私のインドに対する知識はお粗末なものだ。人口密度の高さ、複雑な宗教、カースト制度、カシミール地方の争い、映画産業が盛ん、ITに強い、彫りの深い美男美女が多いなど・・・・

ジュンパ・ラリヒ著「停電の夜に」

まず著者の顔写真を見てその美しさに驚いた。スーパーモデルもかくや、と言う美貌である。ただそれは私がモンゴロイド系の日本人だから思うだけで、ベンガル人にはああいった顔立ちが普通なのかもしれない。

「停電の夜に」は短編集である。
アメリカのボストンに住む知的エリートの若夫婦たち、アメリカ女性と不倫する男、住む場所もなく郵便受けの下で寝る女、アメリカ文化とのギャップに悩む移民など。
日々の暮らしのなかの思いがけない悲劇や喜びを淡々と描いている。そして彼らはみな彫りの深い浅黒い肌の持ち主で、周りには白檀やスパイスの香り、インド更紗、シルクがまとわりついているのだ。
靴を脱いで家に上がる、日本では当り前のことが、この人の筆にかかると、まるでエキゾティックな習慣に思えてくるから不思議だ。

著者のまなざしには、どこにも相容れない悲しみが漂っている。インド人ではない、かといってアメリカ人ともいえない。
だが、自分は少数派であり、王道にはなれない事を甘受しつつも、誠実に生きている知的マイノリティの姿勢には、清々しいものを感じた。

停電の夜に