『おくりびと』『つみきのいえ』受賞で例年になく盛り上がった今年のアカデミー賞授賞式だが、私の関心はただ一つ、故ヒース・レジャーが助演男優賞をとれるかどうかだった。
思えば彼の名を記憶するようになったのは2005年。
アン・リー監督作品『ブロークバック・マウンテン』での、ヒース演じる無学で不器用な同性愛者イニスの悲しみは、今だに私の胸に残っている。
その年、彼はアカデミー主演男優賞にノミネートされたのだが惜しくも受賞は逃した。相手が「カポーティ」のフィリップ・シーモア・ホフマンだからまぁ仕方ないか。
でも彼は若いし(当時26歳)、才能もあるからそのうちまたチャンスもあるだろうと思っていた。
だが昨年の1月22日。28歳の若さで急死した。
その半年後、映画館で見た『ダークナイト』のジョーカーに打ちのめされた。
そして今年のアカデミー助演男優賞受賞式。
「受賞はヒース・レジャー!」と発表の瞬間、ニヤリと笑い「当然だろ」と言わんばかりの大きな拍手をおくっていた同じくノミネートのマイケル・シャノン(『レボリューショナリー・ロード』で怪演)。
そばでは、やはりノミネートのフィリップ・シーモア・ホフマンが拍手を送っている。
祝福と哀悼と悔しさの入り混じった彼らの表情に、ああ、まさに名俳優たちだなと思う。
今年のアカデミー賞。大変盛り上がったけれど、終わってみれば、悲しみだけがつのってくるのはなぜだろう・・・。