紅葉
普段、NHK朝の連続ドラマは興味がないのだが、今回の『芋たこなんきん』は欠かさず見ている(といっても週末、一週間分をまとめて見ているだけだが)

ドラマのモデルである作家田辺聖子の小説やエッセイが好きなのもあるが、何といっても藤山直美の存在感である。

松竹の看板喜劇俳優だった藤山寛美の血を引き継ぐ、才能のある喜劇女優であることは前から知ってはいたが、「この人、ただ者ではない」と思ったのは、映画『顔』を観てからである。

根暗な引きこもりの中年女が、ふとしたはずみで殺人を犯し、西へ西へと逃亡していくうちに段々心の重荷が消え、どんどん美しくなっていくという不思議な物語だが、藤山の演技が絶妙であった。

いつも喜劇が多いせいだろうか、映画での暗い絶望の表情には思わず背筋が寒くなった。
この人、本当は喜劇よりシリアスな方が向いているのかもしれない。

さて、ドラマ『芋たこなんきん』であるが、ドラマの2週目で、藤山演ずる主人公の町子は芥川賞を受賞し、かもかのおっちゃんこと、五人の子持ちの医師、徳永と結婚している。

人生の節目と言うべき、文学賞受賞も結婚も早々とすませ、これから続くのはただただ長い日常だ。

通常の朝ドラだったら、主人公が家業に励みながら恋をし結婚をし、出産、そのうち戦争が始まり夫や息子が戦争に行って、一家バラバラになって・・・・みたいな波乱万丈な展開になるのだが、今回のドラマにはそれが一切ない。

一歩間違うと、退屈極まりない話になるリスクがある。それを支えているのは、脚本や演出の力もあるが、なにより役者の力だろう。

藤山直美や、かもかのおっちゃんこと國村隼らの力にかかっている。

来年3月まで、このゆるゆるの日常を描いたドラマが、緊張感を持って続けていけるかどうか楽しみである。

芋たこなんきん―連続テレビ小説