夏になると、人は海を求める。若い女の子も、脂ぎった野郎共も。

海に行く前日はそれこそワクワクして、女子は新しい水着とビーチサンダルを揃え、男子は車中の音楽セレクションに余念がない。

だが、そんなに楽しみにしていた海も、いざ着いてみると、始めのうちこそ歓声を上げるけど、015だんだん退屈になってくる。

小学生見たいに、しゃにむに泳ぐわけでもなく、海に一時間もいると体はべとべとしてくるし、婦女子は日焼けが気になる。

結局、昼ごはんに海の家のくそ不味いソース焼きそばとラムネを流し込み、しばらくボーとした後、なんとなく「ボチボチ帰ろうか・・」てな感じになる。

さて、そんなあるダラダラした海のひと時を過ごした、男女入れての6人グループ。

帰る準備をしている時、1人の男が海辺でビーチボールを拾った。スイカの縦じまがある、少し色あせたボールなのだが、なぜか空気がパンパンに入っている。

彼はそのままボールを抱えて車に乗り込んだ。運転席に座ると、それを後ろにポーンと投げ込む。後ろに座っている女の子たちがキャッキャッとバレーボールの真似事を始めた。

車は途中、スーパー銭湯に寄ったりしながら、ビーチビールを拾った男のマンションに到着した。さて今から宴会だ。

クーラーのきいた部屋でみんな飲んでいるとき、ふと1人の女の子が言った。「あれ、ボールがおかしい・・・」

見ると部屋の中央においてあったビーチボールが、大きくなったり、ちぢんだり、まるで生きているかのような呼吸の動きを見せ始めたのだ。部屋にいた全員凍りついた。

そしてボールはしばらく収縮運動を繰り返したあと、急に膨張を始めた。今にもはち切れそうになったボールは、時折ミシ、ミシと音さえ立てながら更に膨らみ続ける。女の子たちは震えながら耳を押さえていた。

その時!

 

「ぼくのボール、かってに持っていかないで」

突然、窓から3歳くらいのボーダーのTシャツを着た男の子があらわれ、自分より大きなボールを抱え込むと、再び窓の外へ消えていった。

 

・・・・しばらくして、1人の男が、部屋の持ち主の男に聞いた。

「知ってる子か?」

「いや知らない。つかこの部屋マンションの14階なのにどうやって来たんだ・・・・」

窓はロックしてある。

ふと見ると、ビーチボールが置いてあったところから窓にかけて濡れた跡がある。

たぶん「海の水」だろう。若者たちは、3歳の男の子の濡れた髪を思い出しながらも、なおしばらくは、呆然としていた。

 

教訓: 落ちているものを、むやみに持ち帰ってはいけません。