ガーデン空にポッカリ浮かんだ14番目の月を眺めながら思う。イオリンは元気かな?

イオリンこと作家の藤原伊織氏。今年の春、食道癌で闘病中であることを、小説誌に寄稿して明らかにしていた。5年生存率20%というのは、かなり病状が進行しているのだろうか。

私は彼の小説が好きだ。正直、特別面白いわけでも、ストーリーがすごいわけでもないのだが、その文章を目で追うだけで、心が落ち着くというか、安らかな気分になる。極上のウイスキーのような文体だ。

小説には、都会育ちでインテリジェンスでありながら、慎ましくて、ちょっと時代遅れの男がよく出てくる。
場末の店で、キャベツを手早くきざんでカレー味のホットドックをつくる寡黙なバーテン。妻を亡くした後、世間の交渉を断ち、都心のあばら屋に引き込んでいる元天才画家。

彼らは無頼でありながら、押し付けがましくない優しさに溢れている。いかにも東京人でなければ描けない世界だ。

私が藤原氏の病状回復を願う理由はただ一つ。作品を読み続けたいから・・・・。

こんな勝手なファンの声も、大人の彼は、苦笑いしながらも受け入れてくれることだろう。

雪が降る