虎バターをたっぷり使ったホットケーキが出てくる『ちびくろサンボ』は、だれもが好きは童話だが、この作品について、今は亡き米原万里氏が、著書『旅行者の食卓』で、こんなことを書いている。

サンボはいわゆる黒人(ネイティブアフリカン)ではなく、インド人だったのだ。

『ちびくろサンボ』の著者は、英国人、ヘレン・バナーマンで、彼女は当時、夫と共に、植民地であったインドの奥地で、医療活動をしていたらしい。
そして離れて暮らしている子供たちのために絵手紙を送り、その中に、小さい男の子と虎のお話もあった。

その物語がやがて英国で絵本になり、世界中に翻訳された訳で、実際、作者ヘレンの描いた絵ではサンボはインド人の顔をしている。

それを日本の出版社がステレオタイプの、色が黒くてアフロヘアーの黒人に仕上げてしまったらしい。

確かに虎は、アジアのみで生息する動物だ。そしてホットケーキというのは、あのふかふかのパンケーキではなく、インド料理でおなじみのナンらしい。

そして虎バターと言うのも、インドでよく使う油脂、ギーとの事。

サンボが食べたのは、ナンだったのか。

ただ、無味無臭のナンだけを169枚も食べるのは考えにくい。
そうか、サンボは、それでカレーを食べたのだ。

インドの青い空、熱い風、黄色い虎。

サンボの赤いシャツ、青いズボン。日傘。

焼きたての香ばしいナンに付けた褐色のカレー。

出版社が原作に忠実であれば、また違った『ちびくろサンボ』が生まれたことだろう。そしてカレーはもとより、ナンも今以上に普及したにちがいない。

昼食にホットケーキを焼いて食べ、夕食にカレーを食した日曜の休日にふと浮かんだ妄想でした。

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ちびくろ・さんぼ
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