ある活字中毒者の日記

       神は細部に宿る

2011年03月

最強の家族

この数日間、伊坂幸太郎氏の著書を読み返している。
いや正確には、物語の中に出てくる仙台市の風景をながめているというべきか。(小説なのに眺めるというのも変な表現だが)

伊坂幸太郎氏の小説の舞台は、ほとんどが、彼の住んでいる仙台市である。

そんな訳で、彼の作品を読むにつれ、知らず知らずに、行ったことのない仙台市に対して、親しみを持つようになった。

ほどよい大きさの地方都市、派手さはないがセンスある街並み、木々が美しい緑あふれる街。

さわやかな北の都市に対する憧れは、いや増すばかり。

いつか当地を訪れて、伊坂ワールドを思い切り味わいたいと思いつつ叶わないままでいた。

それにしても、伊坂氏とご家族は、ご無事だろうか。

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走り続ける人

羊最近、村上春樹氏の短編をよく読むようになった。

以前は私、氏の小説は苦手で、まるで翻訳小説を読んでいるようなスカスカ感、地に足が着かない雰囲気にどうしてもなじめなかったのだ。

ただ、最近知り合った職場の人が村上ファンで、楽しそうに『海辺のカフカ』や『1Q84』を語っているのに触発され、この機会に再チャレンジしてみようと思ったのだ。

まずは短編から読み始めたのだが、これが、実に・・・・・面白かったのですね〜!

長編を読んでいた時に陥った空疎感もなく、その凝縮された世界、選び抜かれた日本語、これ以上ないと思われる比喩、ああもっとこの世界に浸りたい、と思った時には終わっている物語・・・・。

先週は『東京奇憚集』を読んだ。そして今、彼が自分自身のことについて語った『走ることについて語るときに僕の語ること』を読み終えたばかり。

この調子で村上作品を好きになれば、今まで知らなかった世界が味わえるかもしれない、楽しみだ。

さて、『走ることについて〜』だが、村上氏における「走ること」への比重の大きさに驚いた。

まるで彼の生活の中心は「走ること」で、小説を書くことは、ほんの余技のような気さえしてくる。

彼は「走ること」について、好きだとか情熱を持ってとかは一切言わず、日々の練習風景や、我が肉体のコンディションや、大会の様子や、走りながら移り変わる風景や心を、ただ淡々と描いている。

それは、専業主婦が、日々の家事日記や育児日記を書いているようだ。

どちらも継続が大事で、一度サボると修復するのに大変な労力がいるなど、共通点もある。

特に、初めて42キロ走った真夏のアテネの体験記など、その苦しさ、生々しさは、初めてのお産体験記のようだ。

ただこれだけ、終始、走ることやマラソンについてリアルに描きながらも、不思議と汗臭さを感じないのが、村上春樹の世界なんだよな。

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特別な1日

シングルマン1先日観た『英国王のスピーチ』が、物足りなかったなぁ、と思いながらビデオショップでふと見つけたDVDが、やはりコリン・ファース主演の『シングルマン』

この作品は去年、コリンが初アカデミー賞主演男優賞にノミネートされていたもので(あいにく受賞できなかったけど)、ぜひ劇場で観たかったが、私の住む地方では上映されなかったのだ。

地味なキャラのせいなのか、彼の映画は上映に恵まれない。

シングルマン2さて、肝心の内容だが、始まって1秒ですっかりとりこになった。まあその映像のスタイリッシュで美しいこと。

聞けば監督のトム・フォード氏は、著名なファッション・デザイナーで、グッチやサンローランなどのファッション・ブランド再生化の立役者でもあるという。

ストーリーは、1962年、キューバ危機の時代、最愛の恋人を事故で失ったゲイの大学教授が、死を決心した、その最後の1日を描いたものだ。

スペインか南米の映画と見紛うほどの、大胆で斬新な映像に負けないのが、コリンの静謐な演技だ。

シングルマン3愛する人を亡くした喪失感、哀しみ、怒り。
それだけではない。痛いほど感じている隣人らの蔑みの視線(当時ゲイは、まだ偏見が強かったと思われ)

穏やかな大学教授の風を装いながらも、その内心は察するに余りある。

正直、『英国王のスピーチ』よりもこの作品の方が何倍も好きだ。なぜアカデミー賞をとれなかったのだろう。

ところで、『シングルマン』には美青年が何人も出てくるのだが、その一人、ケニーという大学生。
どこかで見た顔だな、と思ってたら、なんと『アバウト・ア・ボーイ』で、いじめられっ子役を好演していたニコラス・ホルトではないか。

あのぱっとしないガキがこんな美しい青年に成長したなんて。

という訳で、内面的にも外面的にも、たいへん美しい映画でした。

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王様のレッスン

eikokuou私はふだん右利きだが、ハサミやカッター、歯ブラシなどは左手で使っている。

幼いころ左利きだったのを、親や先生から右に矯正されたのだが、図工や朝晩の歯磨きなどは、見過ごされたらしい。

今日観た映画『英国王のスピーチ』の中で、言語聴覚士が言っていた。吃音症の中には、幼児期にムリやり右利きに矯正された人が多いと。

私の場合、吃音症にはならなかったが、それ以来性格が暗くひねくれてしまった気がする。

戦争前夜どちらにしても人をムリに矯めるのは良くないと思う。

さて、『英国王のスピーチ』だが、アカデミー賞4部門受賞という快挙をなした。

私が特に嬉しかったのが、コリン・ファースの主演男優賞受賞だ。

思えば27年前、映画『アナザー・カントリー』で初めてコリンを見て以来ずっとファンだったのだが、地味なキャラのせいか、日本での上映作品が少なかったせいか、いまひとつぱっとしなかった。

そんな中、確実にキャリアを重ねて、このたびの快挙。まことに感慨深い。

スピーチところで、肝心の映画の内容だが、たいへん重厚で感動的だったが、あまりに王道すぎてどこか物足りなかった。

主人公のキャラが内向的で吃音に悩む国王なども、コリンにぴったりすぎる。
(ちなみに彼は昔『ひと月の夏』という映画で、戦争神経症でやはり吃音症の若者を好演している)

重厚で感動的、でも凡庸な作品というのが正直な印象だ

そんな訳で、以前見た『ソーシャル・ネットワーク』の方がアカデミー作品賞や監督賞にふさわしいのではと、いまだにfacebookも分からない私が言っている。

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