭も切れリーダーシップもある。

本来であれば、項羽こそ皇帝としてふさわしい人物だと思われるのだが、実際は、貧しい農村出身の劉邦が皇帝になり、項羽は戦に敗れ自害する。

まだ物語の途中、今、劉邦の漢軍は項羽軍に追われ、ひたすら遁走している。

これからどうなるのか、楚漢の地図とにらめっこしながら、彼らの行く末を見ていこう。

項羽と劉邦 (上) (新潮文庫)
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項羽と劉邦〈中〉 (新潮文庫)
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項羽と劉邦〈下〉 (新潮文庫)
項羽と劉邦〈下〉 (新潮文庫)

 

 

 

 

 

 

若き君主の苦悩

ジョン・ウー監督の映画、『レッドクリフPart1』を観てきた。

実はこの作品に対して、あまり期待していなかったのだ。

胡軍まず、今回はPart1であり、肝心の「赤壁の戦い」は次回だということ。

まぁ知ってるだけ良かった。
そういえば昔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の続編を観にいった時、第3作があるとは知らず、ラストの、「To be concluded〜
に目がテンになった思い出があるなぁ・・・。

また呉軍の司令官、周瑜役のトニー・レオン、劉備玄徳の軍師、諸葛亮役の金城武らの声が吹き替えなのも気になった。

ネイティブの中国普通語(北京語)じゃない俳優(トニーは広東語、金城君は台湾語?日本語?)は吹き替えが中国では常識だが、やはり2人の声は好きだし、聞きたかった。
トニー、『「ラスト、コーション』」では普通語でしゃべっていたが、『レッドクリフ』においては、台詞を訓練する余裕がなかったんだろうな。

そしてその周瑜と諸葛亮が、この作品においては仲がよく、固い友情を結んでいるというのも違和感があった。

吉川英治版「三国志」において周瑜は、諸葛亮の才能を恐れ嫉妬し将来我が国の脅威になるのではと、何度も殺害を試みるが失敗し、最後は『ああ無念、天すでに、この周瑜を地上に生ませ給いながら、何故また、孔明を地に生じ給えるや!」と嘆きつつ36歳の若さで悶絶死してしまうのだから。

そんなわけで、今回はあまり考えずに、娯楽大作として気軽に楽しもうと思っていたのだが・・・・。

それが実は、大変面白かったんですよね!もう堪能しました。

古い言い方だが、血沸き肉踊る大活劇っていうんですかぁ〜。

さすが男が惚れる男のアクション映画を作らせたらナンバーワンのジョン・ウー監督。

超雲まず、劉備玄徳の赤子をひしと抱きしめ、おびただしい曹操軍をなぎ倒しながら劉備の元へ向かう趙雲の勇姿で、もうつかみはOK!

この趙雲役の胡軍(フー・ジュン)の何とカッコいいこと。
以前から好きな俳優だったが、こんな「漢」の似合う男だったとは。

この趙雲の活躍だけでも、十分観る価値があり。

蛇足だが、漢たちに助けられた劉備の赤子が、長じては愚鈍な男に育ち、やがて、父が苦労して築きあげた蜀の国を滅ぼしてしまうのだから諸行無常だ・・・・・。

またストーリーやアクションが、緩急取り混ぜてテンポ良く進むため、吹き替えの件もあまり気にならない。岩代太郎の音楽も心地よい。

八掛の陣など、小説では分からなかったものも見られて良かった。

そして、張震(チャン・チェン)演じる呉の君主孫権、これがまた良い味出していた。

孫権と諸葛亮名将だった父や長兄が次々に早死にし、わずか19歳で君主となったが、まだ自分に自信がなく、当然重臣たちからも舐められている。

そこへ破竹の勢いで北の曹操軍が80万の兵を連れてやってくる。

降伏か開戦か。
我が身大事の老重臣たちは、しきりに降伏をすすめている。

そこへ諸葛亮より劉備軍と同盟を組まないかとの打診。
だが2軍を足しても兵は5万。

民を背負っている君主の苦悩は深い。
そう思うと、ナンバー2の周瑜
や軍師の諸葛亮など気楽な身分に思えてくる。

孫権さまこの苦しみつつ決断をする孫権の姿が秀逸で、また絵的にも美しくセクシーだ。

そして最後の方、周瑜と諸葛亮は会話の中で、将来、敵と味方に分かれるであろうことをほのめかして終わる。

そう、今日の友は明日の敵。

歴史大作の良いところは、登場人物それぞれの人生を俯瞰して見ることが出来る事だ。

今は蜜月でも、その後過酷な運命が待っていることが分かっているだけに、この瞬間の彼らが本当にいとおしい。

この『レッドクリフPart1』、多少突っ込みどころはあるけれど(周瑜と嫁さんのラブシーン、必要ないのでは、それとも箸休め?)大満足した。

ああ早くPart2が観たい。

レッドクリフ Part1 オリジナル・サウンドトラック
レッドクリフ Part1 オリジナル・サウンドトラック

 

 

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