風車何をトチ狂ったか、一時ドイツ語のチャレンジをしたことがある。当然三日坊主、「初級ドイツ語講座」を読むだけで終わったが、関口存男先生の書かれたその本で、ドイツ語文法の規則正しさ、整然とした美しさを知った。しかも発音が英語に比べて簡単だ。根気良く続ければ英語ダメ人間でも、ドイツ語はマスター出来るのでは、と妄想しながらも何も勉強していない私をどうにかしてくれ。

さて、映画「ヒトラー 〜最後の12日間〜」を見た。ヒトラー役のブルーノ・ガンツの演技が素晴らしく、あまりにイメージとピッタリだったせいか、映画を見終わった後、肝心のヒトラーの印象が薄く、かえって周囲の女性たち、エヴァ・ブラウンやゲッベルス夫人、若い女性秘書の方が心に残った。

それにしてもドイツの女性はしっかりした体躯で姿勢が大変良い。戦局は絶望的で明日をも知れない身の上なのに彼女たちは、ヒトラーの愛人、将校の妻、看護婦にいたるまで、みな背筋を伸ばし、堂々と歩く。
もちろん軍服姿の男性も凛々しい。うがった見方とは思うが、ゲッベルスの6人の子供達の天使のような可愛らしさを見るにつけても、当時のドイツ人的選民意識がわかるような気がした。

女性たちのヒトラーに忠誠を誓う様子もただ事ではない。実践に参加していない分、純粋に心酔しているのだ。日に日に崩壊していく総統に対し戸惑う男たちに比べ、女たちはますますのめり込んで行く。

ヒトラーの秘書だった女性は戦後、何も知らずに彼に忠誠を誓っていた自分を悔やんでいたようだが、それは仕方のないことじゃないのか。

なぜなら、常に正しい判断というのは後出しジャンケンみたいなものだから。当時の空気を知らない私は、永遠に彼らの行動を理解できないだろうし、またそれは幸せなことだと思っている。

ヒトラー 最期の12日間