学習障害(LD)という言葉が世間に認知されて久しい。005

他の人が簡単に出来る読み書きや算数が、どうしても出来ない。別に知能が低いわけではなく、潜在能力も持っているだろうに、勉強のスタート時点でつまずいてしまった彼らは、強い劣等感に苦しみながら子供時代を過ごす。
そんな辛い毎日の中で、その人の唯一のとりえが「美貌」だったら、イヤでもそれにしがみつくしかない。

『イン・ハー・シューズ』という映画で、キャメロン・ディアス扮するマギーは、そんな学習障害をかかえている。それにくわえて片付ける事が苦手な、いわゆる「片付けられない女」でもある。
計算や字を読むのが苦手な彼女は、簡単な仕事も出来ず、職を転々とせざるを得ない。

この映画は、よく「容姿は完璧だが男にだらしなく職を転々としている妹と、優秀な弁護士だが容姿にコンプレックスのある姉が云々・・・」と紹介されているが、トニー・コレット扮するお姉さん、意外と美人だし何やかんやいって結構男にもてる。第一素晴らしいキャリアを持っている。

そんなわけで私は、学歴やキャリアもなく美貌も衰えてきたマギーに、どうしても感情移入をしてしまう。

だから映画の後半、元大学教授の老人から「Aプラス、君は頭が良い」と誉められた時の、マギーの嬉しそうな表情は忘れられない。
きっと生まれて初めて「頭が良い」と誉められたのだろう。
その歓びは、やがてラストの美しい「詩」へとつながる。

コンプレックスが消えることはないだろう。でも、その苦しみを乗り越える勇気を持ったとき、きっと新しい人生が始まる。

イン・ハー・シューズ