ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2010年10月

163年の愛

とてもチャーミングな映画を見た。アメリカ映画『フィリップ、きみを愛してる』。アイラブユー

内容は、詐欺と脱獄で、懲役163年の刑を受け、今も服役している実在の詐欺師、スティーヴンの物語だ。

IQ169の天才詐欺師の彼は、警察や裁判所などを相手に詐欺を、そして捕まれば、脱獄を繰り返すのだが、その目的はただ一つ、「恋人に逢うため」。

ゲイのスティーヴン(ジム・キャリー)は、保険金詐欺で服役していた刑務所で、フィリップ(ユアン・マクレガー)に出会い、一目惚れ。

それからはひたすらフィリップを喜ばせようと、遮二無二働き、詐欺を重ね、そして念願の2人だけのセレブな生活を実現させるのだが、やがて露見され、再び刑務所へ。

しかも欲のない優しい性格のフィリップは、スティーヴンが自分に嘘をついていた事ににショックを受け、もう会わないと宣言。
フィリップ彼の愛は空回り・・・・。

そこで、スティーヴンは、命を賭けた一世一代の大芝居をするのだが・・・・・。

さて、何といっても見どころは、フィリップ役のユアン・マクレガーだ。

ややメタボな体型に、もっさりした動き。服装も地味で(つか殆ど囚人服だが)、別にしなを作ったりしないのに、なぜか乙女チック満載なのだ。

普通のおっさんなのに、このほとばしる可愛らしさは一体なんだろう。

ジム・キャリーがかなりの熱演なので、逆にユアンのほんわかさが心に残るのだ。

それにしても「愛」って究極のモチベーションだなぁ。

これだけ人を愛し抜くことができたら、結果がどうであれ幸せな人生だと思う。

ところで懲役163年って・・・。人を殺したわけでもないのに。ただ普通の人より、頭が良すぎただけのことなのに。
アメリカの司法ってやっぱり分らん。

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世界はマイケルをどう見たか

マイケル・ジャクソンの全生涯を徹底調査した日記風ドキュメント
『マイケル・ジャクソン全記録1958-2009』を読んだ。

月明かりで散歩これは彼の人生を、時系列にそって、いつ、どこで何をしたかを淡々と追ったものだ。

偏見や同情や誇張もなく、ひたすら事実だけを書き連ねたこの本、つまり1958年8月29日、黒人家庭の7番目の子としてアメリカインディアナ州ゲイリーで生れた彼が、2009年7月7日の追悼式で、11歳の娘パリスから『これだけは言いたいです。お父さんは私たちが生れた時から今まで、ずっと最高の父親でした・・・パパ、愛してる』というはなむけのスピーチを受けるまでの50年をつづったものだ。

読み進むうちにその多忙さに驚かされる。新聞の社会欄によく「首相の日々」が載っているが、あれが40年以上続いたようなものだ。

幼いころから働きづくめ、世界中でライブを行い、毎日のように有名人に会い、毎日マスコミに追いかけられ、多くのファンに会い、世界中の子供たちの施設を訪問し続けたパフォーマー。

また巨額の契約を交わし、優秀な人材を雇い、一方解雇も辞さないという、冷徹なビジネスマンの顔も見せる。

後半ごろから、訴訟、裁判、検察という文字がやたら出てくるのがアメリカらしいというか、この本自体が、ひとつのアメリカ近代史のようだ。

そして、マイケルと私は同世代のせいか、思わぬ共通点に気がつく。

例えば、マイケルは1963年、幼稚園で、映画「サウンド・オブ・ミュージック」の中の「すべての山に登れ」を歌い大喝さいを浴びるが、私も幼稚園で「ドレミの歌」を歌っていた(だからどうした・・・)

またマイケルはTV番組の「三バカ大将」が好きだったそうだが、私もその番組が好きで、小学校から帰るとテレビで見ていた。

そんな訳で、マイケルの行動を時系列で追いながら、「ああ、この頃は私は何してたかなぁ」と過去をぼんやりと振り返るのが楽しみとなった。キング・オブ・ポップの行動と自分のを比べるなんて、不毛以外の何物でもないのだが・・・。

さて2005年の裁判で、無罪判決を受けて3ヶ月後、その舌の根も乾かぬうちに(この表現間違ってます)、マイケルは、ハリケーン「カトリーナ」の被災者のチャリティーをすると発表したが挫折。
そりゃ当然だろう、例の裁判費用は、莫大だったろうし、または彼の側近が「マイケルはん、いい加減にしなはれや」と進言したのかも。

事実をつづっただけだから、なおさら想像力を掻き立てられる。

マイケルに余計な修飾語は必要ないのだ。

マイケル・ジャクソン全記録 1958-2009
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ノーベル賞を利用する人たち

浅田次郎の中国歴史小説、『蒼穹の昴』の続編である『中原の虹』が、待望の文庫化されたので、早速1巻と2巻を読みふけった。

魅力的な満州の馬賊の長、張作霖は国の未来を変えることが出来るのか、西太后亡き後、黄昏の清国はいかに崩壊していくのか・・・・。

続きの3巻4巻は、今月の15日に刊行されるそうで、今は身もだえしながら待っている状態である。

浅田氏のけれん味のある文章には、いつも「うーん、あざといな」と思いつつのめり込んでしまう。

そんな訳で、身を持て余している時に耳に入った、中国人初のノーベル賞のニュース。
平和賞を受賞したのは民主活動家で、現在服役中の劉暁波さん。

・・・・なんだかすっきりしない。なぜ彼を平和賞に選んだのか。

もちろん、ノーベル賞委員会側には彼を選んだ正当な理由や経緯があるのだろうが、しかし・・・・。

理由は何であれ、本国で刑に服している人間を選ぶのはいかがなものか。あんたの国は、間違っていると喧嘩を売っているようなものではないか。

中国側は当然、弾圧や対抗措置をとるだろうし、それに対してノルウェー外相の「ノーベル賞委員会は政府から独立した組織だからー」という言葉もなんだかしらじらしい。

私自身は中国政府は大嫌いだが、今回のやり方は『ノーベル平和賞』という、いわば錦の御旗で、西欧の価値観を押し付けているようで不愉快なのだ。

確かに「民主化」とは耳触りの良い言葉だ。

だが、人口500万も満たないノルウェーと14億の中国を同じ土俵で考えるのはおかしい。

オバマ大統領らはこれを機会に、劉氏の釈放を、と言っているようだが、それは僭越というものだろう。

そんな訳で、何だかイラっとしている時に、今度は日本の受賞者の発言。

ノーベル化学賞に輝いた鈴木章北海道大名誉教授(80)は8日、産経新聞の取材に応じ、「日本の科学技術力は非常にレベルが高く、今後も維持していかねばならない」と強調した。昨年11月に政府の事業仕分けで注目された蓮舫行政刷新担当相の「2位じゃだめなんでしょうか」との発言については、「科学や技術を全く知らない人の言葉だ」とばっさり切り捨てた。(産経新聞)

ノーベル賞はかくも人を傲慢にさせるものなのか。

鈴木氏の言葉は、たぶんマスコミに誘導されて言わされたのかもしれないが、何だか、勝てば官軍というか、鬼の首を取ったような感じで、とても残念だ。

思うにノーベル賞ってそんなに凄いものなのか。

ノーベル賞に縁がなくても、立派な仕事をした人は世にたくさんいる。

たとえば、アフガニスタンで長年井戸掘りをしている中村哲氏とか。

いつか中村氏にはノーベル平和賞を取ってもらいたいなぁと思ってしまう私も、やっぱり権威主義者なのか・・・。

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