「ロング・エンゲージメント」というフランス映画のDVDを見る。以前から見たいと思っていた作品だ。

だが問題があった。なんせ田舎モンの常として、外人の顔の区別がつかない。とくにフランス男はみな彫りの深い渋い顔立ちで(そう見えるのだ)、しかもひげを生やし、第一次世界大戦を象徴するトレンチコート(塹壕戦用の軍服)を全員着た日にゃ誰が誰だかサパーリわからん。
そして、監督があの「アメリ」を作ったジャン=ピエール・ジュネのせいか、映像のあちこちに、様々な小道具や伏線が散りばめられている。2回見て、やっと筋がわかったくらいだ。

でも苦労して見てよかった。素晴らしかった。

実は私、「アメリ」はあまり好きではない。確かに斬新な映像スタイルは魅力だったが、主人公の女の子のあまりのくどさ、しつこさと空想癖にうんざりして、見ている最中、イライラしどうしだったのだ。

だがこの作品では、逆にそのしつこい性格、空想癖が良い風に影響している。

恋人の消息を知るため親の遺産を使いまくり、周りの人々を翻弄し、あまつさえ自分の足が悪いのを、同情を引くための道具にしたり。

そんな、見ようによっては鼻持ちならない女だが、惨めな塹壕戦が繰り広げられる映像の中で、彼女のカラッとした気風は中和剤の役目を果たす。そして何度も繰り返される「おまじない」は、ともすれば崩れそうな心を支える手段なのだろう。

最後に特筆すべきはフランスの田舎の、信じられない美しさだ。あの光り輝く田園を見ると、奇跡ってあるかもしれないな、と思ってしまう。

ロング・エンゲージメント 特別版