毎日新聞谷崎潤一郎著「細雪」の中に、ある医療事故の場面がある。四人姉妹の末っ子、妙子の恋人が中耳炎の手術を受けるのだが、なぜか術後に激しい足の痛みを訴え、やがて大たい部を切断されその後亡くなる。
原因は手術中のばい菌感染による脱疽との事。

初め読んだ時はびっくりし、やはり昭和初期の病院は、今と違って衛生状態が悪かったのね、お気の毒に、などと他人事のように思ったものだが・・・・・・・・。

 長崎大付属病院(長崎市)で胸部切開手術を受けた長崎市の男性(25)が、右脚を切断したのは医療ミスが原因として、約6400万円の損害補償を求めた訴訟の和解が長崎地裁で25日、成立した。大学側が男性に解決金約3500万円を支払う。

訴訟などによると、男性は98年8月、ろっ骨が内側に向く病状を矯正するため同病院で手術を受けた。術後、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が原因で呼吸困難となり、心肺補助装置のチューブを右脚に装着したが、血液循環が悪化してひざ部分が腐り始め、手術8日後に右大たい部で切断した。

原告側は「MRSA感染は執刀医のミスで肺の一部が傷ついたのが原因」と主張。病院側は「感染対策に落ち度はなかった」と反論していた。

地裁はMRSA感染について病院側の責任を問えないとしたうえで、術後管理の不適切さを認め、7月に和解案を提示していた。
10月26日 毎日新聞

'98年といば、その時男性は18歳、まだ高校生か。
まさか術後8日目に右大たい部を切断されるなんて、夢にも思わなかったろう。その時の絶望感、悲しみを思うと胸が痛む。
そしてその7年後やっと和解したわけだが、解決金がわずか3500万円。都心のマンション一部屋買ったら消えてしまう。
男性の受けた心の傷や、これからの長い人生に待ち受ける様々な障害を考えると、あまりにも金額が少ないのではないか。それともこれは「相場」なのか。

地裁は、病院側の責任を問えないとしているが、それなら我々は、病院でMRSAに感染しても、わずかのお涙金で耐え忍ばなければならないのか。

昭和初期の場末の医院ではなく、大学病院で起こったこの医療事故。
病院嫌いにますます拍車がかかりそうだ。