料理研究家の江上栄子さんは、江上家に嫁いだ時、お姑さんで、やはり料理家のトミさんから、「自分の好物は作っちゃダメよ」と言われたそうだ。
これは、常に食べる相手のことを第一に考えなさい、食べる人の身になりなさい、という教えが含まれている。

確かにどんなに料理の腕が上手でも、好みのものじゃなかったら意味がない。私の老父は醤油がドバっと入ったような濃い味付けが好きだ。丹念にだしをとった薄口のお吸い物など「まずい!」の一言で片付けられる。彼にとって料理上手な人とは、やたら醤油をたっぷり使う人なのだ。

そんなわけで、料理家は独りよがりではできない。常に人のことを思いやらなければ。そんな資質を持つ人が、政治の世界に入る事については私もやぶさかではない。

ただ、今度の衆議院選での藤野真紀子氏の立候補には疑問が残る。だって「私のような政治に関心がない人たちと、ティー・パーティーでもしながら、気楽に政治について語り合いましょう」って、おいおい、本人自ら政治に関心がない、って宣言してどうする。

自民のいわゆる「刺客」には、造反議員に一泡吹かせるためで、実際に当選されたら困るような人もまざっている気がする。ホリエモンや藤野氏などがそうだ。だがそんな人に限って思わぬ追い風で当選したりして・・。10年前の青島都知事の例もある。

もうすぐ秋、そして冬になればクリスマス、新年、バレンタインデー。お菓子研究家、藤野氏にとって書入れ時だ。政治活動などする暇はない。しかも生徒さんたちは裕福な家庭の奥様やお嬢様がほとんど。コンサバな女性は、政治に関わりを持ちたがらないので、当選する事で逆に人気が下落する恐れだってある。

たぶん国会議員のご主人から頼まれて断りきれずに、てのが本音だと思うが、この度の選択は失敗だと思う。

なぜなら、多くの女性が彼女に求めたのは、優雅にお菓子作りを楽しめる、純粋培養の、セレブな生き方にあったのだから。