ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2010年01月

変わるもの変わらないもの

佐々木譲著『警官の血』は、ミステリーとしてはいまいち盛り上がりに欠ける気がするが、時代の雰囲気、特に戦後間もない下町の情景や、安保闘争の頃の学生たちの高揚ぶりは、心に残った。

まるで祖父や老父母から体験談を聞かされているような時代の匂いを感じるが、それが昭和の終わり以降になると、途端に匂いが消えてしまう。

ウミガメ私が下巻を読んでいて、どうも気分が乗らなかったのはそのせいもあるだろう。

現在は時代の匂いを感じられないのか、それとも「無臭」が今の時代の「匂い」なのか?

さて、この物語の重要なモチーフに『同性愛』がある。

初代警察官清二は、戦後の上野公園などでそんな人たちと関わっている。
上野公園がいわゆる「ハッテン場」だったのだろう。

確か三島由紀夫著『禁色』でも同性愛者である主人公が、上野公園あたりで自分と同類を見つけ、ぎょっとするシーンがあった。

そして、戦後そのような性癖を持つ人が多かった理由に『戦争』がある。

そう言えば昔、テレビを見ていて新宿のおかまバーのママの話を聞いた事がある。
そのママは、太平洋戦争で徴兵された時、兵舎で同性愛に目覚め、それからは毎日ウハウハ、バラ色の人生だったという(確かに周りは若い男ばかりだし)

その味が忘れられず、今でも「また戦争起きないかな、わくわく」と願っていると語っていたが、『警官の血』における「同性愛」のきっかけはそんな笑い話どころではない、悲惨な体験が男たちを一変させたのだ。

また多くの同性愛者は、おかまバーのママと違って、その性癖を恥じ、隠していたと思われ、それがこの物語でも悲劇を呼んだのだ。

現在はカミングアウトする人も増え、中にはアイドルやカリスマタレントがいて、彼らは時代の寵児となっている。

そういった「同性愛」に対する変化や理解も描いてほしかったなぁ、と、直木賞作家に向かって偉そうに語ったりしてみる。

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祝直木賞

佐々木譲著『警官の血』下巻を読み終えた。

実は途中まで、この作品、読みあぐねていたと言うか、やや退屈だったのだ。

それは物語があまりに淡々と進んでいくのと、主人公たちのキャラの希薄さ、何を考えているのかわからない存在感の薄さからだ。

上巻の時、「果たして2代目警察官、民雄は、夢だった駐在所勤務になれるだろうか!?」などと書いていたが、下巻の冒頭、いきなり彼は駐在所勤務に就いている。

それから彼は殉職するまでの7年間、忠実に勤務をこなす。
精神的にも安定し、家族との関係も回復してきた。

まさに順風満帆な人生だ。

だから尚更民雄が、父の死の真相を執拗に調べているのに違和感を感じるのだ。

彼の父親は殉職ではないが、さりとて不名誉な死という訳でもない。

その動機の希薄さは3代目、和也にも通じる。

あまり父と良い関係を築いてなかった彼が、名門大学を出ながらノンキャリアの警察官になった理由も希薄だし、その後の彼の行動もずい分淡々としている。

和也はその血筋を買われ、若いころの父とは真逆の任務を言い渡されるのだが、彼は、かつての父と違って思い悩む様子もなく、粛々とその任務をこなしていく。その様は、時に冷血人間のようだ。

だがラスト、祖父と父の死の真相を知った時、和也は彼らの呪縛から解放される。それと共に、淡々としていたかに思えた物語に、一気に温かい血が流れるのを感じる。

ああ、これが『警官の血』なのか・・・・。

正義感と要領の良さと、温かさを兼ね備えた警察官、安城和也の誕生である。

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可笑しゅうてやがて哀しき月の路

バッドツァーマイケル・ジャクソンが主演・総指揮の映画『ムーンウォーカー』を観た。

先月WOWOWで放映されていたものを、友人が録画してくれてたのだ。

しかし私、20年ほど前、すでにこの作品を劇場で見ていたのであった。ああ、若気の至りと言うべきか。

そして当時、映画を観た直後の頭の中は、思い切り
「はぁ〜〜〜???」であった。

内容のあまりのトホホさというかトンデモさに腰が抜けるほど脱力し、その後ふつふつと怒りが沸いてくる。

「マイケル、売れてるからってちと天狗になってんじゃないの、何これ、映画をなめ過ぎ!!」

ちびBADとあの頃、飛ぶ鳥を落とす勢いだったマイケルを、誰も止める事が出来なかったのだろう。そして出来た作品は、シュールといえば聞こえがいいが、意味不明な不思議ワールドだった。

そんな訳で20年間『ムーンウォーカー』は私の中で封印していたのだが、もうマイケルはいないし、このさい追悼の意味でもう一度観ようと思ったのだ。

・・・・・・で、観終わったんですけど・・・・・。

いやぁ、これがめちゃ面白くてハマってしまって、今リピートで観てる途中なんですよ!!(ああ情けない)

まず冒頭に『マン・イン・ザミラー』のライヴ映像、それからジャクソン5からの彼の半生が結構長く続き、はてこれは追悼映画だったかと見紛うほどで、懐かしい映像にほろりとし、ああマイケルってやっぱJ5の時が一番歌が上手いわねぇと再確認したり。

その後いよいよマイケル登場。ファンや警察に追いかけられたり、子供たちと野原で戯れたり、悪の組織のアジトに乗り込んで殺されそうになったりします。
スムクリ途中、酒場でダンスを踊ったり、子供が悪の組織にさらわれたりしますが、最後はロボットに変身して悪者をやっつけます。(小学生の作文調)。

突っ込みどころがあり過ぎてどうしようもない寸劇、もとい学芸会、もとい映画ですが、若くて美しく幸せそうなマイケルの姿を見るだけで、今はもう満足です。

でもやはりこれは失敗作ですね。

マイケル・ジャクソンは子供なんです。だれかちゃんと叱ってくれる大人はいなかったんでしょうか。

そんな訳で今からリピートの続きを見ますので、(ああ、情けない)

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潜入捜査は命懸け

佐々木譲著『警官の血 上巻』の中で、初代の安城清二は、二つの迷宮入りした殺人事件を、ひそかに調べていた。

一つは不忍池で殺された若い男娼、もう一つは谷中の墓地で殺されていた16歳の国鉄組合員。

調べているうち、彼らには共通点があるのに清二は気づいた。
まずどちらも警察と接触していた様子がある事。そして二人とも色白の美青年(美少年)だったこと。
う〜ん、アンタッチャブルな匂いがぷんぷんするぞ〜。

さて、長男の民雄は高校卒業後、憧れの父の背中を追って、警察学校に入学する。彼の夢は父と同じような駐在所勤務の制服警官になる事だ。

ところがある日、公安部の課長が民雄の前にやってきて、彼に北海道大学を受験するよう命じる。

公安は彼の資質を見抜き、過激派の潜入捜査官として抜擢したのだ。

そのシーンに私は思わず、大好きな香港映画『インファナル・アフェア(無間地獄)』を思い出した。

その映画は、警察学校の生徒であった主人公のヤンが、その優秀さを買われ、潜入捜査官として10年間ヤクザの世界に身を置く物語だ。

しかし、いくら香港映画でも生徒をいきなり潜入させて10年間も働かせるなんて、乱暴過ぎー、設定に無理あり過ぎーと思ったものだが、まさか民雄が同じような目にあうなんて。

彼は命令に従い表向きは北大の学生として、過激派の行動に目を光らせるようになる。

だが民雄は苦しんでいた。新左翼の活動家の多くは真面目で誠実で、倫理観のある人たちだったから。

ノンポリ学生の方が、世の中をシニカルに見ている人が多い。親の金で贅沢をしながら路上生活者たちを嘲笑しバカにしている。

それに比べると活動家たちは、少なくとも貧しい人弱い人に対して優しく暖かだった。戦争を憎み貧困や不平等に対して鋭敏だ。

その感じ私も分かる気がする。

私は子供のころリアルタイムで、よど号事件や浅間山荘事件、テルアビブ空港乱射事件など見聞きしているので、過激派の連中に対する嫌悪感は強い。

しかし、色々調べてみると、例えば重信房子や浅間山荘でリンチ死した遠山美枝子など、工場で働きながら夜間大学に通い、良い世の中にして子供たちに残したいと願っていたという。

素晴らしい世の中にしたいと願った彼らが、なぜ結果的にお互い殺しあうようになってしまったのか・・・・。

ちと脱線したが、とにかく活動家たちは純情で誠実な人が多かった。

自分を信頼している彼らを騙している事が心の重荷になる。だが彼は悩みながらも忠実に潜入活動を続けた。

民雄は事あるごとに潜入を解いてくれるよう頼んだが、北大卒業時の昭和47年当時、赤軍派の活動は活発で、北大出身で、表向き逮捕歴のある民雄は、貴重な存在だったのだ。

結局7年間潜入を続けた彼は、解かれた時にはもう神経がぼろぼろだった。

自分のアイデンティティが分からない。不安神経症で診療科の治療が必要だった。常に人の視線が気になり、物音に怯える。

そんな状態で駐在所の警察官になれるはずもない。書類仕事ばかりでイライラは募る。

とうとう彼は家で暴力を振るうようになる。そして子供の前で妻を殴って怪我をさせるのだ。

何ということだろう。地元民に信頼される駐在所の警察官になるのが夢だったのに、今の自分は家族からも軽蔑や憐みの目で見られている。

そんな彼にある日、亡父の同僚からある情報が入ってきた。

父が二つの殺人事件を追っていたという事実を民雄は初めて知る。

彼は父の死の真相を知る事が出来るだろうか。そして夢に見た駐在所勤務は叶うのか・・・・・・続く(未定)

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駐在さんは大忙し

以前から気になっていた佐々木譲著『警官の血 上巻』を、文庫版が出たのを機会に読んでみた。

この著者の、地に足のついた、かつエンターティメント性に溢れた警察小説は大好きだ。

007物語は、親・子・孫三代と警察官を務めた3人の男の生き様と、彼らの目から見える戦後の日本、時代とともに変わっていくもの、変わらないもの、いわば定点観測による近代日本史とも言えようか。

さてまず初代、昭和23年、帝銀事件が世間を驚かせていた頃、東京に住む結婚したばかりの安城清二は警察官を志す。理由は身も蓋もない話だが、食べていくため。

このあたりの描写がうまい。日本全体が貧しかった頃の、新婚夫婦の慎ましやかな暮らしぶり、食糧不足のため、やつれていても健気にお互いを思いやる夫婦の姿に心が染みる。

やがて、誠実で人情味あふれた彼は任務に精勤し、仕事仲間や地元の人からも慕われるようになる。

闇市、浮浪者、戦災孤児、愚連隊、女娼、男娼、ヒロポン中毒etc・・・。
警察の仕事は多岐に渡り、激務であった。

ちなみに戦後の混乱期のこの時期、警視庁の全警察官には拳銃が支給されている、S&W45口径、重さは本体だけで千二百グラム。
常に携帯が義務づけられ、必要とあれば躊躇なく撃てと何度も通達されているのが今と違って興味深い。

そして昭和32年、35歳になった時、清二は念願であった駐在所勤務になるが、3ヶ月後、駐在所の近くの天王寺五重塔が炎上した夜、現場からふいと消え、早朝国鉄の線路で死体となって発見される。

実は彼は、お宮入りしたある殺人事件の犯人を追っていたのだが、それを知る者はいない。

五重塔炎上のさい、持ち場を離れていたことから、殉職と認められず警察葬ともならず、残された妻と二人の幼い男の子は、その後貧しい生活を余儀なくされる。

亡き父の同僚たちの援助によって高校を卒業した長男民雄は、同じ警察官を目指す。幼い時から父の制服の背中を見て育った彼は、地元の人々から慕われている姿に憧れていたのだ。できれば同じ、駐在所勤務を望んでいた。
それともう一つ、父の死の真相、ろくに調査もされず、「事故死」とされた父の死について知りたかった。

昭和42年、警視庁警察学校に入る民雄だが、彼には父以上に過酷な人生が待ち受けていたのだ・・・・・。続く。

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虎年快楽!

皆さま、明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします白い帆船

昨年は、後半から読書の量が大幅に減り、とくに最後の2カ月は殆ど読んでない状態でお恥ずかしい限り。今年は読むぞ!

絵の勉強も精を出さねばと思うのだが、自分で「ああ下手くそだな、才能ゼロじゃん自分」と落ち込みつつ描き続けるのはちと辛い。せめてブログにアップ出来るほどには上達したいと思うが。

ところで今年のお節料理だが、これがなかなか好評。
老父からは「お節は縁起もので、そんなにうまいものじゃない」と毎年けなされ、このじじぃめ〜と例年イラっとしていたが、今日なぜか「おいしいおいしい」と、お代わりして食べたのには驚いた。(メニューは定番なのに)
味の好みが変わったのか、それとも単にボケたのか〜。

suzukiさて読書において、今まで雑食系だったが、もうそろそろジャンルを決めた方が良いかなと思っている。時間も体力も限りあるし。とりあえず日本の歴史、それとアメリカの人種問題(これはマイケルの事も絡んでいるけど)について学んでいきたい。

今年は冬季オリンピックとサッカーワールドカップがあり楽しみだ。不況不況と言いながらも日常に楽しみは溢れている。

これからも、日々小さな楽しみを見つけていきたい。

 

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