G・ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』を読み終えた。以前、映画化されたものを観て、ぜひ原作も読みたいと思っていたのだが、「ガルシア=マルケス」と言うおごそかな響きの名前に、ちょっとびびっていたのだ。

でも、実際読み始めると夢中になり、気がつけば読み終っていた感じだ。

とにかく小説が映像的なのである。映画化された作品よりも映画的というか。そして何よりも濃い!作者は登場人物をすべて、それこそ通りすがりの牛乳屋のおかみさんに至るまでフル・ネームで呼ぶ。それがこの物語の人物ひとりひとりの重さになってあらわれる。

内容は、新婚初夜に、処女ではない事を理由に実家に追い返された娘の双子の兄たちが、処女を奪ったと思われる男を殺しに行く、その数時間を描いたものである。

今では映画の常套手段となっている、現在と過去が入れ替わったり場面が大胆に替わる(フラッシュバックとか、モンタージュ技法とかいうんだっけ)技法を小説にも使い、この町を挙げての惨劇をルポルタージュ風に描いている。

そう、この殺人は町を挙げてのお祭りなのだ。建前上はいけない事になっていても、人々は息を潜めて成り行きを見守っている。
双子の兄たちも、なんか嫌々殺しに出向いているのが見て取れる。やたら時間をとっては、自分たちの行動を止めてくれる人を待っているようだし。
そして殺された方も、垂れ下がった腸を押さえながら、近所の人に微笑みつつ自宅の玄関まで歩いている。なんかシュールである。

残酷でありながら妙に滑稽でもあり、最新の技法を用いながらも、どこか土着の匂いがする。

もっとガルシア=マルケスの本を読んでみたい。