「サルサ!」という映画のビデオを観た。単純に、今マイブームのキューバ音楽とダンスを堪能したかっただけだが、思いがけず内容が深く、かつ白人の傲慢さに、あらためて思いいった。

金髪碧眼の若き天才クラシックピアニスト、レミは、ショパンを捨て、長い間憬れていたキューバ音楽を目指し、ラテンバンドに参加する事を願うが、「客が求めているのはチョコレート色のキューバ人、バニラ色はいらない」と、仲間から嘲笑される。

そこで一発奮起、肌をチョコレート色に焼き、髪を染めひげを生やし、キューバ出身のムラート(白人と黒人の混血)になりすます。

確かにムラートに変身したレミ(通称モンゴ)は、驚くほどセクシーで、思わずドキッとしたが、その一方、なんだかなぁ〜という気持ちもしないではない。その姿に白人独特の上から見下ろす態度が垣間見られるのだ。(もちろんレミは全く意識はしていないが)

肌を黒くして胸をはだけたセクシーなシャツを着、たどたどしいフランス語でしゃべればOKなのだろうか。
そんなレミに、キューバ人の友だちの言葉は重い。
レミの「なぜいつもハッピーでいられるのか?」の質問に「幸せだと思っているのか。キューバ人になりたいのなら、苦しみは笑いで隠せ!」
さらに、「白人が黒人になりたいのか?黒人の苦労も知らないで」と、思わず本音を吐露したりする。

だが胸にひっかかった気持ちも、ラストシーンで吹っ飛んだ。そう、外見を捨てたとき、彼は本物のキューバ魂をつかんだのだ。

この作品の見所はもう一つ、伝説のキューバ人作曲家パレードが、離れ離れになった恋人と40年ぶりに邂逅し、二人でダンスを踊るシーンだ。
失われた長い年月をたぐり寄せるように、ゆっくりと、そして軽やかにステップを踏む、年老いた恋人たちのダンスの、しみじみと味わい深いこと・・・・。

この作曲家パレードの役をしている人、さぞや有名な俳優かと思いきや、なんと長年ユネスコで働いていた一般人で、演技は初めてだという。しかし、軽やかなダンスや、恋人やレミを見守る、暖かいまなざしなど、卓越した、かつ自然な演技には驚かされる。世界中には色々な人がいるものだ。

ラテンのリズムに身をゆだねる時、人はしばし理性を忘れ、本来の自分を取り戻す。たとえ年老いても、肌の色が違っていても・・・・。