時期はずれの話題だが、昔のアカデミー授賞式では、大スターは黒のリムジンを乗りつけ、女優たちは豪華な毛皮やダイヤモンドで着飾ってレッド・カーペットを歩いていたものだ。

今のセレブたちは、トヨタのプリウスに乗り、女優たちも毛皮はもとより、ダイヤモンドもあまり飾らなくなった。

環境問題、そして地域紛争が彼らの関心事になっているようだ。

さて、映画『ブラッド・ダイヤモンド』を観た。

レオ舞台は、紛争ダイヤアモンドの地、アフリカのシエラレオネ。ちなみに、ここは世界で一番平均寿命が短い国と言われている。
(男33歳、女36歳 1995年)

主人公のダイヤの密売人ダニーには、いち早くプリウスでアカデミー授賞式にのぞんだレオナルド・ディカプリオ。

引き離された家族を取り戻すため苦悩する、愚直ともいえる漁師ソロモンに、ジャイモン・フンスー。

そして、自分の力の限界を感じている紛争地域の女性ジャーナリスト、マディーにジェニファー・コネリー。

この3人が、ある巨大なダイヤをめぐって結び合う。

・・・面白すぎる。骨太の傑作だ。

内戦、虐殺、拉致誘拐、少年兵と悲惨な内容なのだが、面白いのだから仕方ない。まずディカプリオが上手い。

実は私、『タイタニック』以降、ディカプリオに対して、関心が薄かったのだ。個人的に、童顔が好きでないのもあるが・・・・。

冷酷で、平気で嘘をつき、殺人も厭わない密売人ダニー。だが、ソロモンやマディーに出会うことで、少しずつ変わってゆくその表情の自然さ。

実は彼も、この作られた内戦の犠牲者なのだ。

ダニーとソロモンの関係は、黒澤監督「七人の侍」の侍と農民の構図に似ている。

結局、勝つのは農民なのだ。

そして、ダニーとマディーが語り合うシーンも印象に深い。
彼にとって生まれて始めての安らぎのひと時だったのだろう。

さて、映画の最後のほう、シエラレオネの年寄りの言葉が心に残る。

「石油が出なくてよかった」

豊かな資源がアダとなったアフリカの地で、美しい大自然だけが、その哀しみを見つめている。

レオ2