私が映画を観るとき、求めているのはドキュメンタリーではない。

最近、特に戦争映画において、よりリアリティのある映像が多くなった。それはそれで意義のあることだが、目を覆いたくなるような残虐なシーンだけが「戦争」の本質ではないと思う私は、考えが甘いのだろうか。

さて、『戦場のアリア』という映画を観た。この頃のリアリティあふれる戦争映画に比べると甘いし、きれいごとに感じる場面もあったが、でも私は泣けた。そして胸が痛くなった。

第一次世界大戦時のヨーロッパ戦線。スコットランド・フランス連合軍と、ドイツ軍が塹壕の中で睨みあっている。お互い声が聞こえる距離。時はクリスマスイヴ。それぞれの兵士たちは皆疲れ切って、故郷への思慕がいやが上にも高まっている。

そこへ、スコットランド軍の塹壕からバグパイプの音色が聞こえ歌声が響く・・・・。やがてドイツ軍からも朗々たる歌声が流れ、そして・・・。

それぞれの軍の将校が話し合い、奇跡のクリスマス休戦が起こる。

黒人やアジア人が一切出てこない、金髪碧眼のクリスチャンたちだからこそ出来た奇跡で、現実にはありえないことだよなぁと考えつつも、ウイスキーを酌み交わし、お互いの妻の写真を見せ合う、素朴な兵士たちの姿には涙腺がゆるくなった。

だが、休戦の後、兵士たちには厳しい試練が待っていた。指令本部に知られ、ある将校は懲罰を受け、あるいはより激しい戦地に送られる。

さて私が印象に残ったのが、ドイツ将校がポツリと「私はユダヤ教徒なので、クリスマスは関係ないのだが・・・」と語る場面だ。
ああ、この人は、たとえこの戦争に生き残っても、その後さらに過酷な運命が待っているのだと知り、鳥肌が立った。

この映画はエンドロールも美しく、ロマンティックだ。
そして私は思う。たとえ甘ちゃんと言われても、人の心を信じたいと。

 

戦場のアリア