冷蔵庫にお豆腐があると安心する。煮てよし焼いてよし、サラダにしても美味しいし、不意のお客様が来たら、とり合えず薬味を添えてお出しすることができる。
栄養価があって低カロリー、それでいて自己主張しない、よくできた嫁のようだ。
さて、九州地方はつゆ入りを迎えた。朝から雨が降り続いているが少し肌寒い。そんなときふと、池波正太郎の短編「梅雨の湯豆腐」を思い出した。
いわゆる仕事人(殺し屋)の彦次郎は、普段はひっそりと1人暮らしをしている。料理が好きで、梅雨冷えのある日、豆腐を買い求め、湯豆腐と焼き海苔で酒を楽しむ。
うーん、梅雨のジメッと寒い日に、湯豆腐あうだろうな、と思いつつも読者は、非情と思われた主人公の思いがけない人間性を見いだす。
湯豆腐ひとつで、あざやかに人の心を描き出す池波正太郎氏は、稀代の料理人だ。
梅安料理ごよみ
コメント
コメント一覧 (4)
冷えた木綿豆腐に醤油をさっとかけると、少しずつ、豆腐の中にしみこんでいき、表面に醤油の文様ができます。その文様の形で吉兆を占うのが「やっこ占い」なのですが、その教祖は私です。
ただし、アイディアだけで、そのあと、お酒を飲んでしまい、占い本はいつまでたっても1ページも完成しません。
トルコのコーヒー占いのような趣ですね。
料理屋についてまとめたエッセイもありますが、どうも蕎麦屋に力が入っていたので(いかにもですよね)、蕎麦にトラウマがある私を走らせるほどのお店はありませんでした。
トラウマだらけ、傷だらけの人生を進んでいくさなえでした。
私もあまり蕎麦は食しませんが、池波氏の書いたものには
良く出ますね。江戸文化なんでしょう。