ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2010年04月

トイレは満天の星の下で

曽野綾子著『貧困の光景』を読んだ。

長らく日本財団の会長を務めていた氏は、アフリカを始め世界中の最貧困地区を訪れ、その凄まじい貧しさをつぶさに見、体験した事をこの本に綴っている。

その生々しい体験談には衝撃を受けたし、過酷な状況の中、現地で働く神父やシスターの崇高な姿には素直に感動したが、気になったのは、著者がやたらと日本を引き合いに出すことだ。

言わく、貧困国に比べて、「日本は何も知らない」「甘えている」「恵まれすぎている」「日本は格差社会と言われてるようだが、彼らに比べたら天国だ・・・」「文句を言う人は、干ばつのアフリカで生活してみたら〜」など、いちいち、うざくてたまらない。

日本が戦後貧しかったころ、聖心女子大に入学し、夫婦とも作家のあなたに言われたくないわ。

曽野綾子さん、きっと真摯で真面目な人なんだろうけど、融通が利かないというか頑固というか・・・・・。

お嬢様育ちの人って時としてすごいエネルギーを発揮することがあるけど、(澤田美喜とかオノ・ヨーコとか)思い込みが激しいのは困りもの。

確かに今日食べるものがない最貧国の人たちの生活は過酷だ。でも私は、それが不幸とは思えないのだ。

生まれたときからそんな暮しだったら、そう言うものとして自然に受け入れているのではないか。

食べ物にありつき、家族が一日無事生き延びることが彼らの唯一、そして最大の人生の目的であり喜びなのだ。

子供はすぐに死んでしまうもの。だからたくさん産んで一人か二人生き延びれば良しとしよう。

HIVに感染した子には食べ物はやらない。可哀そうだがその分を元気な子にあげたほうが、生き延びてくれる確率が高くなるから。

達観しているというか、シンプルでクールな人生観は、我々文明人とか呼ばれる人種にはない、彼らだけの特権だ。

この本の中に出てくるが、ピグニー族の話、好きだ。

教会のシスターたちの尽力で、森に小屋を建て学校を作り、ピグニーの子供たちを通わせているのだが、著者はつぶやく。

(ピグニーの)森は蛍の光に溢れているという。人が歩く時は蛍の光の波をかき分けて行くのだという。そういう土地の空気の清浄さは、私の経験ではアフリカの田舎にしかない。それはいつも言うように、一度も人の肺臓にも車のエンジンにも入ったことがないことを如実に物語っている、清らかで強烈な生気に溢れた空気なのだ。

そんな環境で育った子供たちが、どうして町に下りて来て、難しい算数を習いながら臭い部屋で寝起きをしなければならないのだ。〜
水道が出るとか、テレビが見られるとか言うが、そんなものは一切なしで生きて来て、何も困らないことを、既に彼らは子供ながら体験済みなのだ。彼らの世界は、何がなくてもみごとに完結していたのだ。

ここの所、賛成だなぁ。なにが幸せなのか、それは分からない。中途半端な情報や知識が、ピグニーの彼らを逆に不幸にするかもしれないし。

それにしても曽野さん、嘘のつけないひとだなぁ。またこの本の中で、思いっきり、寄付のお金は大半が地位のある役人警察らが使い込み、必要な人たちにはほとんど届かないって、そんなこと書いたら寄付する人が減るだろうに。

愛憎相半ばするが、曽野さんは信頼できる人には違いない。

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疾走する街

星野博美著『転がる香港に苔は生えない』を読んだ。

これは、香港が英国の統治下から中国に返還される瞬間を身を持って体験したいがため、著者が2年間、当地で暮した日々を描いたものだ。

その頃、星野氏は30歳のカメラマン。就学ビザで香港入りし、語学学校に通いながら、猥雑な下町の、油断すればトイレの汚水が逆流するような古いアパートで暮し始める。
そして、様々な人々と出会い、笑い、泣き、美しい青年に胸がキュンとしたり、あるいは香港人の強靭な生活力に驚いたり、その複雑な社会構造に頭を抱えたり・・・。

・・・だが読んでいてなぜかテンションが上がらない。決して面白くないわけじゃないんだが。

その理由の一つに、彼女がなぜそうまでして香港に関心を持つのか分からないというのがある。

元々この本、米原万里氏が『打ちのめされるようなすごい本』の中で紹介しており、私自身、香港に大変興味があるので、これは合うかなっと思ったのだ。

まあ香港に興味があるといっても、その知識はほとんど映画からだけど。

香港映画が大好きで、王家衛(ウォン・カーウァイ)作品を始め、香港ノアールからおしゃれな恋愛もの社会派ドラマまで、多くの作品を見るうちに、当地に対してかなりミーハーになってしまったようだ。

著者が香港に渡ったのが1996年8月。返還の一年前。

その頃、映画『恋する惑星』『天使の涙』などで、香港はちょっとした人気スポットになっていた。

そこに若い独身女性カメラマンがやって来て生活する、しかも語学学校の同級生のシスターたちは、有名な重慶マンションの近くに住んでたりするのだ。

途中、著者がカフェの若いウェイターにほのかな恋心を持つ場面もあって、あ、これは何か展開が〜と思ったが、とくに発展もせず。

作品自体は、とてもよくできたドキュメンタリーで、香港人のたくましさ、したたかさ、返還前夜の不安など、リアルで描かれていたが、香港に対して日本とは違う疾走感、ワクワク感を期待していた私には何か物足りない。

きっとこの星野博美さんって真面目な人なんだなと思いつつ読み進んでいるうちに、ある場面でハッとした。

1997年7月1日、返還の日、イギリス軍が去った後、中国から人民解放軍の軍用トラックが次々とやってくる。そして乗っている兵士たちは敬礼をしたまま微動だにしない。

そんな彼らに、思わず彼女は必死で手を振る。そして心情を吐露する。

「私は人民解放軍が好きだったということを」

そうか・・・・。

よく、知的な学生の部屋に、毛沢東やチェ・ゲバラのポスターが飾られていることがあるが、彼女もそんな社会主義に憧れていたことがあるのか・・・・・。

正直な告白が私には嬉しかった。彼女が中国、香港に強い関心を持つ理由も分かった。

社会主義に関心を持っていた著者と単なる香港ミーハーだった私。

スタート地点は全然違うが、そんなさまざまな人をも飲み込む香港はこれからどこに行くのだろう。

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