0353私が小学生の時、家に目の見えない祖父がいた。ある日、わが家に初めてカラーテレビが来たとき、両親が祖父に「じいちゃん、カラーテレビが来たよ。色がついているんだよ」と話しかけているのを聞き、子供心に「何て残酷なことするの、目の見えないじいちゃんに向ってそんなこと・・」と思ったものだ。けれども祖父は「そうか、そうか」と、大変嬉しそうだった。

話は変わり、「黒の舟唄」などで有名な盲目の歌手、長谷川きよしさんの話にこんなのがあった。

ある時、長谷川きよしさんは、歌手の加藤登紀子さんらと沖縄に行き、グラスボートに乗って沖縄の海をめぐった。

透き通った海、美しい珊瑚礁やカラフルな魚たちに加藤さんらは感嘆したが、ふと同席の長谷川氏に気を使い、その美しさを声にしなかった。

後になってそのことを知った長谷川氏はこうつぶやいたという。

「何だ、そんなに美しいのなら言ってくれたら良かったのに。そうしたら僕にも見えたのに」

さて、実は今「読み聞かせボランティア初心者コース」に通っている。まだ大学の先生による座学が中心だが、もし将来できる事なら、目の不自由な方相手の、読み聞かせをさせてもらいたい。

自分勝手な都合だとは思う。けれど目の不自由な祖父に、何のいたわりの言葉もかけてやれなかった愚かな孫の罪滅ぼしだと思って、もし遠い将来、私の読み聞かせに立ち会った方は、寛大な心で受け入れていただきたい。

  

 
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