0417街頭募金というのが、どうも苦手だ。駅前で、彼らの甲高い呼びかけを聞くと、いつも下を向いてそそくさと去っていく。もちろん寄付した事もない。

われながら心の狭いやつと思うのだが、これは私の癖で、あまりにあからさまに正義を押し付けられると、居たたまれなくなるのだ。

また「赤い羽根募金」というのもなじめない。その季節になるとよく国会議員が、嬉々として胸に羽根を付けているが、私はその気持ちがわからない。政治家だったらこんな「赤い羽根募金」なんか必要ない社会を作ったるわ、とは思わないのか。

さて、そんなわけで、このたびの“ライブ8”も興味を持てなかった。U2もスティングも好きなアーティストだが、他国に向って、アフリカへの債権を放棄しろだの援助を増やせだの、勝手な事いってんじゃねえよ。アーティストが政治に首を突っ込むと、どうしてこうも傲慢になるのだろうか。

だが私にも、好きなチャリティコンサートがひとつあった。ジョージ・ハリスンが呼びかけ人になった「バングラデッシュのコンサート」だ。

1971年、ビートルズ解散後、一番めざましい活躍をしていたのがこのジョージだ。ビートルズの中ではジョンとポールの陰で、おとなしいイケメンの男の子ってイメージだったが、ソロとなったとたん、彼らの重圧から逃れたせいか、三枚組みソロアルバムが大ヒットとなった。

その絶頂期に開かれたのがこの「バングラデッシュのコンサート」だ。ロックのチャリティコンサートはこれが世界で初めてではないだろうか。当時、「バングラデッシュ」てどこにあるのかと、社会科の世界地図を広げてみたものだ。だがそんな国はない。東パキスタンから独立したばかりで、まだ地図に載ってなかったのだ。

コンサートのきっかけは、東洋音楽に心酔していたジョージが「シタール」の師匠から、独立したばかりのバングラデッシュの貧困を聞き『何かしなければ』と思い立ったことから始まった。

メンツがとにかくすごいのだ。ジョージはもちろん、ボブ・ディラン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、レオン・ラッセル、バッド・フィンガー、その他諸々のメンバー。28歳の青年の純真は多くのアーティストの賛同を得た。

だが、青年は純粋すぎた。『何かしなければ』と思い、メンバーをかき集めたものの、具体的に何をどうアピールしたらよいかわけわからず、結局参加メンバーは豪華だが、コンサート自体はいまいちという評価を受けることになる。しかも収益金も着服されたり、その後ビデオ化についてもゴタゴタがあったようだ。

成功とはいえないチャリティコンサートだったが、でも私は好きだ。変なイデオロギーやスローガンもなく、ただ「何とかしたい」という気持ちだけで集まった人たち。そのお粗末さが愛おしいのだ。

あれから30年以上たち、バングラデシュは今も貧困である。そしてロックスターたちは弁説さわやかに、アジア・アフリカへの債権放棄や援助について演説している。自分は安全な場所にいて。

 

  


バングラデシュ・コンサート