最近「死」についてよく考える。
どんな最期を迎えるのか想像するのは楽しい。
これまでの人生がままならないものだったので、せめて「死」だけは自分の理想的なものでありたいと願うが、これまた難しい。
何より「死の恐怖」に打ち勝つ事が出来るかが問題だ。
突発的な事故以外は、死はジワリジワリとやってくる。
「恐怖」を乗り越え、穏やかに死を迎えられる瞬間が果たして自分に訪れるだろうか。
さて、『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』というドイツ映画のDVDを観た。
内容は、
病院で同室となったマーチンとルディは、それぞれ骨肉腫と脳腫瘍を患った末期の患者だ。
おとなしそうな青年ルディの「海を見た事がない」という言葉に、ヤンチャな男マーチンが反応、やがて意気投合し、二人して病室を抜け出し、ベンツを盗み、まっしぐらに海に向かうはず・・・・・だった。
だがその盗んだベンツはギャングのもので、しかもトランクには大金がはいっており、途中やむなく強盗を犯した二人の末期患者は、ギャングと警察両方に追われながらも海に向かうのだった・・・・。
いやぁ面白かった、素晴らしいロードムービーだ。
徹頭徹尾、無駄のないスタイリッシュな映像、登場人物全てに味があり、科白の一つ一つが小気味よく、ビターなユーモアに溢れている。
ややタランティーノぽかったりするが彼ほど調子に乗ったりはしない。
そして音楽のセンスも渋い。
映画の長さも90分とコンパクトで、テンポの良い展開とユーモアに、くすっと笑ったり、しんみりしてるうちにラストを迎える。
何より良いなと思うのは、二人の末期患者の青年について、その素性やどんな人生を送っていたのか一切言及していない点だ。
家族がいるのか、結婚しているのかも分からない。
そして病気を恨んでいないこと。
彼らの心はただ「海を見る」の一点に収斂している。
だがその目的を果たしてしまったら。
「死の恐怖」を「海を見る」ということに置き換えていた彼らは、目的を果たした後、どうなってしまうのだろうか・・・・・。
そして迎えたラストの何とも深遠で、かつ清々しいこと。うらやましい。
とりあえず、持つべきものは運転免許証と友達ですね。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア デジタルニューマスター [DVD]
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