ミロ2007年の読書初めは、高木徹著『ドキュメント 戦争広告代理店』だったが、読後感はいまいちスッキリしなかった。

ボスニア紛争の渦中、ボスニア・ヘルツェゴビナに雇われたアメリカのPR会社の辣腕社員の手で、いかにセルビア側が『悪玉』にされていくかを克明に追ったドキュメントだが、何だか話が出来すぎのような気がする。

確かに、このアメリカのPR会社、ルーダー・フィン社のジム・ハーフ、彼の仕事ぶりは驚異だ。

綿密に戦略を組み立て、うまく時流に乗る術を知っている。
また、常に法を遵守し、倫理に悖る行為は絶対しない。記事を捏造したり、嘘の情報を流して、後から馬脚を露わすようなヘマはしないのだ。

そしてポイントポイントで、キャッチフレーズを作る。
「民族浄化」「収容所」「他民族国家」など。

そしてこれが第一だが、彼は常に無私の心でクライアントに尽くす。

たとえクライアントであるボスニアの外務大臣が、傲慢でマナーを知らず、PR料の支払いをしぶっても、それで仕事のレベルを落すようなことはしない。

実際、この仕事は、ルーダー・フィン社にとっては赤字だったらしい。

だが、たかがPRのエキスパートの腕だけで、こんな国家的な存亡が決められるだろうか。まだ疑問が残る。

もし本当ならこんな恐ろしい事はない。

あと面白いのは、当時インターネットや携帯電話は普及していないため、ジム・ハーフはボスニア情報をファックスで、主要国のメディアや有力者に流していたのだが、その中に日本は一つもない。

おかげで、日本はあまりセルビア=悪のイメージがないようだ。

さて、ネットの時代、PR会社は益々高度なテクニックで暗躍することであろう。

だが私は思う。先の紛争では、悪玉にされる隙をあたえたセルビアにも非があると。そして、一般人だって、ただメディアの一方的な情報に唯々諾々と従っているだけではないということを。

PR会社ごときに、国を左右されてたまるかい!