年の瀬も押しせまり、明日の仕事納めの後は、大掃除、買い物、お正月の準備、おせち作りなどを大車輪でやらなければならない。

でも活字と離れるのは嫌なので、食べ物が煮える間、お湯が沸く間、チョイチョイ読めるような気軽なエッセイや短編を台所に置いている。

今読んでいるのは稲葉なおと著「まだ見ぬホテルへ」だ。一編一編がほど良い短さで写真も美しく、ひと時の清涼剤となっている。
また、あのB’zのボーカル稲葉浩志はイトコで、文庫本の解説は彼が書いている。

内容は、一級建築士で建築プロデューサでもある氏が、20代後半から30代にかけ、薄給の身でありながら、素晴らしい一流ホテルへの憧れ、止みがたく、世界中の有名ホテルを周った体験が生き生きと語られている。

世界中を旅したといっても、彼は「深夜特急」の沢木耕太郎のような冒険者ではないし、一流のホテルを周ったといっても、邱永漢のような金持ちでもない。ごく平凡な青年だ。
平凡だが育ちの良い建築家希望の青年が、有名ホテルを訪ねて感動した事、戸惑ったことをごく素直に描いているので、読んでいるこっちの方も、彼と一緒に一流ホテルでびくびくしたり、思わぬ親切に胸が熱くなったりする。

彼の言うように、朝から晩まで観光地を駆けずり回るよりも、歴史のある一流ホテルで、それこそ一流のサーヴィスを受け、のんびり滞在する方が確かに楽しい。
染みのついた台所で本を読みつつ思う。いつか私にも、そんな贅沢な旅が出来るだろうか・・・・・。