キャパロバート・キャパの作品に、パリ解放後、ドイツ兵と親しかった女性たちが、頭を丸坊主に刈られ、パリ市民の吊るし上げになっているのがある。

戦争の真実をとらえたものとして、まさに秀逸だが、先日観た、バーホーベン監督の映画『ブラックブック』にも似たようなシーンがあった。

バーホーベン監督の場合、キャパのようなクールさは無く、その表現はひたすらグロで汚い。

自分と同じオランダ市民を、これだけ醜く扱っていいものかと思ってしまうほどだ。

女の子が嫌う事をわざとして喜んでいる悪ガキが、そのまま大人になったような風情が彼の作品にはある。

宣伝では、『ブラックブック』は『シンドラーのリスト』や『戦場のピアニスト』と並び称されているようだが、とんでもない、そんな格式の高いものではない。001
相変わらずエロ、グロ、バイオレンスの詰まったバーホーベン節炸裂のサスペンスアクションだ。

とにかく見ていて飽きない。多くの伏線、危機、裏切り、どんでん返し。

最後のほう、事件の黒幕をつかまえ、棺おけに閉じ込めた後、主人公の女性とその仲間の男性が、疲れ果てて池のほとりに腰を下ろす。

大声でわめきながら命乞いをしている黒幕の見やりながら、「本当は助けるべきよね」「うん、そうだな」と言いながらも何もしないで、じっとすわっているのがおかしかった。見ている私も疲れ切っていたので。

またバーホーベン監督は、迫力ある女を描くのが上手い。

主人公のユダヤ女性エリスはもちろんだが、私は彼女の友人、オランダ女性ロニーにひきつけられた。

戦時中は、私腹をこやすのに夢中のナチ将校の愛人でありながらエリスに協力し、解放後は、ナチ協力者として吊るし上げに遭うどころか、ちゃっかり連合軍の勝利パレードに参加し、幸せをつかむ。

天真爛漫で、今を楽しむことだけを考えているロニー。
たとえ日和見と呼ばれようと、こういう女性が一番強いのかも知れない。

さて、この映画では、ナチの将校は大変人間らしく描かれている。

それに比べ、いわゆる英雄と呼ばれているオランダ人、レジスタンスの暗部には驚かされる。

この作品は真実に基づいて作られているとの事。

つくづく戦争の真実に、黒白ハッキリなどあり得ないのだろう。

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