ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2009年07月

お金の苦労は買ってでも・・

世の中は金だ不景気のせいか、私が勤める職場でも、就業時間カットや日数カットが日常的になってきた。

ただでさえ低い給料が下がるのは切実な問題なのだが、まずは生活防御策を考えねば。

ところで、太宰治の『斜陽』の中にこんな言葉がある。

ああ、お金がなくなるという事は、なんというおそろしい、みじめな、救いのない地獄だろう、と生まれてはじめて気がついた思いで、胸が一ぱいになり、あまりに苦しくて泣きたくても泣けず、人生の厳粛とは、こんな時の感じを言うのであろうか、身動き一つできない気持ちで、仰向けに寝たまま、私は石のように凝っとしていた。

旧華族の娘和子が、生まれて初めて直面する厳しい現実だが、今まで苦労知らずでのんびり過ごしてきたお嬢様ならば、そのショックは筆舌に尽くしがたいであろう。

さて、お金の苦労は出来ればしたくないものだが、それでもただ一つ、良い事がある。

金が悲劇を生むそれは本質的な悩み、解決できない苦しみを、一時でも忘れさせてくれる事だ。例えば・・

自分はなんてブスなんだ、しかも能力もないし、何の取り柄もない、最近、歳取って体のあちこちにガタが出てきたし、このまま無駄に歳取っていくだけ、何のために生きているのだか・・・・・。

こんな、考えてもしょうがない不毛な悩みなど、お金の苦労の前では、一瞬に消え去ってしまう。

お金の苦労は実に生々しく現実的でシンプル、だから最強なのだ。

そういえば聞いた話だが、女性の更年期障害の不定愁訴について、裕福な家庭の女性の方が、症状が出やすいらしい。

生活に追われ、四苦八苦している女性は、あまり不定愁訴を感じないという。

そう言えば私もどっぷり更年期世代だが、特有の症状、のぼせ、めまい、憂うつ、肩こりなど感じたこともない。

私の脳の危機管理センターが、「おまえ、それどころじゃねーだろ、とっとと働け!」と、サインを流しているのかも。

そんなわけで、お金の苦労って悪いことばかりじゃないと思う。もちろん程度によるが。

適当な負荷を背負いながら生きていく方が、自分には向いているのさ、と言い訳しながら、生きていこう!

斜陽 (角川文庫クラシックス)
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お金も欲しい、愛も欲しい

お金を稼ぐ事がいけないことでしょうか5月の連休にNHKドラマ『ハゲタカ』を観て以来、すっかり時季外れのハゲタカブームになってしまい、NHKドラマのDVDを購入し、リピートで観ている。

映画も見、ついに真山仁著の原作『ハゲタカ犠絏軸』『ハゲタカ蕎絏軸』4冊を読み倒してしまった。まさにハゲタカの餌食。

それにしても原作はなかなか読み応えがあった。

外資ファンドの敏腕マネージャー鷲津政彦が 、冷酷非道に企業買収をするふうに見せかけて、実はコテコテの人情話、男の情念てんこ盛りだった(そこがまた良いのだが)ドラマ版と違い、原作はよりクールでスケールがでかい。

あまりにでか過ぎて、日本の首相やアメリカ大統領も出てくるし、最後は収集がつかなくなるのではと思ったほどだ。

一緒に日本を買い占めましょう主人公のキャラも、ドラマ版の鷲津が、ストイックで繊細、女っ気なしなのに比べ、原作の鷲津はやたら女に手を出すし、貪欲で肉食系、ハゲタカというより、百獣の王、ライオンのようだ。

実名は出してないが『東鳩』『カネボウ』『富士通』『キャノン』とおぼしき企業の攻防戦も実に興味深い。

それにしても、昔はカネボウ化粧品、すきだったのになぁ。

さて、作者真山仁氏は、これが初の長編小説らしいが、張り切り過ぎて、キャラを詰め込み過ぎではという印象はある。

南朋くん鷲津が昔アメリカでジャズピアニストだったとか、とにかくあまりのスーパーマンぶりだが、彼の正義ぶらない、場合によっては汚い手も使う狡猾さが逆に気持ち良い。

いわば自分の中の正義だけを信じる潔さ、アンチヒーローぶりには惹かれる。

ところで『ハゲタカ恐軸』のラストは、・・・to be continuedで終わっている。

ああ、まだまだ「ハゲタカの餌食」は続くのか・・・・・。

ハゲタカ(上) (講談社文庫)
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ハゲタカ(下) (講談社文庫)
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満州開拓団の暑い夏

先日観た映画『戦場のレクイエム』で、中国、華東地方の旧炭鉱地を死守する兵士たちのシーンがあるが、それで思い出したのが、宮尾登美子著『朱夏』である。

この自伝的小説の中で、著者宮尾登美子とおぼしき女性、綾子は、終戦の時、満州にいたが、暴民に襲撃され、家族3人身一つで、命からがらやはり旧炭鉱地に逃げ込み、その後1年、引き揚げまでを無一物で過ごすのだ。

夫と生後7か月の乳飲み子を抱えた18歳の綾子は、夏物の着物を着たきりで引き揚げまでの一年間、一度も顔も洗わず口もゆすがず、もちろん風呂など入らない。

食事は一日2回の薄いコーリャン飯だけ。炭鉱労働に駆り出されている夫を待っている間、ボロをまとい、赤子を抱きながら、日がな一日、食べ物はないかと、目をぎらつかせていた。

元々この綾子、ずい分わがままで、しかも空気の読めない女だった。

高知で芸妓娼妓紹介業を営む家に生まれ、複雑な家庭環境で育った綾子は、17歳で教師の男と結婚するが、これは男が好きと言うよりも、恥ずべき実家から離れたかったからだと見てとれる。

教師の実家は農家で、寡婦である夫の母は、毎日畑で働いているが、嫁は一度も農作業を手伝ったことがない。

満州開拓団の学校を作るため、一足先に夫が満州に行き、姑と一緒に生活をしている時も、綾子は日がな家で、お腹の子供のため衣服を縫うだけで、鍬一つ持とうとしないし、姑も嫁の体を気遣って何もさせないばかりか、当時珍しい牛乳をわざわざ取り寄せてたりしている。

昭和19年、食料不足の折、農家の嫁としては破格の待遇の良さだと思うのだが、綾子は口には出さぬが不平たらたらで、早く退屈な田舎から飛び出して、夫のいる新天地、満州に行きたいと思っている。

やがて赤ん坊が生まれ、満州行きが決まると、綾子は大喜びで、自分の持ち物、嫁入り道具一切を満州に運び、大はしゃぎで家族3人、旅立っていく。

がらんどうになった家で、1人ぽつねんと哀しみに暮れる姑の気持ちなど、いっさい気がつかないのだ。

そして満州でも、わがままは続く。
地元の中国人にあれこれと命令したり、小学校の生徒に、家の手伝いをさせたり、毎日違う着物を着て、歩き回ったり。教師の妻として、あるまじき行動だ。

衣装持ちの彼女は、いつも着たきりすずめの女教師に親切のつもりで着物を上げたりするのだが、それがどんなに人の心を傷つけるのか分からないのだ。

やがて終戦、一転して乞食生活を送る事になるのだが、 ここで初めて綾子は人生の複雑さと正面から向き合うことになる。

いわばこの物語は、わがまま一杯に育った娘が、苦難に遭い、それを乗り越ることで成長していく、一種の青春物語にも見えた。

おかしいことに、綾子たち開拓団の家族はボロをまとい、年中腹を空かせているのに、通りを隔てた社宅では、日本人が普通に白いご飯を食べている。

また街中に出れば、豊富とはいえないまでも、食料品や衣料品がそろっている。

そして綾子は街中で、偶然、実家の近くの貧しい裏長屋に住んでいて、娼婦に売られた女と出会う。

その女が結構羽振りの良い生活をしていると知った綾子は、勇気を奮い起して、彼女からお金を借りようと決心する。

果たしてプライドの高かった綾子が、子供のころ軽蔑していた娼婦の女に頭を下げることが出来るのか、このシーンにはドキドキした。

この物語には、関東軍や日本政府に対する恨み事など一切出てこない。

開拓団の人たちは、ただ粛々と不幸な運命を引き受けているようだ。

日本を捨てて満州に渡ったという負い目があるせいだろうか。

やがて、この激しい経験は綾子を変え、これをいつか娘に書き残してやろうと決心する。

作家、宮尾登美子の誕生である。

朱夏 (新潮文庫)
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兄貴の本懐

撤退ラッパ第二次世界大戦後の混乱した中国、毛沢東率いる人民解放軍と蒋介石の国民党軍の国共内戦を背景に、事実を基にした中国映画『戦場のレクイエム』を観た。

う〜ん、この邦題『戦場のレクイエム』がいまいちピンとこない。やはり原題通り『集結号』(撤退ラッパとでも言おうか)のほうが良い。

映画の主人公、人民解放軍のグー・ズーティはこのラッパのために10年近く放浪することになるのだから。

さて物語は前半が激しい内戦の様子、そして後半は、47人の部下を亡くした中隊長のグーが、部下の名誉を回復するために奔走する姿を描いている。

グー中隊長は荒っぽいところもあるが頼りがいのある、部下にとっては兄貴のような存在だ。

兄貴ィ〜情にも厚く、初めての戦場でびびっておしっこを漏らしたかどで軍法会議にかけられ房に入れられている元教師の男を、自分の隊に引き入れたりする。(それにしても当時の中国って、おしっこ漏らしたくらいで投獄するのか・・・)

戦況は厳しくなり、グー率いる部隊は最前線の旧炭鉱の死守を命じられる。

「撤退ラッパが鳴るまで、たとえ1人になっても戦い続けろ」という上官の命令に従い、グーの部隊は勇敢に戦う。

びびっていた元教師ワンも、いつの間にかたくましい兵士となり、仲間と一緒に雄々しく敵に立ち向かうが、撤退ラッパは聞こえないまま、部下47人すべて戦死する。

無名戦士の墓標一人生き残ったグーは、戦中戦後のどさくさで勇敢に戦った亡き部下たちが、失踪者扱いにされていることを知る。そして元教師ワンの未亡人から、ワンが不名誉の死に方をしたと村で噂になり、辛い思いをしていると聞き怒りに震える。

そして部下の名誉を回復させるため、たった一人の戦いが始まる・・・・。

まず圧巻だったのは戦闘シーンだ。市街戦や淮河の旧炭鉱での激戦など、『プライベート・ライアン』を彷彿させる生々しさだ。

また塹壕戦や戦車が多く出てくるなど、第一次世界大戦の西部戦線を想像させる。

映像自体がブルーのフィルターを通しているような印象で、クォリティの高さを感じた。

そしてこのグーという男。ちょっと竹中直人に似ているが、理想的な兄貴だ。

「生きて虜囚の辱めを受けず」なんてせこい小さい考えなんか持たない。

部下の名誉を守るためなら、生き恥をさらし、泥まみれになっても構わないと腹をくくっている。

また、朝鮮戦争に義勇軍として参加した時、地雷を踏んだ兵士の命を助け、のち少佐になったその男と、ワンの未亡人の仲を取り持ち、恋のキューピットになるなど、可愛いところもある。

この映画には、イデオロギーや主義主張など一切語られていない。「毛沢東」という言葉も出てこない(写真は出てくるが)

あくまでも庶民の目線による戦争映画なのだ。

そしてラスト、ラッパが鳴り渡り、グーの戦争はやっと終わるのだ・・・。

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優しい男

2009年も半分が過ぎた。

今年は例年より読書量も映画を観る回数も多いのに、ブログはさっぱり更新されず。何故なんだ。

ブログにアップする時間があったらその分、たくさん活字を読みたいから?何を焦ってるんだ自分。余命何年だ。

そしてしょこたん@中川勝彦の娘、別な意味で何を焦っているんだ。

ま、それはともかく、NHKドラマ『ハゲタカ』に、遅ればせながらはまって以来、主人公、鷲津政彦を演じた大森南朋クンが出演した映画やドラマのDVDを観ている。

驚いたことに、大半の作品はすでに見てるのに、大森クンとは全然気が付かなかった。

作品によってガラリと雰囲気が変わる。カメレオン俳優と言うより、感性が素直で柔らかくて、どんな役柄にもナチュラルに溶け込むことが出来ヴァイブレータるのだろう。

そんな作品のひとつ『ヴァイブレータ』を観た。

これは赤坂真理の同名小説を映画化したもので、大森君は金髪の長距離トラックの兄ちゃん、そして寺島しのぶがアル中でメンヘルぎみの30女を演じている。

さて、世界で一番優しい男とはどんなやつか。

それは、コンビニで見つけた、いわくありげな女を、トラックの助手席に乗せ、ハンドルを握りながら、くだらないホラ話を延々と聞かせてくれる男だ。

そしてトラックは、東京から、まだ雪の残る新潟へと向かう。

次々と移り変わる風景、体を包み込むトラックの振動。女の素性を聞こうともせず、バカ話を続ける男の声が心地よい。

そしてこれが重要だが、男は自分の優しさを全く自覚していない。

2人だけの空間そして女は、彼の本能的な優しさを、頭ではなく体で感じている。

突然パニックにおちいり、嘔吐する女。そして助けようとする男に向かって「さわらないで!!」と叫び悪態をつく。

なすすべもなく、途方にくれた男の表情が、また女には嬉しいのだな。

やがて、春まだ浅い日本海沿いを走ったトラックは東京に戻り、2人の旅も終わりを告げる。

この別れがまた切ない。

思うに男は、統合失調症気味の女の、妄想だったのかもしれない。

でも寺島しのぶ演じる女は自分の意志で、トラックを降りるのだ。

最後の静かな笑顔が美しい。

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