有川浩さん、という作家の存在は知っていた。
大変人気のある小説家で、ドラマ化された作品もあるが、私はまだ読んだことがなかった。

このたび『阪急電車』という小説を選んだのは、映画化されたのもあるが、何より解説を児玉清氏が書いているのに惹かれたのだ。

期待した通り、大変読みやすい。文章もウィットが効いてるし、関西弁の会話もチャーミングで、人気があるのもうなづける。

・・・・・でも、肝心の登場人物に魅力を感じないというか、感情移入が出来ない。

特に最悪なのが、美人OLの翔子。

同期入社の婚約者を、同じ会社の地味な同僚に寝取られた翔子は、恨みを晴らすため、ある行動をとる。

それは花嫁と見紛うような純白のドレスを着て、元婚約者と地味な同僚の、結婚披露宴に登場するというものだ。

このあたり、作者は翔子に対し、とても同情的だ。

だが、翔子のように美人でも人気者でも優秀でもない私は、彼女よりも婚約者を奪った地味な同僚のほうにシンパシーを感じてしまう。

どんなに弱い生命体でも、生き残るための戦略を持っている。

地味な同僚(この人、名前さえつけてもらってない)は、それを実行したに過ぎない。それも命懸けで。
油断していた翔子の方に抜かりがあったと言えよう。

それに気付かない翔子は、会社の人たちはみな自分の味方と信じているが、案外彼らは心の中で笑っているのかも。

思うに、この有川浩さんって人、ずっと陽の当たる人生を歩んできた人じゃないのかな。

弱い人、みっともない人、ダメな人に対する視線が画一的だ。

ところで、この作品の中で、好きなキャラは、伊藤さんというおばさん。

ブルジョワのおばさまたちのグループに馴染めず、彼女らの傍若無人さに思わず胃が痛くなってしまう小心者だ。

おばさんの世界でもこういったいじめられっ子体質の人っている。

この人にはどうか幸せになってほしい。

そんな訳で、せっかく児玉清さんがお勧めした有川さんだが、私には真っ直ぐすぎるかも。

阪急電車
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