80年代、大好きだったテレビ番組があった。『特捜刑事 マイアミバイス』である。毎週楽しみにしていたものだ。

スタイリッシュな映像、最新の音楽、ファッション、車、ボート、魅力ある登場人物、フロリダの空と海の青さ。

だが、何と言っても主役のソニー・クロケットを演じたドン・ジョンソンのカッコよさに惹かれた。

いつも素肌にTシャツとジャケットをはおり、素足、そしてまなざしはあくまで優しい。

そう、暑いマイアミでありながら彼の顔はいつも涼しげで、汗を感じさせなかったのだ。

煙草を吸っては、吸がらをしょっちゅう道端に捨てるさまも、今となっては懐かしい思い出である。

さて、この『マイアミ・バイス』が映画になると聞いた時は、色めきたったものだが、主役のソニーがコリン・ファレルと知りちょっとひいた。

あのさらっとしたドン・ジョンソンに比べて濃い過ぎるキャラだ。しかも髭を生やしている。

で、ちょっと悩んだが、やはりマイアミファンとしては見ておくべきだろうと覚悟を決め、出かけた。

・・・そして観た感想としては・・・。映画自体はそんなに悪くはない。なかなか切れのある映像だ。携帯電話やパソコンが小道具の中心になっているのは時代を感じさせた。

ただ夜のシーンが多いせいか、猥雑な街の雰囲気は良く出ていたものの、フロリダの明るい太陽や美しい空と海、水着のオネーチャンたちが拝めなかったのはちと寂しかった。

そして一番ガッカリした事。TVドラマでは、ほぼ毎回あった、最後ソニー刑事が、捕まえた犯人に容疑者の権利を読み上げる場面がなかったことだ。

「あなたには黙秘する権利がある。あなたの証言は法廷で不利に扱われることがある。あなたには弁護士を雇う権利がある。経済的理由で弁護士を雇えない場合、国選弁護士を雇うことが出来る。」

今まで自分らと同じヤクの売人と信じていたのに、実はおとり捜査官だったと知り、権利を読み上げるソニーを呆然とした顔で見ている犯人。このシーンこそ『マイアミ・バイス』の真骨頂なのに見事に外されていた。これじゃ印籠の出てこない水戸黄門、桜吹雪の出てこない遠山の金さんではないか(たとえが古すぎるか・・・・)

軽い脱力感で映画館を後にした。ああ、昭和は遠くになりにけり。