初めて”数字”を意識したのはいつの頃だったか・・・・。

まだ4〜5歳の頃、数字の2をアヒルさん、3をお耳、4をヨットと覚えていた。帆を張ったヨットなど見たこともないのに、なぜ、4はヨットと覚えていたのか。たぶん絵本で知ったのだろう。そのせいか、今だに2には「かわいい」というイメージがあり、4はクールな感じがする。

さて、小川洋子さんの「博士の愛した数式」を読んだ。清冽で美しい物語だ。心優しい若い家政婦とその息子。そして80分しか記憶がもたない数学博士の心の交流。この博士がとても魅力的なのだ。
数学に熱中して身だしなみもかまわずうろつき回るさまは、映画「ビューティフル・マインド」のジョン・F・ナッシュ氏みたいだし、生まれて初めて野球観戦をした日、自分の知ってる限りのデータの数字をぶつぶつ唱える様子は、「レインマン」で自閉症患者を演じたダスティン・ホフマンのようだ。

だが、この博士はしたたかだ。奥が深い。可哀想な老人と思ったらとんだ肩透かしを食らう。
たとえ80分しか記憶がもたなくても、彼の数学に対する情熱は揺らぎはしないし、愛する人もいる。もちろんその人はあの若い家政婦ではない。

日常生活での数字の美しさに気づいた時、その人生は、レース編みのように、複雑に絡み合いながらも優雅さを放つ。