イスラエル人には2つのタイプの人間がいるらしい。

まず1つは「ガリシア人」
東ヨーロッパ系のユダヤ人で、活力に溢れ意志が強く勇敢だが、反面、排他的でだらしなく、狡猾で、常に人の油断につけ入り、平気で嘘をつく。

もう1つは、「イッケー出」
西ヨーロッパ系のユダヤ人で、礼儀正しくきれい好きで洗練されている。几帳面で、ある意味ドイツ人よりゲルマン的だ。

そして、1970年当時、イスラエルを牛耳っているのは「ガリシア人」であった。

そして・・・・・、ジョージ・ジョナス著、『標的は11人 モサド暗殺チームの記録』の主人公、アフナーは、典型的な「イッケー出」である。

今年公開されたスピルバーグ監督『ミュンヘン』の元本でもあるが、実に面白い作品だ。こんなにワクワクしながら本を読むのは久しぶりである。

1972年、PLOの過激派「黒い9月」がミュンヘンオリンピックのイスラエル選手団を人質にとったうえ殺した。激怒したイスラエル政府は、報復のための暗殺チームを作る。メンバーは5人。
そのチームリーダーに選ばれたのが若干24歳のアフナーだった。
そして、ターゲットは11人だ。

メイア首相やシャロン将軍から直々に使命を託されたのだから、若輩者にとって光栄のいたりであろう。

彼は取り立てて何かが出来る、というタイプではないが、大変バランス感覚に優れ、決断力があり、第6感が冴えている。これはリーダーとして重要な資質であろう。

さて、最初のうちは使命感に燃え、またパリやローマ、ロンドンなどへ、アゴ・アシ付きで行け、お金も自由に使えることに単純に喜んでいた彼だが、任務が長引くにつれ、だんだん、重圧に苦しめられるようになる。

そしてラスト、苦悩の末にアフナーが受け取ったのは、イスラエル政府の酷な仕打ちであった。

つか、彼の上司(まぁ政府の方針なんだろうが)せこすぎ!しかも陰険。だからユダヤ人は〜と思ってしまったが、アフナーからすれば、「だからガリシア人は〜」だったろう。

彼は今、家族でアメリカ国内に住んでいるが、アフナーの子供たちは、イスラエルの地で、今も生まれている。

標的(ターゲット)は11人―モサド暗殺チームの記録