「リリー・フランキー」というイラストレーターがいることは、数年前から知っていた。サブカルチャー系の雑誌によくその絵やコラムが載っていたから。だが私は、ヘタウマっぽいその絵づらが好きになれず、フザケた名前と相まって、たぶんこいつは東京出身のこじゃれた野郎と決めこみ、彼の書かれたものを読もうなんて思いもしなかった。

さて、私の周囲で「リリー・フランキーの『東京タワー』はイイ!」という評判がたったのはここ最近。あのサブカル系の軽薄っぽいイラストレーターの書かれたものがなぜ?不思議に思って色々調べたところ、彼が私と同じ北九州市の出身で年代も近いのを知った(年は私の方が上だが)

早速本を買って読んでみる。これはリリー・フランキー氏とお母さんの自伝的物語だ。子供時代、家が豊かでなかったこと、父親が酒癖が悪かったことなど自分との共通点も多く、北九州、筑豊といった、過去の栄光を引きずり、ひたすら惰性で動くしかない街、生活保護を受けるのに少しのためらいもない人たちの中で暮らすことへの焦燥感など思わず、うなずいてしまった。

それにしてもこれほど徹頭徹尾、「オカン、オカン」と言っている物語もめずらしい。「母を訪ねて三千里」ならともかく、いい年をした男の母への愛を語った小説ってこれまであっただろうか。男は秘め事のように、母への愛をも隠しているのか、それともリリー・フランキー氏が特別なのか。女の私には謎だ。