いきなり変な話で申し訳ないが、“女性が数人一緒にいると生理がうつる”という噂を聞いたことがある。本当だろうか、私は体験した事がないが。

もし真実なら、たとえば4人姉妹とかはどうなるんだろう。若草物語とか細雪の姉妹たちに一斉に月の障りが訪れるのは、想像するだに生々しい。

そして・・・、ヘビトンボの季節に自殺してしまった5人姉妹は、どうだったんだろう・・・。

「バージン・スーサイズ」というビデオを観た。ソフィア・コッポラのデビュー作品だ。彼女の2作目「ロスト・イン・トランスレーション」にはがっかりさせられたが、デビュー作品のこれは文句なく素晴らしい。

女性ならではの〜という言い回しは嫌いだが、この物語だけは思春期の少女を体験した監督じゃないと描けないだろう。夢のように美しく、だが見終わると必ずダウナーになる。

時代は70年代のアメリカ、金髪碧眼の美しい5人の姉妹は、厳格な両親の監視の下、デートをすることもままならず、近所の少年たちの熱っぽいまなざしを浴びながら暮らしている。

少年の目線で語られているせいか、この少女たちの周りは常にキラキラと輝き、まるで“処女オーラ”が取り付いているようだ。

少女たちは厳格な親に対し、とても従順だ。そして自己主張をすることもなく、母親が作ったお仕着せのブカブカのドレスを素直に着てはしゃいでいる。
たまに4女が、男の子に媚びる様子を見せるぐらいだ。

70年代といえば、フリーセックスが叫ばれ、フェミニズム活動が盛んになった時期なのに、この5人姉妹の周りだけ、まるで時が止まったように浮世離れしている。

4女の無断外泊が原因で、親から外出禁止を言い渡された少女たちに、少年たちが電話を掛けるシーンがあるが、一言もことばを交わさず、お互いのレコードを聞かせ合うだけなのが、あまりに古風で愛おしい。

なぜ5人姉妹は自殺してしまったのか、それは分らない。でも少年の目から見て、少女と言うものは、永遠に消え去る存在なのだろう・・・。